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第20章 5話

 魔法陣の仕組み自体はある程度理解することが出来た。キュトラスの街を覆うようにして描かれている魔法陣は転送エリアと吸収エリアに分割されるようだ。転送エリアにフレーゲル国王と近衛師団が待機して、吸収エリアに街の人とキメラ、そして公爵軍を引き寄せる考えなのだろう。


 キシャアァァァァ!!


「なんだよ。お昼ご飯はさっきあげたばっかだろう。わがまま言うなよ」


 キシャアァァァァ!!


 なになに? 再びウンディーネの通訳を介して僕の頭の中にジルサンダーの言葉が伝えられてくる。どうやら相談というか、交渉を持ち掛けてきているようだ。この場所に僕がいることである程度、状況の理解が進んでいるようで、この魔法陣を発動させなければ自分が死ぬこともないとわかっているのだろう。


「それで、何が言いたい」


 グルグルゥー、グルグルゥー


「この魔法陣を壊さずに残してほしい。すぐにこの魔法陣を壊さないのは理由があるのだろう。だったらずっと壊さないでくれと」


 正直、こんな物騒な魔法陣はすぐに壊してしまいたい。フレゲール国王を騙すために維持しておくだけだ。


「残念ながら、この魔法陣は数日のうちに破壊することになる。ジルサンダー、君の命もそこまでだよ」


 グルグルゥー、グルグルゥー


「そうだね。魔法陣を解析して解除することはもうできない。この魔法陣は既に発動してしまっている」


 グルグルゥー


 まぁ、僕がご飯をあげている限りは、そこそこに魔力が回復しているようなのでジルサンダーの寿命は延びているともいえる。もちろん魔力を与えすぎにならないようには気をつけている。僕なりにジルサンダーが助かる方法がないかは、魔法陣を解析しながら調べを進めてあげているんだけどどうにも無理っぽい。


 いや、そもそもなんで助けてあげなきゃならないんだって話なんだけどね。


 この魔法陣自体がスキルで自動的に描きあげられているので魔法陣の細かい修正とかが想定されていない。単純に転送する人と場所、転送するのに必要な魔力の対価、あとはゴーを出せば起動する仕組みだ。


 とりあえず、この魔方陣は僕がゴーを出さない限り最終的な起動にはならない。そもそもメルキオールが発動した魔方陣だから僕がゴー出しても動くかはわからない。どちらにしろゴー出すつもりはないのでどっちでもいいんだけどね。


 目の前では、すっかり落ち込んでしまったジルサンダーの頭の上で、無邪気に遊んでいるウンディーネが何とも言えない。最初は嫌がっていたジルサンダーも諦めたのか、体を動かすのが大変なのか許しているようだ。


「ウンディーネ、それ汚いから適当に洗ってもらえるかな。近くに寄ると少し臭うからさ」


 オッケーと言わんばかりに大量の水弾(ウォーターボール)でジルサンダーを溺れさせかねない感じで回転を加えながら洗濯をはじめた。動けない上に水で体全体を覆われて苦しんでいる様子のジルサンダーさん。仲良さそうに見えたのにそうでもなかったのだろうか……。いや、結構楽しそうに洗っている気がする。縦回転、横回転と水の中でジルサンダーがえらいことになっている。ウンディーネ的には遊びの延長っぽいな。ジルサンダー、頑張ってお相手してあげてね。


 その時、魔法陣が点滅し始めると急激に回転しはじめてジルサンダーの魔力をギュインと一気に吸い始めた。


「えっ? どういうこと!?」


 一気に赤ちゃんサイズまで縮んでしまったジルサンダーとウンディーネが出した水弾(ウォーターボール)が全て魔法陣に吸われると、まだ足りないとばかりに魔法陣から触手のようなものが複数出てきて暴走をはじめている。おそらくだが足りない魔力を求めているのだろう。僕の魔力を吸い取ろうと大量の触手が次々と襲い掛かってきている。


「チッ、ウンディーネ、とりあえずジルサンダーを救出してあげて。僕はこいつらを倒しながら、様子をみるけど、うーん、この魔法陣もうダメかもね……」


 赤ちゃんサイズになったジルサンダーは縮んだことで鎖からもそして何故か魔法陣からも解放されてしまったようだ。ウンディーネに首を持たれたまま大人しくしている。悔しいことに可愛らしさが倍増してしまった。


「倒しても倒してもきりがないな」


 僕の火弾(ファイアボール)であっさりと千切れてしまう触手だけど数がどんどん増えていく。このまま魔方陣が動きだしちゃうと街の人とかも危ないのかな? 僕はゴー出していないのに何で動き出した? やっぱり魔法陣の上で魔法使っちゃいけなかったのかな。


 目の前の魔法陣を見ると、その中心からおびただしい数の触手の群れが更に溢れだそうとしていた。

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