第21章 13話
「ここが『ポルンガダンジョン』の場所なんだね」
ジルサンダーに乗って、いくつかの山々を超えたその場所は、多少は緑もあって標高も低い場所のため少なくとも『クリスタルマウンテンダンジョン』よりは良い立地なように思える。それでも人が近くに住んでいないような場所だけに、選びたくない場所であることは間違いない。
ジルサンダーはそのまま躊躇なくダンジョンの中へと入っていき進んでいく。ダンジョンの中は少しジメジメとした感じで渓谷と河原が入り混じったような階層になっている。所々でカニの吹き飛んだ死骸が散乱しているので、『ポルンガダンジョン』のダンジョンモンスターがカニさんであることはよくわかった。水のある階層にウンディーネとか無双するよね。
「ウンディーネが手当たり次第、吹っ飛ばしていったんだね。ジルサンダーは戦わなかったの?」
ガウガウと吠えながら、俺の役目は走ることだからと言わんばかりに小刻みにステップを踏みながら進んでいく。それ気持ち悪いからやめてほしいかな。ちょっと酔いそうだから……。
どうも性格が変わってしまったような気がしないでもない。まぁ、ジルサンダーについてはウンディーネに任せているからそのまま遠くから様子を見ようかな。
三階層から次の階層に向かおうとした時に、人の声が聞こえてきた。どうやら次が居住区らしい。さてさて、どんなことになっているのやら。
「私はしょうがなく従っていたの。誰が好き好んでこんなガキの言うこと聞くのよ!」
「私だって、楽に過ごせるっていうから傘下に入ったのに、こんな小さい子にあっさり攻略されちゃうなんて契約違反も甚だしいわ!」
「「責任取りなさいよ、ガリオン!」」
「ルーナのダンジョンに、こんな強いボスモンスターがいたなんて想像できるかよ」
とても見ていられない光景にウンディーネも呆れ顔だ。どうやら、ボスモンスターの処遇もあったから助けようと考えていたらしいのだけど、内部で喧嘩勃発してカオスな状態になってしまったので僕に助けを求めたということらしい。
「喧嘩しているところ悪いんだけど、君がガリオンくんかな?」
「お、お前は誰だ!? そのモンスターと一緒ということはルーナの関係者か?」
「そうだね、僕はルーナちゃんから助けを求められたので、お手伝いをすることになったダンジョンマスターのタカシだよ」
「なんであんなダンジョンを助けるんだよ。もしかして、お前ロリコンだな?」
「傘下におさめるダンジョンマスターを嫁にするガリオンくんに言われたくないよ」
「う、うるさい! 僕はモテないから実力で勝ち取っていくタイプなんだ」
「ガリオン、ちょっと肥満気味なお子様だものね」
「そうそう、名前負けしているわよ。ガリオンとか、ちょっとカッコよさげな名前じゃない。でも見た目がこれでしょ」
傘下にしたダンジョンマスターに、煽られてしまっているガリオンくんが、若干不憫に思えてくる。
「タカシって言ったかしら? 私たちあなたのダンジョンの傘下に入ってもいいわよ。もちろん、おままごとではない本当の嫁として夜のお世話もしちゃうわ」
「タカシって結構強そうだし、私ちょっとタイプかも。ガリオンとは比べ物にならないわよね」
「お、おまえら……」
ルーナちゃんと同級生ぐらいに思えるガリオンくん。見た目は確かに肥満気味の小学生。一方、お姉さん方はどちらも二十代半ばぐらいだろう。
「えーっと、お姉さんたちのお名前は?」
「私はドリゼラで」「私はトレーシーよ」
「そう。二人をルーナのダンジョンに迎えるつもりはない。あー、君たちのボスモンスターはもらうかもしれないけどね」
「な、なんでよっ!」「私のホワイトグリズリーを奪うの!?」
「というか、今頃ルーナのダンジョンはこいつらのボスモンスターに蹂躙されているはずだ。もうすぐルーナからギブアップの会談連絡がくるはずだ」
「そうなんだ。二体のボスモンスターなら僕がすでに倒しているよ、この通りにね」
闇の門からボスモンスター二体を取り出すと全員が黙ってしまった。まあ確かにこの巨体だからね。あっさり沈黙させられるイメージがなかったのもわかるよ。
「ということで、君たちの運命は僕が握っている。ガリオンくんには、今二つの選択肢があるんだけど聞いてみるかい?」
「な、なんだよっ!」
「一つは、『クリスタルマウンテンダンジョン』の傘下に入って、この場所でポイントを稼ぎながらルーナちゃんのダンジョンへ食料を提供すること。二つ目は、今この場で僕と戦ってもらう。僕を倒せれば生き残れるし、ダメならそこまで。どうする?」
「そ、そこのボスモンスターは手を出さないのか?」
「ウンディーネのことかな? もちろん戦うのは僕だけだよ。残ったメンバー全員で掛かってきてもいい」
「そ、そうか……」
僕が巨体のボスモンスター二体をあっさり倒したこと忘れてしまってはいないだろうね。
それぐらいウンディーネの殺戮インパクトが強かったということかもしれないけど。正直言って、ルーナちゃんとはここのメンバーは距離を取りたいかなーというのが僕の印象だ。得るものがほとんどない。友達や先輩としての役割も期待できない。
「ちょっと、私たちは!?」
「助けてくれないの?」
「君たちはガリオンくん配下のボスモンスターなんだ。どうして僕が助ける必要があるの? 君たちは、ルーナちゃんのダンジョンで何ができるのかな?」
新作、『僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑』をはじめました。
呼び出した召喚獣が、何故かタイ料理屋の店主だったし、この召喚獣いろいろとおかしい。是非お楽しみ頂けますと幸いです。
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