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第21章 1話

「あれがセントポールの街?」


「はい、そうです。これ以上近づくと変に思われるかもしれませんのでストップしておきます」


 セントポールは高い山々に囲まれている盆地のような場所で『空島ダンジョン』はその山にかかる雲に隠れるようにして上空に位置どっている。


「ドロシー、それで下の声は拾えるのかな?」


「大丈夫ですよ。この望遠鏡を覗いた先にいる人物の会話が届くようになっています」


 学園都市というだけあって、街には制服を着た生徒が多い。街の雰囲気も若い人向けの店が多いようで、それなりに活気があるように思える。僕はとりあえず、近くの屋台で買い物をしていた生徒の話を聞いてみることにした。


「明日は課外授業だって、やだなぁー」

「えっ、じゃあダンジョンに行くの?」

「うん、二日潜りっぱなしだってー。お風呂入れないから臭くなるよねー」

「うわー、それはキツイね。せめてレベルでも上がるといいね」

「まー、適度に頑張るよー」


 僕が話を聞いていたのは学園の生徒。どうやら近くにダンジョンがあるらしく、授業として向かうらしい。これは解放されているダンジョンの可能性が強そうだ。


「ドロシー、この付近に解放ダンジョンは?」


「はい、『トリーニ山ダンジョン』のことですね。初期に解放されたダンジョンで、学園都市の生徒がよくレベルを上げにいってます」


「なるほど、使えるかな……」


「どうするつもりなのですか?」


「勇者メルビル君を『トリーニ山ダンジョン』のダンジョンマスターに仕立てて、大暴れしてもらおうと思っているんだ」


「えっ! そ、そんなことできるんですか!?」


「上手くいくかわからないけど、たぶん大丈夫だと思う」


「ちなみに、どのような作戦なのか教えて頂いてもよろしいでしょうか……」



◇◇◇◆◆



 翌朝、南門前に集合した私たち生徒は担当教員の説明を受けながら『トリーニ山ダンジョン』の課外授業における注意点などをメモしていた。このダンジョンはセントポールからは歩いて三十分程度でダンジョンに到着する。


 『トリーニ山ダンジョン』は三階層の初級ダンジョンではあるが、二階層まではコボルトと呼ばれる雑魚敵である犬型の小さい獣人しかいない。しかしながら最終階層にはコボルトリーダーがおり、集団攻撃はもちろん魔法攻撃もしてくるので注意が必要らしい。


「アリサ、ダンジョンはじめてだっけ?」

「そうなの。二日もダンジョン入りっぱなしとか無理だよー」

「先生がいるから安心だけど、ちょっと怖いよね」

「えー、ルーシーはなんか余裕ありそー」

「そんなことないよ」


 実はこの課外授業、学園の新入生が最初に通る道といってもいい。レベル上げを行いながら個々の適性を見極めてクラス分けを行っていくことになるからだ。効率よく勇者となりうる人材を早期発見するためのプログラムとなっている。


「はい、そこ私語は慎みなさい。ダンジョンに軽い気持ちで挑んだら大変な目にあいますよ」


「はーい。すみません」


「コボルトダンジョンなんだからどうってことないのにね」

「でも、三階層は魔法攻撃があるんでしょ?」

「魔法を使えるコボルトリーダーも少ないっていうし大丈夫でしょ」

「そ、そうだよね。最近は課外授業で怪我人も少ないっていうもんね」


「はい、そろそろダンジョンの入口ですよ。ここからは各パーティごとに進みます。本日の目標は二階層エリアの階段付近でキャンプを張ります。決して三階層には進まないように! いいですね」


「はーい、わかりましたー」


 初日はいつも通り、何も問題はなかった。しかし、最終日に一行が向かった三階層では今までの三階層とは様子が異なっていた。


 いち早く異変を感じた担当教員が撤退を指示するものの、時すでに遅し。予想外の敵に戸惑い、恐怖し、逃げ惑うことしかできなかった。




 その日課外授業に向かった計三十名は、そのほとんどが死亡。辛うじて生還を果たした生徒はたったの二名。解放ダンジョンだったはずの『トリーニ山ダンジョン』は、勇者メルビルの裏切りにより新たなダンジョンとして蘇ったのだった。


 学園都市では緊急事態宣言を発表し、『トリーニ山ダンジョン』の封鎖、勇者の招集を求めるもののその僅か二日後に街が消滅することとなる。


 もちろん、裏切りの勇者メルビルによって。

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