第3章 1話
今日はレイコさんと千葉ダンジョンを散歩している。
あれから数日経ってレイコさんも前を向いて歩き始めている。
これから住む場所だし、少しでも安心できるようにしっかりと案内しよう。それに気晴らしにもなるだろうからね。
「この細い道は山梨ダンジョンにはなかったです。もっと幅の広い通路ならあったんですけど」
「あー、実はポイント交換の時に魔力操作を加えるとちょっとしたカスタマイズが出来るんだよ。だからこの通路はレイコさんの知っている通路を変更したものなんだよ」
「えー、そうだったんですか!やっぱりタカシさんはすごいです。とても同じ時期にダンジョンマスターになったとは思えないです」
「うちのダンジョンはラッキーが重なってたからね」
おもにコウモリさんとか。
「ボスモンスターで水竜のティア、レヴィが来てくれたしね」
あと、コウモリさんが来てくれました。
「そういえば、ティアさんが魔法を教えてくれるんでしたね」
「うん。僕もティア先生に魔法を教わったんだ。褒めながら良いところを伸ばしてくれるから頼りになるはずだよ」
「そうなんですね。私もティア先生にしっかり教わって魔力操作を覚えられるように頑張ります」
向上心があることはいいことです。
それでは通路をゆっくり進んでいこう。
「この『菜の花』も植物系のモンスターなんだよ。弱い催眠効果の魔法を使えるんだ」
細い通路の両脇を『菜の花』が囲んでいる。『菜の花』は通路から催眠をかけていく。通路を抜ける頃には耐性の低い人を『てんとう虫』さんが操れるだろう。
「あっ本当ですね。あそこの『菜の花』歩いてます」
根の部分を器用に使い移動している『菜の花』がいた。
こちらを見てお辞儀してくる。なんかちょっとかわいい。
「『菜の花』の周りを飛んでいる『てんとう虫』も昆虫系のモンスターなんだ」
「一見するとモンスターとは思えないですね。」
低い階層でレベル上げとかさせたくないからね。彼らには半分景色になってもらいながら着々と催眠頑張ってもらいます。
「この通路には追加したモンスターが二種いてね、下からは菜の花にまぎれて『一角ウサギ10P』が侵入者の足元を狙っている。上からは『小妖精10P』が風の魔法でいたずらしてくる」
「上下からの攻撃で警戒させて、慎重に通路を進ませる作戦ですか?」
「うん。催眠効果を高めるためにゆっくり進んでもらいたいからね」
『一角ウサギ』も『小妖精』もヒット&アウェーで攻撃したら穴の中や天井にすぐ逃げてもらいます。
そもそも小妖精に攻撃力はないんだけどね。
「ここが一階層の終わりですね。とっても綺麗な場所ですね」
一面菜の花が咲き乱れる部屋。一番奥には下層へと向かう階段が見えている。ここまで辿り着くのに普通に歩いて一時間。警戒しながら、戦闘しながら来たら倍以上の時間とかなりの精神力を削れるだろう。
『水の神殿(小)』と『半魚人』達は二階層目にお引っ越しです。
階段を降りると吊り橋が見えてくる。
先に進むにはこれを渡らなければならない。
吊り橋の下には水深が見えない濁った水。もちろんそこには『半魚人』達が狙いを定めている。狭く揺れる吊り橋を思う存分活用してもらいたい。
ようやく吊り橋を渡りきると、そこは一面に広がる沼地フィールド。
数を増やした『ロックタートル』と『ジャイアントクラブ』の強力な水棲モンスターが待ち構えている。
そして沼地の奥に『水の神殿(小)』を設置しなおして、新しく加わったボスモンスター『ヨルムンガンド』がそこを守っている。
「ヨルムンガンドちゃん。お疲れさまです」
「おい!ちゃん付けで呼ぶなと言ってるだろレイコ!」
このヨルムンガンドちゃん。
ちみっこい男の子である。
見た目が五歳児。頭脳も五歳児である。
そのまんま可愛らしい男の子なのだが、そこはボスモンスター。かなり強い。僕のボスモンスター運は絶好調をキープしているといってもいいだろう。
「レイコさん、ここらでお昼にしようか。ヨルムンガンドちゃんもサンドウィッチ食べる?」
「なっ、マスターまで!さ、サンドウィッチはツナとタマゴしか食べないからな。野菜のはレイコが食えよ!」
ちみっこのくせに好戦的で二階層のボスを譲らなかったためここにいるのだが、それなりに強いため許可している。
頑張ってレベル上げてね。ヨルムンガンドちゃん。




