第22章 1話
一ヶ月間のインターバルを終え、久し振りに戻ってきたのは魔王城近くの草原地帯。魔王城に直接転移しようとしたんだけど、結界的なもので守られているようで指定することが出来なかったのだ。
「ウンディーネ、ジルサンダー、ここは第一世界で間違いないよね?」
ウンディーネが、何かを見つけたようで僕に見えるように指をさしている。
あー、あれは魔王城だね。少し懐かしいが、間違いなく魔王城近くに転移することができたらしい。すると、その方角から青い髪の双子と黒髪の少女がこちらに全速で走ってきているのが見えた。君らの全力とか、速すぎて軽くホラーだからね! 遅れてアモナ姫やヨルムンガンドちゃんも歩いてきてるので、ちゃんと僕のことはモニタリングできていたのだろう。
「どうやら、みんなも無事だったようだね。やっぱり、めっちゃ怒られるのかな……」
近づいてくる三人は、その表情も確認出来るようになっていて、それは笑顔とかではなく、眉尻の下がった今にも泣きそうな顔だったり、やはりどこか怒っているような雰囲気にも見えなくもない。
「ターカーシーさーまー!!!」
先頭に立つのは鼻水がビローンとしているティア先生。三人はスピードを緩めることなく僕のお腹に突撃してきた。もちろん、僕が受け止めてくれるだろうと思ってのことだろうし、普通の人間なら死んでるぐらいの事故だけど、これは心配させた罰のようなものだと思うんだよね。
「ティア、レヴィ、レイコさん、心配かけてごめんね」
「急に一人でいなくなってしまうんですもの」
「お兄さま、私たちがどれだけ心配したかわかってますか?」
「タカシさん、罰としてしばらく外出禁止ですからね」
何故か、三人とも泣きながら僕に外出禁止令を訴えてきた。
「外出禁止って、まぁ、そうだね。ダンジョンマスターなんだし、しばらくは大人しくひきこもってようかな」
しばらくは三人のわがままを容認しなければなるまい。あと、アモナ姫もか……。別に僕が悪い訳ではないと思うのだけど、こういう時、おそらく男は黙って頷くものなのだと思う。少なくとも、女の子を泣かせてしまうような行動をしてしまったのだからしょうがあるまい。
「レイコさん、ボトル先輩に会ってきたよ」
「は、はいっ、ダンジョン協会で行動は全て見ていました。学園都市を全滅させたあたりからですけど」
とても酷いところから僕を捕捉していたらしい。イムレアちゃんをいじめていたあたりは見られていないようで少し安心した。いや、僕がいじめていた訳ではないけどね。
「お兄さまは、一人で行動していると無限に嫁を増やしそうなので注意してくださいね!」
「そうです。きっと、もう少し一緒にいたらドロシーやルーナちゃんも危なかったです」
「そ、そんなことはないと思うよ」
そもそも、ルーナちゃんに至っては、まだ小学生なんだ。ロリコン甚だしいからねっ!
「タカシ様、無事のお帰り喜ばしく思います。早速なのですが、お父様がお呼びなのです」
「お父様って、魔王様だよね。えっ、何かまた怒られるのかな?」
「怒られるようなことをしたのですか?」
してないと思うんだけど、どうかな? まさか、件の内戦で問題でもあったのだろうか。
「内戦は無事終了したんだよね?」
「おう、俺の新しい毒魔法でバッチリ圧勝だったんだぜ!」
どうやらヨルムンガンドちゃん大活躍だったようだ。今度是非新しい毒魔法とやらを教えてもらいたい。
「うーん、ヨルムンガンドちゃん。まさか、やり過ぎてはないだろうね?」
「俺はマスターとは違うから、そのあたりは大丈夫だ」
何が違うのか詳しく聞きたいところだな……。
「父上も驚いておりました。ヨルムンガンドちゃんのお陰で、かなり早く終結宣言が出せました。近衛師団を早期に抑え込んだのは人的被害も少なく、むしろ褒められるべきでしょう」
「だろ?」
どや顔のヨルムンガンドちゃんが、可愛らしいのでとりあえず許してあげよう。
「あっ、この小さいキメラはジルサンダーなんだ。よくわからないけど、転移したらいい子になっちゃったみたいで、とりあえずウンディーネに任せている」
「小さくて白くて可愛らしいですわ。本当にあのキメラ何ですの?」
「うん、間違いなく。とりあえず、魔王様を待たせるわけにもいかないし、お城に向かおうか」
両脇には腕を組む水竜姉妹。隣にはヨルムンガンドちゃんと手を繋いでいるレイコさん。あー、とっても平和だ。戻ってきたって気がするね!
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