第21章 8話
「それで、ワインボトル先輩の場所はどの辺りなの?」
「そうですね……そこまで離れてませんね。ここからだと、空島ダンジョンを移動させて一日半ぐらいで到着できそうです」
そう、なんと捜索をお願いしていたワインボトル先輩の無事が確認された。ドロシーとは既に会談もしてもらっており、僕がお邪魔していることも話してもらっている。現状では、近くのダンジョンにちょっかいかけられている程度で、さしあたって危険なことはなさそうとのこと。
「それでレイコさんというのは、タカシ様の彼女ですか?」
ドロシーが、話を聞きたくてしょうがなさそうにしている。きっと、女の子は恋バナに飢えているのだ。リリアさんがいなくなってから、こういった話もご無沙汰なのだろう。
「そうだね、彼女だよ。ワインボトル先輩のダンジョンから助けたことがあってね、今ではうちのボスモンスターをしてもらってるんだ」
実際には、ボスモンスターよりも副業の方が忙しくなっている。会社の運営から、養鶏場の設置(千葉ダンジョンはゴブリンとヨルムンガンドちゃんに丸投げ)と、てんとう虫さん達からの情報をレヴィと一緒にとりまとめている。
あれっ、レイコさんってまだ高校生のはずなのに、かなり超人的な活躍をされている……。
「他所のダンジョンマスターを彼女にしてしまうとか、ちょっとドラマチックですね!」
ドラマチックなのだろうか? 他にも彼女(水竜姉妹、王女様)がいるとか言ったらドン引きされるかもしれないので、ここは黙っておこうと思う。
それにしても、明日には久し振りにボトル先輩と再会か。ボトル先輩はここでポイントをクリアしないと後がないので、残りの日数でできる限りのフォローをしてあげたいと思う。レイコさんも心配していたからね。
「今日はいろいろとありすぎて疲れちゃったから、明日に備えて早めに寝ようかな」
「居住区にタカシ様用のお部屋を用意しておきましたので、ごゆっくりお楽しみください。ウンディーネちゃんとジルサンダーちゃんの部屋もありますよ」
ポイントが貯まりはじめると、ついつい無駄遣いしてしまうものだ。ティア先生とか残高を気にせず使いまくりそうだから、絶対にクレジットカードを渡しちゃいけないタイプだ。もしやとは思うがドロシーさん。
「ち、違いますからね! 使いきれない程ポイントがあるし、明日になったら更にポイント増えるし、どんどん使っちゃえーとか思ってないですからね!」
「いや、僕は何も言ってないんだけど」
「そ、そうでしたか。つ、つい、目線が可哀想な子を見るような、冷めた視線っぽく見えたので……」
「ポイントはどんどん使って構わないけど、先ずは防御をしっかり固めてからだよ」
「も、もちろんです」
「『空島ダンジョン』は、島に上陸させなければ勝ちなんだ。地上からの動きをしっかり把握して、近づく者をたたき落とす。もしくは、近寄らせないこと」
「ポイントで出来ることをいろいろ探して見ようと思います」
「うん、頑張ってね、!ドロシーなら大丈夫だよ。それじゃあ、おやすみ」
居住区に戻ると、ちゃんと僕の部屋が用意されていた。名前が書いてあるので多分、合っているはず。ウンディーネとジルサンダーの部屋も隣に少し小さめに造られていた。
「お待ちしておりましたご主人様。お風呂になさいますか? 食事になさいますか? それとも……」
「おいっ、なんでこの部屋にイムレアがいるんだよ」
薄いシャツにドロワー姿のイムレアちゃんが座って待っていた。
「ド、ドロシーが、タカシ様のお背中を流さなければ一週間食事を抜きにするって……」
「えー、いや、断るよ」
「ちなみに、断られた場合、一週間服を着ることを禁止されている」
「わかった。ドロシーにそれを解除してもらうように言ってこよう」
「や、やめて。きっとこれからもドロシーとの関係は続いていくのだから、歯向かわない方がいいことぐらい理解している」
悩むまでもなく、こういうちょっと後ろめたい感じのことは止めておいた方がいい。
きっと、そろそろダンジョン協会経由で僕のことも捕捉されている可能性がある。
絶対にバレないなら考えなくもないが、いや違うそうじゃない。僕の勘が、こういう後ろめたいことをしない方がいいと言っている。
ドロシーなりに気を使ってるのかもしれないけど、彼女いる人にそういうことしちゃダメ絶対。
「ところで、ドロシー。そこで何をしているのかな?」
「ふぁっ! い、いや、ちょっとお部屋を覗いて見てみようかと……じゃなくて、申し訳ありません!」
「まったく、こういうのはいいからね。イムレアも自分の牢屋に戻りなさい」
「は、はい」
まぁ、ドロシーはダンジョン協会のこと知らないはずだから、致し方ないか。とりあえず、明日はボトル先輩のお手伝いをしないとね。
続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。




