閑話 20
タカシ様が消えて既に三日が経過している。公爵派と王家の内戦は、予定通り公爵派の圧勝で現在は鎮静化に向け動いている。
フレーゲル国王はキュトラスで茫然自失のところ取り押さえられた。
「な、なぜ魔法陣が稼働しているのだ……」
後でわかったことなのですが、どうやら魔法陣を調べていたタカシ様はウンディーネとともに、何かの拍子で稼働してしまった魔法陣で第二世界へ転移してしまったようなのです。
まったく、うっかりにも程があります。
ちなみに、こちらの内戦は公爵軍が聖女様とともに傷を癒しながら国を新しくまとめ上げる方向で動き始めているそうです。
「今回の影の功労者は間違いなく俺だよなっ!」
一人だけ元気なヨルムンガンドちゃん。タカシ様のことは心配していないというか、なんだかんだ信頼しているのでしょう。すっかり毒の魔法にどっぷりとはまっている様子。
実際、今回の内戦ではヨルムンガンドちゃんは大活躍でした。近衛師団を身動きとれないレベルで押さえ込んでいたことが結果的に大勝利に繋がりました。毒ってすごいわね……。
そんなことよりも、タカシ様のことですわ。
「ティアさん、ようやく発見しました! タカシ様は『空島ダンジョン』にいます」
「アモナ、それは本当なの!? タカシ様は生きているのね?」
「はい、間違いありません。無事でございます」
タカシ様の行方不明を知ったアモナが、ダンジョン協会に乗り込み、協会の人員を総動員させて第二世界を調べあげたところ、ようやく発見したとの報告。心底ホッといたしました。
「それにしても、戻ってこられない理由があるということなのでしょうか」
「それが、魔法陣を発動するのに一ヶ月近くインターバルが必要らしいのです」
「い、一ヶ月……」
「ティアさん! だ、大丈夫ですか!」
軽く目眩がしてしまいましたわ。一ヶ月もタカシ様とお会いすることができないなんて……。
「お姉さま、お兄さまが戻られるまで私たちは何をして待っていればいいのでしょう」
いけないわ。私がしっかりしないと、みんなが不安になってしまいますわ。レヴィもレイコもとても寂しそうな顔をしている。こういう時こそ、何か楽しいことを考えた方がいいのではないかしら。
「レヴィ、レイコ、これはチャンスよ。タカシ様がいない隙にドレスを作るわ!」
「ティア先生、服はいっぱいありますよ。ダンジョンポイントで出すのですか?」
「違うわレイコ。作るのはウエディングドレスよ。タカシ様がいない今、こうやって淡々と外堀を埋めていくの」
「「手作りのウエディングドレス!!」」
「アモナにも参加してもらった方がいいわね。魔王城へ戻ってすぐに採寸よ。生地選び、デザイン、各々にピッタリの最高級ドレスを作りあげるわよ」
やはり、次の行動が決まるとみんなの動きが変わってきますわ。
「生地やデザインは第三世界の方が揃っています。エディに一通り用意させて、こちらに持ち込みますね!」
「お姉さま、服飾関係の職人はアモナ姫に手配してもらいますか?」
「そうね、アモナがいるからドレスはこちらで作った方がいいわ。アモナに、この世界にいる尖鋭の職人を至急全員集めなさいと連絡してちょうだい」
「はい、お姉さま」
「あ、あの、ティア先生。採寸したサイズより少し小さめに作りませんか?」
「あらっ、レイコ。それはどういうことかしら?」
「いえ、どうせならこの一ヶ月でダイエットして、より美しくなった姿をタカシ様にみせるのはどうかなと……」
「……惚れ直すわ。タカシ様、惚れ直すわ! レイコ、その作戦は採用よ! これから一ヶ月はダイエットをしながら、そして健康的に美しく綺麗なボディに生まれ変わるわよ!」
「そうですね。特にお姉さまは、その、最近お腹回りが一段と成長されているようてすからね」
「そ、そんなことはないわ。気のせいじゃないかしら……」
こうして、タカシの知らないところでいつの間にか結婚に向けて外堀をがっつりと埋められていくきっかけを与えてしまったのだった。
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