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第20章 10話

 ピコン! 一名討伐しました。


「えっ、もう一人討伐したの!? まだ一分も経ってないのに本当に討伐しちゃった……。た、助かるかも……。あっ、そうだポイント交換、ポイント交換っと」


 僕は、後方にいたロイスと呼ばれたプリーストの討伐を確認すると、ウンディーネと共に居住区まで下がった。どうやら駆けだしながら本当に勇者パーティだったらしい。安全に安全を重ね掛けしまくって一人ずつ倒していこう。


「ドロシー、例のものはもう交換してくれたかな?」


「あっ、はい。『ダンジョンカメラ』ですよね? ポイント交換しました。でも、こんなアイテムより強力な『鎧の魔物』を出した方がよかったのでは……」


 『鎧の魔物』めっちゃ、やられてるじゃん。ちょっとした時間稼ぎにしかならないからね。


「大丈夫、大丈夫。少なくとも残りの二人はすぐに倒せると思うから」


 勇者はわからないけど、他に関しては少なくとも少し強めに魔法を撃てば倒せるレベルと思われる。はっきりいって僕の敵ではないだろう。


「も、もう一人はやはり難しいのですか?」


「メルビル君っていったかな。彼、どうやら勇者らしいんだ。さっきパーティの話声が聞こえてね、駆け出しと言っていたけどさ」


「ゆ、勇者……。あー、なんてことでしょう。リリア、私もじきにあなたの所へ行くわ」


「いや、リリアさん死んでないからね! ちゃんと生きてるからね!」


 ドロシーがテンパって混乱している。しょうがないと言えばしょうがない。現在進行形で勇者パーティにダンジョンを侵攻されているのだから。しかも、居住区まで残り僅かとなれば焦りもするか。


 さて、それじゃあ僕は少しでもドロシーを安心させてあげるとしよう。僕の遠隔魔法をもってすれば堂々と後ろからステルシーに魔法をぶっ放せるのだ。さて、一人死んだ影響はどんな感じなのか。


 ダンジョンカメラを覗くと、いかにも駆け出しらしい映像が映し出されていた。死んでいるロイス君に必死で回復魔法を掛け続けている勇者メルビル君、それを止めようとしている魔法使いのイムレアちゃん。少し離れたところで戦士っぽい前衛のデニス君は、後ろを向いて涙を拭っている。パーティの死をあまり経験したことがない新人パーティならではの光景だね。


 こういう状況ならどんどん行こう。考えさせないでどんどんパニックになっていってもらおうか。


 火弾(ファイアボール)×20


 わかりやすく宙に浮かべた火弾(ファイアボール)を一つずつ死んだロイス君に発射していく。


「や、やめろー!! 死者を冒涜するな!」


 なんだ、死んでるってわかっているんじゃないか。


 一生懸命に火弾(ファイアボール)を弾きながらロイス君を庇おうとするメルビル君だったが、さすがに一人で全部を弾くことなど難しく、徐々にロイス君への被弾を許してしまい、その体は燃えてしまう。あっという間に燃え広がってしまう。手や足が収縮して、まるでまだ生きているかのように動いている。イムレアちゃんはそれを茫然と立ち尽くして見ているし、デニス君は腰を抜かしたのか、そのまま地面に座り込んでしまっていた。


「な、なんで魔法が……。だ、誰が撃っているんだ。ここには誰もいないじゃないか!」


 周辺にいた『鎧の魔物』は、全て最終階層へと避難済みなので、これ以上被害が増えることはないだろう。


「デニス、落ち着くんだ。それからあまり離れるな。何だか様子がおかしい、今は固まっていよう」

「メ、メルビル、お、俺、腰が……、立てないんだ」

「しっかりしてくれっ。もう、ロイスはいないんだ!」


 しょうがないといった表情でデニスの元へ向かい歩き始めたメルビル君を画面で見ながら次に攻撃する人物をロックオンした。こちらとしてはどちらでも構わなかったんだけど、わかりやすく身動きのできないデニス君は的でしかなかった。


 稲妻(サンダーボルト)


 メルビル君があと数歩で辿り着くという時にその魔法は炸裂した。おそらくデニス君の体を起き上がらせようと右手を差し出したままの状態で固まっていた。激しい轟音が鳴り響いた後、彼の目線の先には黒焦げになって後ろ向きに力なく倒れていくデニス君がいた。


 ピコン! 一名討伐しました。


「デ、デニス!! い、一体、何が起きているんだ!」

「メ、メルビル、こ、これ以上はもう進めないわ、逃げ、逃げるわよ」


 早くこの階層から逃げ出したかったのだろう。ゆっくり後ろ向きに後ずさりながら、振り返るとイムレアちゃんは全力で三階層の階段のある方向へ走り出していた。


「ま、待って、イムレア! 一人で逃げるのは危険だ! ぼ、僕も……」


 ズダターン!!!!!!!!!!!!!!


 二発目の稲妻(サンダーボルト)はイムレアちゃんの脳天から胸を突き抜けて地面に突き刺さっていた。凄まじい轟音の後に、少し遅れて地面にバウンドするようにしてイムレアは倒れていった。


「そ、そんな、イムレアまで……。一瞬で三人も」

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