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第21章 10話

『クリスタルマウンテンダンジョン』、ここは一面が雪に覆われた標高の高い山にあるダンジョン。僕がここのダンジョンマスターだったらと思うと頭が痛くなるぐらいには厳しい環境だ。まずもって生物が少ない。これではポイントを稼ぐことも一苦労だろう。ボトル先輩もルーナちゃんも今までよく頑張って生きてきたと思う。


「あの、はじめまして。ダンジョンマスターのルーナです」

「久し振りだなタカシ。レイコは元気にやっているのか?」


「ルーナちゃん、はじめまして。よろしくね。ボトル先輩もお久し振りです。レイコさんはとても元気ですよ。今ではうちのダンジョンに欠かせないパートナーです」


 ボトル先輩は相変わらずかな。ルーナちゃんは十代前半、つまり小学生の高学年ぐらいに思える。痩せているせいか、ちゃんと食べているのか心配になる。


「そうか、ダンジョンは軌道に乗っているのか?」


「はい、というかポイントクリアしています」


「なるほど、そうだったのか。ひょっとしたら敗者復活でこっちの世界に来たのかと思ったんだが。そうか、クリアしやがったか」


 ボトル先輩が微妙な表情ながら、自分の事のように喜んでくれているのは、きっとレイコさんを守れたことへの感謝と自分がレイコさんを守れなかったことへの悔しさも含まれているのだろう。


「実は、ここには第一世界から手違いで来てしまいまして。二十日もしたら戻ることになります。ですので、『空島ダンジョン』のドロシーにお願いしてボトル先輩のダンジョンを探してもらっていたんですよ」


「そうか。実は前回よりもひどい状況で正直困り果てていたところだ。ダンジョンの周辺がこの状況だからな。それで、ルーナは『ポルンガダンジョン』からの要請に応えようとしている」


「いや、それだとボトル先輩が……」

「そのへんの細かい話は、ルーナにはしてねぇからいいんだよ」


「ワインボトルさん? どういうことですか」


 やはり思っていた以上に深刻な状況だったようだ。食べていくことにも苦労するような状況となると選択肢が限られてくる。ボトル先輩も諦めざるをえなかったのだろう。見つけられて本当に良かった。


「ルーナちゃんが『ポルンガダンジョン』にボスモンスターとして行くことは出来るけど、その場合、案内人であるワインボトル先輩と召喚したモンスター達はこのダンジョンから離れることは出来ない。あっ、ボスモンスターは一緒に行けるけどね」


「そ、そんな話聞いてない!」

「タカシ、何故ルーナに話した!」


「えっとですね。僕はレイコさんからボトル先輩のことを頼まれているんです。それに、僕自身もこのダンジョンの力になりたいと思っています。なので、今日から僕が帰るまでにこのダンジョンを最強のダンジョンに造り変えます」


「ポイントクリアしたと言っても、タカシにそこまでの力があるのか? 俺が言ってるのは個の力じゃねぇ。環境を変えられる力のことだ。ダンジョン周辺には生き物なんて全くいねぇんだぜ」


「そうですね。参考になるかわかりませんが、一応『空島ダンジョン』は僕がいた十日間で、毎日数千万ポイントの入るダンジョンになりました。ポイント使いたい放題です。ドロシーには無駄使いしないように注意していますが、実際使いきれないでしょうね」


「ポ、ポイント使いたい放題……」


「あっ、そうだ。とりあえず食事にしましょう。お腹が減ったままでは頭も働かないですからね」


 そう言って、僕は大量の『菜の花弁当』と飲み物を取り出して二人に渡した。


「タカシさん、こ、これ食べてもいいの?」


「うん、見ての通りいっぱいあるからゆっくり食べてね」


 食べ盛りの年頃でまともに食事をとれてなかったのだから大変だっただろう。ルーナちゃんは泣きながら口いっぱいに『菜の花弁当』を頬張っている。


「それで、ボトル先輩からみて『ポルンガダンジョン』ってのはどうなの?」


「最悪の選択肢だな。選択肢がなかったからと諦めていたが、他に可能性があるならルーナは行かせられねぇ。そもそも傘下に入る条件が嫁になることだからな。しかも、ダンジョンマスターが男だった場合、問答無用で武力制圧をしたようだ」


「えー、そんなに強いダンジョンなの?」


「そこまでではないと思うんだが……。奴のいるダンジョンも山岳地帯だからな。傘下にしたダンジョンのボスモンスターで攻め込んだんだろう」


「傘下に入ったダンジョンマスターも、場合によっては助けてあげたいと思うんだけど、とりあえずはルーナちゃんに『ポルンガダンジョン』の傘下に入るって話を正式に断ってもらおうかな」


「で、でも断ったら、攻めてくるって言ってたよ。だ、大丈夫なんですか?」


「うん、大丈夫、大丈夫。僕の肩に乗っている水の精霊ウンディーネはこう見えてレベル二十五なんだよ」


「二十五!?」

「お、おいっ、ならタカシのレベルは……いくつなんだ?」


「ウンディーネよりは上だけど、まあそれは内緒ということで」


 レベル八十とか言ったら間違いなくどん引きされるんだろう。何ならお前一人で『ポルンガダンジョン』行っちゃいなよとか言われかねない。僕も働きはするけど、一人きりで働くのは御免被る。こういうのはみんなで団結して頑張るからいいんだよね。うん、きっとそう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一瞬、肩で凍っているウンディーネちゃんを想像しましたが、ダンジョン内の気温は快適なようですね。
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