閑話 21
その人は嵐のようにやってきて、嵐のように去っていった。ダンジョンマスターに必要なものというのが全て揃っているかのような人だった。創造性、柔軟性、発想力、こういったものを組み立てていくことがダンジョンマスターとして求められることなのだと理解した。
「逃げ回っているだけでは、解決には繋がらないのよね」
ドロシーは、『空島ダンジョン』に設置されたアダマンタイト製の砲台をチェックしながら少し前にやってきたタカシのことを考えていた。ダンジョンのポイントで得られるものを超える兵器が産み出されてしまった。ドワーフの類まれな技術力によって、地上への攻撃手段を得ることに成功した。これで、『クリスタルマウンテンダンジョン』に人間の手が迫ったとしても、山を登り始める前に一網打尽に出来てしまうことだろう。もちろん、『空島ダンジョン』に来ようと気球に乗ってくる輩にも有効な攻撃手段となった。
「ルーナちゃん、ガリオンとはうまくやっているの?」
ちなみに、外出が自由になってきた私は最近『クリスタルマウンテンダンジョン』にいることが多い。やっぱり、女子は恋愛トークしてなんぼだと思うのよね。空からの監視は案内人のスケアクロウにお任せしている。
「うーん、まだ少し距離を置いて、つき合いたいですね。今のところ真面目に食料の供給をしてくれています。別にもう食料はいらないんですけど」
ルーナちゃんのダンジョンもドワーフ達が住むことになって、定期的なポイント獲得手段を得ることになった。しかも彼らの作る武具防具がとんでもないポイントで交換されていくのだ。私の護衛が必要でなくなる日も近いと思う。
「そうなると、タカシ様の言っていた、例のプランを発動するべきかな」
「なんだよ。早速、あのプランを実行するのか? まだ、早くねぇーか。『ポルンガダンジョン』の力を強めることにもなるんだぜ」
ワインボトル先輩というルーナちゃんの案内人は、私が知る限りでは珍しい攻撃的な案内人だ。自ら先頭に立って侵入者排除に向かうその姿勢は、ボスモンスターからの信頼を集めているらしい。
「ワインボトルさん、このダンジョンもかなりの防衛力が整ってきています。ガリオンに話をするなら、そろそろいい頃合いだと思いますよ」
一階層はドワーフ達の住むカモフラージュ階となっており、以降は地下五階層の高難度ダンジョンに進化してきている。このペースでいけば『クリスタルマウンテンダンジョン』もポイントのクリアを目指せるぐらいまでに成長できるかもしれない。
「まぁ、今のあいつがどんなに頑張っても勝てるわけねぇか。よし、ドワーフ達も喜ぶだろうし、早速長老と話をしてくるか」
タカシ様の話していたプランとは、採掘労働の確保、さらなるポイントの獲得にある。山の中腹にある『ポルンガダンジョン』は勇者たちに見つかった場合に、自然と盾の役割を担ってくれることになる。『ポルンガダンジョン』を超えなければ『クリスタルマウンテンダンジョン』には辿り着けないのだから。そういう意味では、時間を稼いでもらうためにも、そこそこの力は持っていてもらいたい。調子に乗らせない、且つ、勇者パーティが攻めてきた時に対応に苦慮させるぐらいの戦力。
『ポルンガダンジョン』の一階層モンスターは二足歩行するモグラ、ロックモールなのだ。武器はスコップという鉱山にうってつけの労働モンスターなのだ。ガリオンには食料の提供からロックモールの召喚に注力してもらい労働力として貸与してもらう。一応、『ポルンガダンジョン』戦力も微妙ではあるがアップするし、こちらも労働力とポイントを得られるので、食料提供なんかよりも、よりウインウインの関係になる。
「ワインボトル殿、その話は賛成じゃ。儂らドワーフは採掘よりもモノづくりがしたい。最高のモノをつくって最高の酒と交換してもらうのじゃ」
「じゃあ決定だな。ルーナ、会談の準備をするからガリオンに話をするぞ」
「はいっ! ワインボトルさん」
「そういえば、タカシ様が困った時はコウモリさんとか言ってたけど、ルーナちゃん意味わかった?」
「ドロシーさん、コウモリは暗い場所でも障害物を避けて飛ぶと聞いたことがあります。私達のダンジョンには協力者もいれば敵対している者、部外者もいます」
「つまり、ダンジョンを管理していく上で、そのような人達を見えない目でもって管理していく重要性を説いているのかな……」
「深いですよね。さすがはタカシさんです」
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