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第21章 3話

「ワフッ、ワオーン」

「ワッフ、ワッフ」


 目の前ではコボルトリーダー二匹が、お腹をみせて服従のポーズを表している。

 言っておくけど、姿は現しただけで僕は特に何もしていない。


「急にお邪魔してごめんね。ところでリーダーは二匹だけなのかな?」


「ワォン」「ワフッ」


 なるほど、二匹だけらしい。リーダー思っていたより少なかったんだな。


「では、リーダーにお願いしたいことがあるんだ。全てのコボルト達に伝えてほしい。別のダンジョンで人間と戦う意志があるものは僕が連れていくと話してもらいたいんだ。場所は『空島ダンジョン』になる。ここよりは安全な場所になるだろう」


「ワフッ」


「もちろん、このダンジョンから出て死ぬことは君たちの消滅を意味する。ここで、ずっと殺され続けるか、それとも人間に一矢報いるかを決めてもらいたい」


「ワ、ワフッ」


「ちなみに、君たちはどうする?」


 二匹顔を見合わせるようにして、すぐにこちらを見た。


「「ワォン!」」


「そうか、来てくれるんだね、ありがとう。ちなみに、ここには明日学園から三十名の生徒がやってくる。攻撃は全て僕が行うから全コボルトは最終階層まで待避するように」


「ワフッ、ワフ?」


「あぁ、君たちも下がっていてもらって構わない。僕一人で十分だよ」


 さて、コボルト達はどのくらいドロシーの仲間になってくれるだろうか。このお土産でドロシーもきっと喜んでくれるだろう。少しでもお世話になる『空島ダンジョン』を強化してあげたい。


 こうして、コボルト達の気持ちを確認したところ、全てのコボルト達が移動することを決意してくれた。コボルト三百二十匹、コボルトリーダー二匹が一緒に来てくれることになった。



 そうして日が変わって、現在は学園の生徒達が2階層まで来ている。引率する先生は三名。


「おかしいですね……。しばらくダンジョンでの討伐は行っていなかったはずです」

「それなのに、一匹のコボルトも見ていない」

「奴らもバカじゃない、奥へ隠れているのでしょう」

「それにしても、階層を跨いで移動するのは珍しいケースだわ。これは、学園にも報告が必要かもしれないわね」


 学園の先生は、いつもとは違う『トリーニ山ダンジョン』の様子に違和感を覚えていた。長年教師をしてきて、はじめての経験だっだ。それでも二階層までくればコボルトが出てくるだろうと思っていたのだ。


「先生、二階層にもコボルトがいません。どうしましょうか?」


「二階層にもいないの? 誰か日程を間違えて朝に討伐に入ったのかしら。うーん、困ったわね。これでは訓練にならないじゃない」


「サビア先生、私と一緒に三階層の様子を見に行きましょう。ストーレン先生は二階層に残って生徒達を見ていてもらえますか?」


「ええ、かしこまりました。それにしても珍しいこともあるもんですね。ピルーク先生も一応気をつけてくださいね」


「ええ、大丈夫よ。『トリーニ山ダンジョン』ですから。では行ってくるわ。サビア先生、参りましょう」


「はい、ピルーク先生」


 こうして様子を見に行った二名の先生は、いつになっても戻ってこない。三階層に進んでから既に時間は三十分を超えようとしていた。


「お、遅い。いくら何でも遅すぎる。不測の事態が起こっているのでしょうか。アリサ、ルーシー、私と一緒に三階層へ向かいましょう。他の生徒は本日はテントを張ってキャンプの準備を進めること。一階層と三階層側に必ず見張りを立てるように」


 生徒達からも不安な表情が見てとれたが、今は戻ってこない二名の先生の方が気になる。『トリーニ山ダンジョン』なので生徒達だけでも問題はない。しかし、この得体の知れない雰囲気が何なのか、このダンジョンで何が起こっているのか早急に確認しなければならないと思ったのだ。


「ルーシー、大丈夫なのかな」

「何を言ってるのアリサ。成績優秀な私たち二人が先生から頼りにされているのはとても光栄なことじゃない」

「で、でもいきなり三階層だよ……」

「大丈夫よ。様子を見るだけでしょうし、先にピルーク先生とサビア先生も行っているのですもの」

「そ、そうね。ストーレン先生も一緒ですものね」


 しかしながら三階層へ入った三人は、階段を降りたところで倒れている二人の先生を発見することになる。


「ピルーク先生、サビア先生! 何があったのです。だ、大丈夫ですか!」


 走って先生の元へと近寄っていったストーレン先生も、階段を降りたところでバタッと倒れてしまう。


「ストーレン先生! な、何が起こっているの。アリサは、このことを二階層にいる他の生徒に伝えて」


「ルーシーはどうするの?」


「私は、先生達を助けないと。このままでは危ないわ」


「で、でも……」


「いいから、早く! アリサは他の生徒たちを連れてきて、お願い」


「わ、わかった。何かの魔法の可能性があるわ。気をつけてねルーシー」


「そ、そうね。気をつけるわ」


 そうして、階段を下りていったルーシーだが、下に降りた途端に急激な眠気に襲われ倒れてしまうのだった。


「麻酔の空気は効果抜群だよね。このまま二階層に範囲を延ばしていこうか。三階層は換気しておかないとね。じゃあ、ちょっと行ってくるから、君たちはこのままここで待機していてね」


「ワフッ!」

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