第20章 9話
「ドロシー、今残っているポイント数を聞いてもいいかな?」
「ポ、ポイントですか……。あと300しかありません」
お、思っていた以上に少ないな。かなりやられてしまったのか、それとも空の島だったからダンジョンポイントが思うように稼げなかったのか。どちらにしても早めに返り討ちにしないとボスモンスターを失ってしまう可能性があるか。
「了解。そうしたら、ボスモンスターを居住区まで下げる指示をして。やつらは僕たちが退ける」
「えっ! ボスモンスター下げちゃっていいんですか!?」
「他の鎧の魔物も僕たちが来たら攻撃をせずに待機させるように指示して」
「わ、わかりました」
「あとはね、お願いしたいことがあるんだけどポイントが貯まったら優先的に取得してもらいたいダンジョンアイテムがあるんだ」
さて、それじゃあ僕たちは侵入者を討伐してくるか。心配そうに見送るドロシーをみながら、久々の身体強化魔法を使いながら4人組のパーティのいる階層へと急ぐ。ウンディーネが作戦を聞いてきたので向かいながら簡単に打ち合わせをすることにした。
最初に狙うのはプリーストのロイスと呼ばれた青年だ。回復役から潰すのは常識だろう。彼を仕留めたらいったん撤退する。一人討伐できればダンジョンカメラの設置は問題ないだろう。そこからは安全に遠隔魔法で一人ずつ潰していきたい。正直、メルビル君が勇者だった場合は下手に成長させたくないので倒し方には気をつけなければならないだろう。
◇◇◇◆◆
大量の『鎧の魔物』が現れたかと思ったら最後に一際大きな個体が現れた。あれはボスモンスターの可能性が高い。この『鎧の魔物』は大きさと強さが比例する。最初に現れた人型サイズから5倍は大きい。つまりそれだけ戦闘力も高いはず。あのサイズの相手はデニスには無理だろう。僕が押さえるしかない!
「メルビル、あ、あのサイズはやばくないか?」
「でかいわね……」
「みんなは今まで通り数を減らしてくれ。あのでかいのは僕が押さえておく」
「だ、大丈夫か?」
「問題ないよ。僕たちならこのダンジョンを攻略できるさ!」
「そ、そうね。レベルが低いとはいえ私たちは勇者パーティになったのだもの。こんなところで怯んでいる場合じゃないわね」
「それじゃあ、無理せずに今まで通り倒していこう!」
「おう!」「了解!」「任せて」
あらためて対峙すると、その大きさに少し足が竦む。大丈夫と自分に言い聞かせながら、これ以上奴を近づけさせない。僕の役割は、みんなが他の魔物を倒すまでこのボスモンスターを引き付けることだ。最後にみんなでこのボスモンスターを倒せば残りはダンジョンマスターのみ。そして、戦い方は同じだ。足元を中心に削っていく。そもそも、でかすぎて上半身に攻撃を加えるのは一苦労だろう。
キーン!!!
「か、硬っ!」
片足だけでもと思って全力で振り切った剣は高い音とともに大きく弾かれて、ほんの僅かに傷跡を残しただけだった。スピードはそこまで早くないとはいえ、攻撃が通るイメージがとても湧かない。魔法攻撃も考えるべきなのか。鎧に効く強力な魔法、強力な魔法……何かないのか。
「メルビル! おかしい。ダンジョンモンスターが急に引き始めたぞ」
振り返ると、乱戦模様だったはずが『鎧の魔物』が距離を取り始めている。何かの作戦なのか……。このダンジョンに入ってからのダンジョンモンスターの動きとは明らかに違う。
「メルビル! 大型のボスモンスターが!?」
「なっ、引いていくだと!?」
少し目を離したすきに、大型のボスモンスターが下の階層に向かって退却しているのが見えた。次の階層で勝負するということか? ダンジョンマスターとともに共闘するつもりかもしれない。
「どうするのメルビル?」
「おそらく次の階層にダンジョンマスターがいるはずだ! まずはこの階層の『鎧の魔物』を掃討しよう。休憩を挟んでから最終戦だ!」
「そうだね。今はこの魔物を倒していこう!」
「ちょっと待って! 何かいる!」
下の階層から大型のボスモンスターと入れ違いに何か青く光る小さなモンスターが飛び回るようにして入ってきたのが見えた。ここに来て新型のモンスターだと!?
「気をつけて! 魔力が高まっているわ」
青く光る人の形をした小さなモンスターは、その頭上に大きな水弾を出現させてこちらに撃とうとしていた。
「な、なんだ、あの大きさは!? まだまだ大きくなるぞ!」
「全員、散らばれー! 固まるなー!!」
土棘
全員がその大きな水弾に釘付けになっている時に、背後から別の魔法がロイスの心臓を貫いていた。
「ロ、ロイス!!!!!!!」
普通の魔法じゃない……。
土棘がこんなにも容易く人の体を貫ける訳がない。
一体何が起こっているんだ。
ピコン! 一名討伐しました。
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