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第3章 10話

 一方その頃、ダンジョンの外では日本初となる警察と自衛隊の選抜チームによる特殊部隊の創設が成されようとしていた。


 今後は法律等を整備し独立した団体としてダンジョン探索及び攻略を進めていくことになる。

『特殊侵略者攻略部隊』通称『特侵隊』の誕生である。


 そして『山梨ダンジョン』では警察及び自衛隊の選抜チームによるレベルアップ訓練が成果を見せ始めていた。




 「撃てー!」


 ズバババッバババババッ!ズバババッバババババッ!


 「グギャッアー!」「ギシャー!」「ゴブシャー!」


 リポップしたばかりのゴブリン達が吹き飛んですぐに息絶える。討伐されたゴブリン達は光の粒子となって消えていく。


 それはもう見慣れた光景となっていた。

 何度も繰り返されることで、まるでシューティングゲームでもしているかのように淡々と作業をこなしている。


 「何より死体を片付けなくていいのは助かるな」


 「あぁ、今となってはな……おっ、『傷薬』がドロップしたな」


 ダンジョンが片付けるのはなにも死体だけではない。


 訓練当初はダンジョンの入口からバリケードを築いたり安全を確保したスペースに大量の武器消耗品を持ち込んだものだ。


 半日とかからずダンジョンに全て飲み込まれたがね。それ以降は各自が身に付けるもの以外は持ち込まれなくなった。


 「これで再出現まではしばらく休憩か」


 「ですね。川崎隊長」


 「狩野、レベル5に上がった隊員は何人になった?」


 「我々を含め18名です」


 「ったく。ゴブリンが減らなきゃ、もっと増えていたのにな。いつになったら『千葉ダンジョン』攻略に向かう30名になるのやら」


 「ははっ。まぁしょうがないですね。あれは予想外でしょう」


 政府からの要望で生け捕りにしたゴブリン五体を研究所に送ったのだが、四日目には三体が。五日目には残り二体が消滅した。


 研究成果もゼロ。さらに『山梨ダンジョン』にも再出現されないときた……最悪の結果だった。


 「特侵隊の面接も大変らしいですね」


 「そりゃそうだろう。レベル5は素手の状態で銃刀法違反になるような人間だからな。性格やら思想やら血縁から何から何まで細かく調べ上げるんだろうよ」


 「自衛隊や警察への転職も増えているとか。まさか人気の職業になるとは思いもよりませんでしたね」


 「なんなら日本への帰化申請も増えてるらしいじゃねぇか」


 「ダンジョンの一般解放なんて、ありえないと理解しているんでしょうね」


 銃社会でもない日本でレベル5の人間が増えまくったら国民の不安は拭えないだろう。もし数万単位で暴動が起きてしまったら止められるのだろうかという懸念もある。


 治安を維持できないかもしれないリスクを政府は決して負うことはない。


 つまるところダンジョンに堂々と入るには警察や自衛隊で実績をつくり、尚且つ特侵隊の面接を突破しなければならないか、生まれたばかりのダンジョンを見つけて先に入ってしまうかの二択しかないのだ。


 「そういえば外国人観光客による新規ダンジョン探索ツアーが大人気だとか。戦時中の防空壕跡やらそれっぽい洞窟探しで盛り上がってますよ」


 「ダンジョンを舐めてるとしか思えんな」


 「初期のダンジョンを見つけてくれるならありがたいですけどね」


 「発見したらしたでバレるまで隠し通すだろうよ。近隣の住人には金をばら撒くか、下手したら口封じだってありえるぞ。すでにダンジョンはビジネスなんだよ」


 「ビ、ビジネスですか……」


 「例えば、管理して入場料とる。数百万はとれるぞ。あとはレベルアップにつき一千万円。ドロップアイテムの転売。俺でもこれぐらい考えられるぞ」


 「我々は四千万円相当のレベルアップをしたんですね。」


 「バーカ。例え話だ。そろそろゴブリンが再出現するぞ」


 「はいっ。準備させます」


 そう言って狩野はレベル4の隊員達を呼びに行った。



 近くに人がいなくなったのを見計らって川崎は独りごちる。

 「もう少しだ…。『千葉ダンジョン』待ってろよ。もうすぐ、もうすぐみんなの仇をとってやれる……」

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