第3章 4話
今日は『栃木ダンジョン』と『静岡ダンジョン』のダンジョンマスターと案内人を迎えての初めての会談の日。
『栃木ダンジョン』のマスターはマヒト君二十歳。
会談の連絡をしたところ、すぐにオッケー連絡のあったマスターだ。
もう一人は『静岡ダンジョン』のマスターリナちゃん十九歳。
彼女は不審に思ったのか返事が遅く何度か案内人を通したメッセージのやり取りでようやく信用してもらえた。
メッセージのやり取りはこんな感じ。
「先に千葉でダンジョンマスターになったタカシです。マスター同士協力しながら力を蓄えていけるよう情報交換しませんか」
「了解です!」←マヒト君
「こちらに交換できる情報は特にありません。あなたの目的は何ですか?」←リナちゃん
「生き残るためにお互い知恵を出しあって生存率を高めたいと思ってます」
「別に会わなくてもメッセージで良くないですか?」←リナちゃん
「顔を合わせて話せないと信頼関係が築けないと思うし、少しなら秘策も教えられると思いますよ」
「秘策まで教えてくれるあなたのメリットは何ですか?」←リナちゃん
「メリットというか、協力したいって気持ちが強いです。ダンジョンを攻略されたマスターを目の前で見たことがあるから」
それからレイコさんと『山梨ダンジョン』のことを話したりしているうちにようやく、本当にようやく「しょうがないわね。会ってもいいわ」をいただきました。
正直、中途半端にダンジョンを造られて攻略されてしまうと目も当てられない。レベル上げの良い狩場を与えてしまうようなものだ。攻略されない、もしくは見つからないダンジョンを目指してもらいたい。
そして現在四階層の会議室。
「このピーナッツ最中美味しいですね」
「甘すぎない餡と最中の食感がいいよね。お茶もどうぞマヒト君」
「ありがとうございます。それで彼女が『静岡ダンジョン』マスターのリナさんですか」
僕とマヒト君がリナちゃんの方を見るとパーカーのフードを深くかぶり直して案内人のウナギに何やら小声で伝えている。
「リナは極度の人見知りなので代わりに案内人のウナ次郎が話をさせていただきやす」
メッセージでは強気なリナちゃんだったが人前はどうも苦手らしい。年齢よりかなり若く見える童顔のショートカットで、目はやや強気な印象を残している。しゃべれないけれども。会談を拒んでた理由はこれか。
一方のマヒト君は短髪の爽やか青年。人懐っこい感じでいて礼儀正しい。上司にかわいがられて出世するタイプだろう。
「どうも餃子のチャオ太郎です。マスター共々よろしくお願いします」
「ピースケっす!房総名物『菜の花弁当』も用意してるっす。まずは腹ごしらえっすよ」
ピースケが千葉のおもてなしアピール頑張っている。うん、二人ともポイントを節約していたのかお弁当にがっついてるね。そういえば僕も最初の頃は一日一食で我慢してたな。なんか懐かしい。
「二人ともおかわりはいくらでも用意するからゆっくり食べていいよ」
驚きの表情をこちらに向ける二人。大丈夫取りあげたりしないから。はい。お茶もどうぞ。
「このお弁当ってポイントから交換してるんですよね。大丈夫なんですか?」
「うん。うちポイント1億以上あるし気にしなくていいよ」
再び驚きの表情をこちらに向ける二人。大丈夫ちゃんとお土産も用意してるから。
リナちゃんが小声でウナ次郎に伝える。
「タカシさんはどうやってそんなにポイントを稼げたんですか。と言ってやす」
「そうだね。何から話そうかな」
コウモリさんのこと。魔力操作のこと。突然死騒動のこと。そして警察特殊部隊の討伐から『山梨ダンジョン』でのことをまとめて二人に話をした。
「突然死のニュース見てましたよ。タカシさんの戦略だったんですね。うわぁ、すごいです」
うむ。マヒト君には甘味をあげようじゃないか。
みんな大好き『ピーナツチョコ』だよ。
リナちゃんがジーっとこちらを睨んでいる気がするけど知らないふりだ。人は依怙贔屓する生き物なのである。欲しいものがあるのなら何をするべきかわかるよね。
するとリナちゃんが小声でウナ次郎に伝える。
「タカシさんって手の指が細くてきれいですね。と言ってやす」
う、うむ。何か褒めポイントが違う。




