第3章 11話
あれから数日。
今日も午前中の魔法練習を終え会議室にてみんなで昼ごはんにしていた。
二人の希望を聞いたらカレーが食べたいとのことだったので、千葉で知らない人がいないと言われている『検見川カレー16P』をポイント交換してあげた。
存分に味わうがいい。
この『検見川カレー』、コリアンダーとクミンシードの香りが秀逸。スパイスの組合せがとても上手い。
スパイスの調合とかなんか錬金術みたいで楽しそうだよね。機会があったら是非やってみたい。
二人の魔法練習も佳境をむかえている。
マヒト君の身体強化もかなり上達してきているし、稲妻を撃つ様はかなりカッコよくなってきた。
リナちゃんの魔力操作も順調に成長しており、無事にスキル『魔力操作』レベル1を取得していた。遠隔魔法を使える日も近いだろう。
まもなく開通が迫っているからか、二人ともダンジョン造りを話し合ったり相談することが増えてきている。
コウモリさんポイントも順調に貯まっており、ダンジョン造りも構想から作成に入っているのだろう。
きっと完成をイメージしながら様々なスパイスを組み合わせ複雑かつ奥深い味わいを目指しているに違いない。ホールスパイスは何を使おうか。具材は何が合うだろうか。香り付けはどうしよう。もう少しスパイシーにカエンペッパーの量を増やしてみようか。
「ダンジョン造りとはスパイスカレーなのだ!」
「う、うるさいわよ!だ、黙って食べなさい」
「何を言ってるかよくわからないですけどカレーは旨いですね。あっ、おかわりください」
二人とも元気なようで何よりです。
『検見川カレー』美味しいもんね。
おかわりはいっぱいあるからね。
ごはんじゃなくてナンもあります。はい。どうぞどうぞ。
そういえば、最近ヨルムンガンドちゃんのご機嫌があまりよくないらしい。
レイコさんいわく、マスターが他のマスターと遊んでばっかでつまんなーい!だそうだ。なかなか可愛いじゃないか。
べ、別に遊んでいる訳じゃないんだからね。
まぁ、五歳児には理解するのは難しいだろう。スパイスカレーはまだ早いから『カレーのおうじさま甘口12P』と『マキシマムコーヒー3P』でもあげれば機嫌もよくなるだろう。チョロいからね。
いつだってお父さんはお土産ですべてをチャラにするものだ。
それはもう時間が足りないのを課金で補うが如く。
大人はいつだってお金で解決するのです。
「もうそろそろダンジョン開通なんですよね。なんだかさみしくなりますね」
「二人とも、いつでも遊びに来ていいんだよ」
「えっ、い、いいの?」
なぜそんなに驚くリナちゃん。
「もちろん。二人さえよければ、定期的な情報交換もしたいと思ってるよ」
「あー、なんだか少しホッとしました」
マヒト君、君もか。
どこかダンジョン開通後は一人で頑張らなくてはならないというような気持ちがあったのかもしれない。
力はついてきてる。ただ、精神的な余裕も必要だろうからね。もちろん、僕にとっても。
「あとは、わりと重要なんだけど。もしもダンジョンを攻略されそうになったら僕を呼んでほしい」
「か、管理権限の譲渡ね」
「うん。これから頑張る二人に水を差すようで悪いんだけど、ダンジョンに絶対はないし、決して無理をして命を落とさないように」
なんというか、同じダンジョンマスターとして仲間意識が芽生えてきたのだろう。
もちろん、二人に新しいスキルやらボスモンスターチケットの入手方法を編み出してほしいという打算もある。
それでも共通の敵を持つ者として、みんなで頑張っていこうじゃないか。
そんな話をしている時だった。
「マスター!複数の侵入者っす!」
おっ、意外に早く来た……のか。
『山梨ダンジョン』でレベルを上げてきたのだろう。どのくらい上げて来たのか気になるところだね。
マヒト君とリナちゃんにも丁度いい機会となった。
「二人とも画面を見ながら勉強しよう。これがこれから君たちが戦う相手だ。」
二人とも緊張した面持ちで画面を見ている。
さて、お手並み拝見といこうか。




