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第22章 13話

「お兄さま、お姉さまは魔力切れなのですか?」


「うん、ちょっと大量に魔力を消費しちゃったみたいなんだ。お陰さまで街の方は完璧に整備されているよ」


「レヴィちゃん、ティア先生は魔力回復薬を飲まないで、タカシさんに甘えているんです」


ぷいっと横を向きながら、僕の背中に張り付いているティア先生。こういう表情を見るのも悪くない。背中にいるからあんまりよく見えないんだけど。


「ところで、そちらにいる大きな蝶はヨルムンガンドちゃんの新しいお友達かな?」


「おお、マスター、こいつはモスラって言うんだ。さっき俺が名前付けた! ここの管理人になってもらおうと思ってるんだ。向こうの山を壊しちゃったからよー、こいつ住む場所無くなっちゃったんだよ」


大きな蝶がヨルムンガンドちゃんに従順な姿勢をみせている。少なからず、意思疎通は取れているようだし、問題はないのかな……。


「ヨルムンガンドちゃん、モスラがダムの施設を守ってくれるというんだね。それで、何かしらの要求はあるのかな?」


「寝床の確保と食料の供給ぐらいかな。ほらっ、ここを守るからには、長時間離れるわけにはいかねぇーだろ。福利厚生ってやつだな」


福利厚生か。どこでそんな難しい言葉を覚えたのだろう。五歳児の割には考えがしっかりしている。


「ヨルムンガンドちゃん、ちゃんと面倒みれる? 僕からの条件はモスラの面倒をヨルムンガンドちゃんがみること。何か問題があったら僕たちに相談してよ」


「いいのか!?」


「ダム壊さないよね?」


「当たり前だろ! モスラはここを管理する守護者になるんだ」


どうやら、僕たちの会話もある程度理解しているようで、嬉しそうにパタパタと羽を羽ばたかせている。


「ちょ、ちょっとー! 鱗粉飛ばさないでよー」


「こ、これは大丈夫な鱗粉だから気にするなよ」


虫嫌いのエディーが嫌そうな顔をしているが、住む場所を奪ってしまったのだから、これぐらいの面倒は見てあげたい。ヨルムンガンドちゃんとの相性も良さそうだ。ニワトリさんみたいな小動物だと、どうしてもヨルムンガンドちゃんを本能で怖がってしまうけど、モスラなら大丈夫そうだ。


「鱗粉って、大丈夫なのと毒とで分けられるのですね」


「えっ? あっ、分けられないのか。なんだよ、だったら早くそう言えって。めっちゃ、飛ばしてるから大丈夫だと思ったじゃねぇかよ」


どうやら毒の鱗粉が飛んでいたらしい。といっても、僕らレベルには全く影響のない程度の毒っぽい。ただ、これが水に影響を与えることになってはちょっと困る。


「モスラ、君の鱗粉に含まれる毒はダムの水に影響を与える可能性があるんだ。ここの管理を任せるからには水質が悪化するようなことがあっては困る」


モスラはゆっくり地面に降り立つと神妙な表情で僕の話を聞いている。やはり一応は話が通じるっぽい。


「いけるか? モスラ。俺が鱗粉とるか?」


蝶から鱗粉取ったら、多分、モスラ死んじゃうからねヨルムンガンドちゃん。


一頻り考え事をしているような仕草を見せていたモスラは、何やらヨルムンガンドちゃんに伝えると、地面にかがみ小さくなっていった。


「ヨルムンガンドちゃん、これは一体?」


モスラは自らを包み込むように糸を吐き出すと全身を覆うように閉じこもってしまう。


「モスラ、進化するって。何か、毒はもう必要なさそうだから、水とダムを守るのに必要な成長を遂げるって」


いや、いや、そんな簡単に進化って出来ちゃうの?


そんな疑問はすぐに吹き飛んだ。目の前のモスラが囲われた殻が白く光ると、すぐにヒビが入り、中から真っ白な蝶々が現れた。さっきまでの奇抜な色合いから、なかなかに透明感のあるボディに生まれ変わっている。生まれたばかりで一回り小さくなってるけど、見た感じ戦闘力もそれなりにありそう。あとは、毒の鱗粉は消えてちょっと神々しいぐらいのキラキラをまとっている。何でもありだなモスラ……。


「もう、大丈夫だってよ。この鱗粉なら安全だし、何なら水を浄化するらしいぞ。少し弱くなったけど、この周辺なら敵もいないから問題ないって言ってる」


「凄いね……驚いたよ。じゃあ、ヨルムンガンドちゃん。この場所の管理はモスラとしっかり頼むよ」


「おう、任せろ! じゃあ、寝床を作りに行くぞ。ついて来いモスラ」


僕たちに向かってお礼を言うかのようにくるりと一回転してみせると、モスラはヨルムンガンドちゃんの後を追っていった。お礼を言う必要はないんだよ。住む場所を奪ったのは、こちらの都合な訳だからね……。とりあえず仲良く出来そうでよかった。


さて、今日のところは魔王城に戻って明日に備えるか。明日からは街とダム建設の続きはみんなに任せて、僕は指輪作りを完成させようかな。

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