第3章 2話
お昼ご飯を食べ終わると最終階層の三階層へと向かう。
ここは草原フィールド。
様々な草花の匂いと小川を流れる水音。草原は丘がいくつもあり平原ではなく、丈の長い草が生い茂っている。
風も吹いているため常に草が揺れており、近くにモンスターが潜んでいてもなかなか気づけないだろう。
「三階層は草ばっかだな。マスター」
レイコさんにハンカチで口の周りを拭かれているヨルムンガンドちゃん。
なんかレイコさんの母性がまぶしい。それはもう母性が溢れまくっています。やはり最近の女子高生は侮りがたい。
どうせなら僕の口も拭いてもらえないだろうか。
それにしても、どうやらこのちみっこもついてくるらしい。遊びに来てくれたと思っているのかもしれない。
まぁ侵入者も来ないし暇なのだろう。
「この階層には草に隠れながら近づくモンスター達が多いからね。ヨルムンガンドちゃん飴いる?」
「おい!子供扱いするなよ!で、でもよ。そ、ソーダ味をくれよ。ハッカは嫌だからな」
ヨルムンガンドちゃんチョロい。やはりそこは五歳児。甘味には逆らえないのである。
ヨルムンガンドちゃんを真ん中にして手を繋ぎながら草原を散歩していく。しばらく疑似家族プレイを楽しみましょうか。
女子高生にして五歳児のママとかレイコさんなんてエロチック。なんだかとっても興奮します。川の字になって親子プレイ昼寝したい。
「この階層には『シルバーウルフ』と『グラスバイパー』がいるんですよね」
「うん。あと空にもモンスターを追加したよ。『ワイバーン500P』を30体」
「うわぁ……ポイントに余裕があるって素晴らしいことなんですね」
ダンジョンにいる間、侵入者には心落ち着ける場所とかつくらない。上も下も周辺も注意深く探ってもらう。
人間は精神をすり減らすことで簡単にミスを犯してしまう。ちょっとした油断を狙い続けるだけでいい。そうすれば簡単に仕留められるのだから。無理に仕留めにいくぐらいなら少しでも精神を削った方がいい。
すべてのモンスターに伝えている。
自ら仕掛けるな。
侵入者の隙をつこう。
なるべく連携するんだ。
そして命を大事に。
おそらくこのダンジョンでこれを理解していないのはヨルムンガンドちゃんぐらいだろう。
ダンジョン内はレベルの上がる世界。リポップするから特攻とか全然考えられない。侵入者に経験値は与えない。経験値をいただく。
「マスター、ちょっと眠くなってきた……」
五歳児のスイッチのオンオフが急すぎる。
そんなに川の字親子プレイ昼寝したかったのだろうか。
「ヨルムンガンドちゃん、私がおんぶしてあげる。っはい」
そう言ってレイコさんがしゃがんで後ろ向きになる。
「う…ん」
目を擦りながらレイコさんの背中に抱きつく。
なんというか、ヨルムンガンドちゃんのお陰でレイコさんの笑顔が戻ってきた気がする。
やるな五歳児。狙ってやってたらそら恐ろしいのだがこのちみっこの頭脳はそのまんまチョロい五歳児である。チョロ五歳だからこそ出来るのだろう。
間違ったふりして僕がレイコさんの背中に抱きついたら社会的に抹殺されてしまう。それはもう様々な条例ががんじがらめに僕を縛りつけることだろう。
そして、もしレヴィに蔑んだ冷たい目で見られたら……うん。すごく気持ちがいいかもしれない。
「ヨルムンガンドちゃんは可愛いですね」
「かなり生意気だけどね」
「ですねー。でもそれを含めて可愛いです」
スピースピー鼻を鳴らしながらレイコさんの背中で寝ている。すごく羨ましい。
それではそろそろヨルムンガンドちゃんの可愛くないステータスを紹介しよう。
ヨルムンガンド(大海蛇)
レベル1
体力200
魔力120
攻撃力230
守備力220
素早さ260
全体的にバランスの良いステータス。
レベル1にして、この素早さと攻撃力は侵入者に希望も与えないだろう。
ワイバーン(翼竜系)
レベル1
体力80
魔力60
攻撃力30
守備力40
素早さ80




