第21章 12話
ダンジョンの入口から入ってきたのは大型のモンスター二体のみ。
「ホワイトグリズリーとキングエレファントです!」
この二体のゴリ押しでダンジョンを傘下にしてきたのだろう。確かに見た目のインパクトは強烈だ。
「ちっ、俺がグリズリーを押さえてる間に、キングエレファントを頼む」
「ど、ど、ど、どうしましょう」
「二人とも落ち着いて、見学しててって言ったでしょ」
ダンジョンに入ってから、しばらく周りの様子を窺っていた二体のボスモンスターは、僕たちにようやく気づいたようで、走って向かってくる。
「来たぞ! 本当に大丈夫なのか?」
「問題ありませんよ」
僕は少し前に出ると、先に向かってきたホワイトグリズリーの殴りかかってくる爪を、あっさり掻い潜り、右脇腹に一発。
ホワイトグリズリーは、そのまま沈んでいった。これだけレベル差があれば魔法なしでも案外倒せるっぽい。
さて、キングエレファントは……、麻酔のガスを風魔法で飛ばそう。
ほらっ、ちょっと大きいし迫力があって恐いじゃない。だって象だよ、象。
すると、キングエレファントは急に力が抜けたように足から崩れていった。
「タカシ、な、何をしたんだ!?」
ボトル先輩が驚くのも無理はない。初見ならエレメント系のモンスター以外なら、すべからく殺られるだろう。麻酔強い。
「空気に麻酔のガスを含ませたんです。僕たちのいる、この辺りは大丈夫ですから安心してください」
「麻酔ガスだと!? じゃあ、あいつは倒したのではなく、眠っているというのか」
「麻酔ガスって何ですか? 寝てるだけってことは早く倒さないと不味いのでは……。あ、あれっ? 私たちも同じ空間にいるから眠ってしまうのですか!?」
あわてて鼻をつまもうとしているルーナちゃんが可愛らしい。ボトル先輩はボトルなので鼻がないせいか、落ち着きがあるように思える。
「麻酔ガスはもう拡散して、空気をダンジョンの外の方に流しているから大丈夫。ボスモンスター達も、しばらくは目覚めないから安心していいよ」
「しばらくは起きないって、どのくらい起きないんだ?」
どうやらボトル先輩、ポイントを増やす為にこのボスモンスターを利用したいらしい。
ということで現在、大きめのリヤカーを引き、ダンジョンの入口を入ったり出たり繰り返している。といっても、外に出るにも三十メートルぐらい進まないと出たとカウントされないらしいのでちょっと面倒くさい。
これは、あれだ。敵対してきた侵入者の出入りを繰り返すことでポイントを稼ごうという、とってもセコい戦略なのだ。
「ダンジョンの外に出れて、このボスモンスターを運べるのはタカシしかいねぇんだ。頑張ってくれよ。俺も途中までは運ぶからよ」
つまり、一応撃退ポイントが入っているという判断になっているらしい。討伐ポイントと違ってポイントは低いものの、ポイントが少ない『クリスタルマウンテンダンジョン』においては貴重なポイントになる。
「ウンディーネ達が『ポルンガダンジョン』を攻略したらポイント入らなくなるのかな?」
「大丈夫なはずだ。うちのダンジョンが傘下にしない限り、まだまだポイントは稼げるはずだぜ」
この一時間で、五万ポイントが貯まったとかルーナちゃんが喜んでいる。やはり、効率が悪すぎる。熊はまだしも、象はちょっと僕でなかったら運べないからね……。というか、運ぶのは熊だけでよくない?
これなら、どこかの街から人を連れてきた方が早いよね。なんだか考え方が犯罪チックになってきているのがとても悲しい。
そんなことを考えながらダンジョンの外に出るとジルサンダーが戻ってくるところだった。
「あれっ? ジルサンダー」
どうやら、ウンディーネは一緒ではないようだ。
ジルサンダーは、僕に乗れと言っているような動きをしている。『ポルンガダンジョン』で何かあったのだろう。特段慌てた様子でもないので、何か戦闘とは別の問題があったということか。
「ボトル先輩、ポイント稼ぎはちょっと中断で、僕は『ポルンガダンジョン』の様子を見てきますね」
「おー、わかった。で、そのボスモンスターはどうするんだ。急に起きたりされたら困るんだが」
「ですよねー。一緒に持っていきます」
闇の門にボスモンスターをしまうと、ジルサンダーの背に乗り『ポルンガダンジョン』へと向かって走り出す。ジルサンダー、小さいけど意外と乗り心地は悪くない。
それにしても、場所悪いなー。周りは本当に生き物の気配がない。それに標高も高いようでとても寒い。ここで生き残るダンジョンとか想像できないかも。
新作、『僕の召喚獣がおかしい ~呼び出したのは超上級召喚獣? 異端の召喚師ルークの困惑』をはじめました。
呼び出した召喚獣が、何故かタイ料理屋の店主だったし、この召喚獣いろいろとおかしい。是非お楽しみ頂けますと幸いです。
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