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第21章 15話

 僕はいまドワーフの集落で一番年配の長老様と話をすることになった。集落を訪れたところ、ドワーフの戦士から勝負を挑まれたりしたのだけど、そこまでレベルの高い人ではなかったようで、あっさりと返り討ちにしてあげた。


 そうして、山を切り崩したまるでダンジョンのような場所の最奥に長老様の部屋があった。この住まいならダンジョンへの移動も苦にはならないと思いたい。


「はじめまして。あなたが、長老様ですか」


「うむ、お前が我が一族最高の戦士ドガッティを倒したという勇者か」


 ドガッティ、一族最高の戦士だったのか……。


「あっ、いえ、勇者とかではなくて、僕はダンジョンマスターのタカシといいます」


「ダ、ダンジョンマスター!?」


 周りにいらっしゃる方々も渋い表情を浮かべている。どうやらダンジョンマスターの印象はあまりよくないのかもしれない。


「そ、それで、タカシ殿は、我が一族に何を要求されるのであろうか?」


「僕は、あなた方ドワーフの集落を『クリスタルマウンテンダンジョン』に移動してもらいたいと思っているのです」


「こ、この集落を棄てろと仰られるか……」


「そうですね。ここよりもずっと良い住環境を用意しましょう。また、希望に応じて必要な物資、例えば鉱物を加工する道具や完成した武器、防具等と食糧の交換をしましょう。交換品の中には、アルコール度数の高い珍しい蒸溜酒もございます」


「!?」


「もちろん、ダンジョンからの出入りは自由ですし、ダンジョン内でもクリスタルを中心に鉱物が取れます。しかも、一日経てば同じ場所で掘り放題です」


 ダンジョンからの外出は、それでポイントにも繋がるから一石二鳥ともいえる。まぁ、ずっとダンジョン内に居てもらっても滞在ポイントが入るんだけどね。


「ち、ちなみにお伺いするが、周辺の山々からはどのような鉱物が採れるのでしょうか?」


 この質問は必ず聞かれるだろうと思っていた。ドワーフにとって鉱物は大切な物だ。気になる物が採れれば気持ちも動きやすい。もちろん、事前に周辺調査は済んでいる。


「調べさせたところ、鉄、金、銀、ミスリル、アダマンタイトあたりが多く埋蔵されているようです」


「ア、アダマンタイトですと!?」


 アダマンタイト、ファンタジー鉱物の中でも最も硬いとされる鉱物である。ドワーフの心に火をつけるにはもってこいの産物。これが発見されたのは嬉しい誤算だった。


「私たちは鉱物には興味がないので、産出した鉱物は全てドワーフのみなさんの物です」


「そ、その、本当にアダマンタイトが採れるのですか?」

「よ、横から失礼します! そ、その、アルコール度数の高い酒というのは、試飲させてもらうことができるのでしょうか?」

「お、おい、そんなことより、アダマンタイトだ! アダマンタイトの原石は見せてもらえるのでしょうな?」


 ドガッティ、かなりの酒好きのようだ。蒸溜酒という聞きなれない言葉に興味津々の様子。これは、お互いによい関係を結べそうな気がしてきた。


「えーっと、蒸溜酒も原石も持ってきております。とりあえず、みなさんで確認してもらってもよろしいでしょうか?」


「量はどのくらいあるのだ? 我々は少量では納得せぬぞ!」

「そ、そうだ! 我々が作る武器とどのぐらいのレートで酒が交換できるのかも確認が必要である」


「うーん、例えばこれぐらいの武器だったら、蒸溜酒を二瓶と交換になるでしょう」


 ちょうど、打ち終えたばかりと思える一般的な片手剣があったので、蒸溜酒を取り出して並べてみせた。ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。


「汎用品の片手剣でこの酒が二瓶……」

「ま、まずは、味から確認しよう」

「は、はやく、コップを持ってきてくれ!」


 やはり、ドワーフの酒好きというのは定番だったようだ。アダマンタイトについても食い付きがとてもよい。これならば、よい関係性が築けそうだ。


「な、なんだ、この芳醇な香りと味わいは!?」

「スッキリとしたなかにガツンとくる。これは我々が飲んでいる火酒の酒精よりも度数が高いぞ」


 すっかり、宴会が始まってしまったドワーフの集落であったが、アダマンタイトの原石を見つめていた長老様も、まるで恋する乙女のようにうっとりと頬を上気させていた。


「お気にめしましたか?」


「ほ、本当に約束を守ってくれるのだな?」


「お互いのためでもあるのです。ダンジョンや周辺の山々は鉱物を提供出来ますし、その鉱物で作ったアイテムはダンジョンのポイントに変わり、あなた方には酒と食糧と交換できる」


「つまり、ダンジョン側にもメリットがあるということか……。わかった、一度現場を確認させてくれ。ダンジョン内に作るという我らの新しい集落についても相談させてもらいたい」


「もちろんです。信用して頂きありがとうございます」


「信用するもしないも、こちらは逆らえるほどの力もない。こんなおいしい条件ならばこちらから頭を下げてお願いしたいわい」


 これで何とか、ボトル先輩にもいいお土産が渡せることになる。しかもドワーフ達がいれば、ダンジョンの場所を勇者一行に気づかれたとしてもカモフラージュ出来るかもしれない。お互いに良い関係性を築ければ、よいフォーマットになる。




 こうして、帰るまでの期間を『空島ダンジョン』と『クリスタルマウンテンダンジョン』を行き来しながら問題点、課題点を少しづつクリアにしていきながら無事に軌道に乗せることが出来た。


 残った勇者パーティのことも気にはなったが、空からの監視と、険しい山々への侵攻はそうないだろうと考え、後のことはドロシーやルーナちゃん、ボトル先輩に任せた。特に『空島ダンジョン』のポイントはどえらいことになっているので、いくらでもやりようがあるように思える。すぐにポイントクリアもしてしまいそうなので、ポイントクリア後の『クリスタルマウンテンダンジョン』へのフォローについてもお願いしておいたので大丈夫だと思いたい。


 ということで、魔法陣を再び起動できるようになった僕は、久し振りに第一世界に戻ることになった。怒られるかな……。と、とりあえず、謝ろう。

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