ティア先生の子育て日記1
どうもみなさんお久し振りです。
双子の姉のティアです。
今日から私、頑張って日記を書き綴ろうと思いますの。
というのも、私、タカシ様のお子を懐妊することができましたの。
祝ってくれていいのよ。
ええ、もちろん第一号です。
レヴィもレイコもアモナも、とても悔しがっておりましたわ。
対外的にはアモナのお子が産まれるまでは内緒にしとけとか五月蝿い魔王が言っているようだけど、ハイポージア公爵領においてはそんなこと関係ないわ。
だって、基本的に住人に魔族いないし。バレたらバレたで適当に誤魔化すわ。
今のところ、ハイポージア公爵領には第二世界と第三世界の住人のみ。それでもかなりの人口になるから、希望があっても断っている状況なのよね。
「ということで、特に隠す必要も無いわ!」
懐妊当初は前科があるだけに全員から想像妊娠を疑われたのだけど、今度はちゃんと身篭っていたの。ふんっ、私の勝ちね。
というわけで、日記を書き綴ろうと思うの。
ほらっ、こんなこと経験したことないじゃない。お腹がぽっこりと少しずつ大きくなってくるの。私とタカシ様のお子がゆっくり成長しているのを感じるだけで、とても愛おしくて栄養をあげたくて食欲がとっても弾むわ。
それはもうバインバインに弾んでいるわ。
二人分の栄養を取らなければならないという責任感だけで白飯五杯はいけるかしら。
「えーっと、本日の天気は雲ひとつない綺麗な青空。遠くに見える山にはうっすらモスラも見えるかしら。というわけで、今日からあなたが大きく育つまで日記を書くことにしましたの、と」
それにしても、何を書き綴ればいいかしら。気持ちだけ先走っていて、目的がちょっとぼんやりしているわ。
私が日記を書き綴ろうと思ったのは……。
そうね、この子のために私が出来ること。
とにかく、何でもやってみようと思ったからだわ。母になるということは子供のために全てをなげうてることなのだと理解したのよ。
母は強しなのですわ。
いつかこの子が大きくなった時に、私がどんな気持ちでいたのか、あなたをどれだけ愛しているのかを知ってもらいたいから。
これは私が書き綴る愛の日記なの。
例えば初めての親子喧嘩をしたら、そっとわからないように、あなたの部屋にこの日記を置いておくわ。
きっとあなたは、私の愛の深さを知って秒で謝りにくるかしら。
大好きなあなたと喧嘩しなければならないなんて想像もしたくないけど、些細なことで喧嘩はつきもの。
レヴィとだって、いまだに喧嘩することがあるんですもの。
この間なんて、私がお子の栄養のためにと取り寄せたピーナッツプリンをお客様に出してしまったのよ。
信じられる? ご当地限定のプレミアムスイーツだったのに。
まったく、仲直りするのに一週間も掛かってしまったわ。
「ぬおっ! 一週間!」
愛しい我が子と一週間も口を聞かないとか、高確率で死んでしまいますわ。
絶対さみしくて死んでしまう。
子育てって命懸けなのね。
この子のために私ができること、そうね。
あなたが望むのならティータイムのおやつ一日ぐらいなら我慢するわ。
でも、プレミアム限定スイーツはダメよ。それを我慢するぐらいなら一緒に食べた方が平和的だと思うもの。
あなたが怖い夢を見て泣いてしまったら、安心して眠りにつくまで、私がずっと抱きしめてあげるわ。
それでも泣き止まないなら、敵に見立てたエディでも殴ってストレス発散しましょうね。
ほらっ、何かしらの代償行為は別の目的が達成することで気にならなくなる場合があるって言うじゃない。
ふぅー。やっぱり考えごとをしていると甘味が欲しくなりますわね。
確か冷蔵庫の中に秋季限定ダンジョンバウムクーヘンの新作が残っていたはずだわ。
第三世界の甘味文化は、この世界でも大ヒットしているようで、ハイポージア公爵領でも柱の収益になっているわ。
「な、ない……。アーモンドカカオ味のダンジョンバウムクーヘンがないわ!」
すると、来客用の客間から私の声に気づいたのか犯人がやってきたようね。
「大きな声でどうされたのですかお姉さま? お客様がいらっしゃってますので、お静かに願います。それに、お腹の子もびっくりしちゃいますよ」
「レヴィ、あなた私の秋季限定アーモンドカカオ味のダンジョンバウムクーヘン食べたわね?」
「あっ、それでしたら聖女ソフィア様がいらっしゃっていたので、新作の感想も聞きたかったからお出ししました。とっても好反応でしたよ」
「せ、戦争だわ。レヴィ、あなたとは一週間、口を聞かないわ! これはもう戦争よ」
「えっ、お、お姉さま?」
「私のダンジョンバウムクーヘン か え し て!」
私の心の叫びが通じたのか、来客部屋からレイコが出てきてくれました。
「ちょっと、ティア先生静かにしてください。来客中なんですからね。それと、ダンジョンバウムクーヘンはまだいっぱいあるから、こっちに来て一緒に食べましょ」
「女子会なのね! レイコ、好きよ。レヴィ、私にも温かい紅茶をいれてちょうだい」
やっぱり、血の繋がった姉妹でも一つの甘味で簡単に戦争が始まってしまうのね。
私は、私の大事なお子のために甘味を譲ることができるのかしら?
ちょっと、子育てに不安を覚えたかもしれないわ。
難しいものね、子育てって。
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不遇スキルの錬金術師、領地を開拓する ~貴族の三男に転生したので追い出されないように辺境を開拓してみた~
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