第22章 3話
ということで、僕たちは一ヶ月後の転送スキルを使用出来るまでの間、自分たちのダンジョンがある第三世界へと戻ることとなった。
慣れ親しんだ居住区。みんなと出会って、拡張してきたダンジョンだけに思い入れも深い。そういえば、エディはこの事を話したらどう思うのだろう。まぁ、一生遊んで暮らせる財産は築いているだろうから、どちらにしろ本人の判断に任せるしかない。それよりも、どうやって説明をしたらいいものだろうか……。
「師匠、みんな集まったようだよ」
どうやら全員揃ったようだ。現在、『千葉ダンジョン』にダンジョンマスターと案内人の一組で来てもらっている。
ダンジョン協会と相談した結果、言っちゃいけないワードなどの条件は極力排除してもらった。さすがに説明しきれないことが多すぎてしまうのだ。
「あっ、うん。そうだね、じゃあ簡潔に説明をしようかな。あと半年でダンジョンポイントをクリアしないと案内人さんは帰れなくなるかもしれないんだ」
「か、帰れなくなる!? 案内人が? わ、私たちはどうなるの? と、というか、ウナ次郎どこに帰るのよ」
リナちゃんの不安もごもっともだ。もう少し説明しないと伝わらないよね。といっても、話が壮大すぎて信じてもらえる保証がないんだけどね。
「信じてもらえるかわからないけど、この世界はパラレルワールドなんだ。実際にみんなが暮らしていた世界から切り離された世界になる。そして、この世界と繋がりを持っているのが、案内人達が住んでいる世界。でもね、今その関係がとても希薄になってしまっているようなんだ」
「師匠、言ってる意味が全くわからないよー。でも、その世界にカイトがいるってことかな?」
「サクラちゃんご名答。カイトさんもその世界にいる」
信じられないものでも見るように、あたふたするモンスタードールズ。僕があっさりカイトさんのことを言葉にして認めるとは思っていなかったのだろう。
「やっぱりカイトに会ったんだね」
「そ、その、元気にしてましたか?」
「何か言ってたか?」
「ストップ、ストップ。近いうちに会えるはずだから心配しないで。カイトさんも会えるのを楽しみにしていたよ。だけど、今はみんなに状況を理解してもらうことが先ね」
すると、次に質問してきたのはリリアさん。自分自身はもうすぐポイントをクリアする。その余裕もあるのか、他の人達が聞きたいことを訊ねてくれた。
「タカシはポイントをクリアしているのだろう。それでお前は案内人のいる世界に行ってしまうのか? ポイントの少ない者は見捨てられるのであるまいな?」
「僕は案内人のいる世界に行くつもりだよ。みんなも希望するなら、可能な限りポイントクリア出来るようにフォローするつもり。それでも難しい場合、移動できる手段がないか調べを進めている。あとは、この世界に残り続けるという選択肢も勿論あるよ」
「タカシとは吸血の契約があるからな。私のダンジョンはついていくぞ。お、お前の血は美味であるからな」
「タカシさん、その世界は危険な世界なんですか? あと、魔法は使えますか?」
チラチラとモンスタードールズを見ながら、イケメンロリコンのコウジさんが質問してきた。『新潟ダンジョン』が移動するだろうことから、彼の気持ちは既に固まっているともいえる。
「魔法も使えるし、今現在、安全な世界であることは保証するよ」
「そうですか……」
「タ、タカシ、人間や犬も、つ、連れていける?」
リナちゃん、『静岡ダンジョン』らしい質問だね。
「それについても同様に調べを進めている。多分、大丈夫だと思ってる」
ジルサンダーが転送できているのだから、大抵のものは可能だろう。
「そ、そう。わ、わかったわ」
「みんなも、すぐに結論を出さなくてもいい。少なくとも一ヶ月は待つよ。それまでにいろいろ相談して決めてほしい。それから、ポイントクリアに向けては明日から動き始めるよ。どちらにしろポイントはあって困るものではないからね」
結局のところ、その場で返事をしたのは『新潟ダンジョン』と『熊本ダンジョン』、『山形ダンジョン』だけだった。ボスモンスター、案内人とも相談が必要だろう。
それに、僕のいなくなった日本というのも混乱すること必至だ。政治家、自衛隊、在日米軍など、その殆んどが催眠により洗脳されている。てんとう虫さんと菜の花さんが去った後には大混乱が目に見えている。その辺りの整備も考えておく必要もあるだろう。




