第20章 3話
無事にドラゴンライドを終えた僕たちは侯爵様のお屋敷に集合している。メルキオールに変化したカイトさん、アグノラに変化しているカイトさんの部下もいる。
「フゴフガフグフゴッ!!」
アグノラの声を聞いたアグノラがフゴフゴ言っている。前に見た時より少し痩せたかな……。変化前、変化後が目の前にあるのでわかりやすい。食事はちゃんと与えているようなのだけど状況が状況なだけに精神的なストレスを感じているのだろう。
「カイトさん、僕たちがいなかった間に何か新しい情報入ってますか?」
「うんそうだね、近衛師団の方は大きな変更はないかな。アンジェリカさんの旅団が遊軍となって近衛師団から離れて行動することは変わらず。近衛師団のほとんどは王様とともにキュトラスまで引くことになっているけど師団長がその半数を入れ替えようと画策しているぐらいかな」
「半数も近衛師団が前線に来るとなるとちょっと面倒ですね。人数が多いとバレずに毒を混ぜるのも大変そうですからね」
「それからフレーゲル国王の動きが思っている以上に問題が多いです。どうやらメルキオールと組んでいた理由がわかってきました」
「理由ですか。キメラ以外にですか?」
「はい。どうやらメルキオールにはもう一つスキルがあったようで『転送』というスキルを持っていたようです。今はそのスキルはタカシ君が引き継いでいるんだよね」
「そ、そういえばメルキオールを倒した時に入手したような気がしますね」
「実はそのスキル結構すごいスキルのようです。フレーゲル国王はメルキオールに指示して、キュトラスに転送用の魔法陣をすでに組んでいます。キメラとキュトラスの住人、それから公爵派の軍を媒介にして第二世界に助けを呼ぶために向かうつもりのようです」
「フゴフガフグフゴッ!!」
キュトラスと聞いてアグノラがまた騒ぎだした。そういえば、こんな大事な話を聞かせてしまっていいのだろうか。僕達の姿を見ても魔族とは思わないだろうけど。そもそも顔バレはしてしまっているので、僕たちは内戦が終わったら王都には来ない方がいいだろう。
「媒介って、命と引き換えにってことだよね……。国王、もう早めに殺した方がいいんじゃないかな」
「本当にそう思いますが、メルキオールがいないので実際には魔法陣を起動することができません。街に放つキメラさえしっかり対処しておけばキュトラスの民も大丈夫なはずです。問題はギリギリまで国王にバレずに、そして確実にその身柄を押さえることでしょう。最悪は私が身柄を押さえておいて侯爵様が取り押さえたことにしましょう」
「フゴフガフグフゴッ!!」
「キメラといえば、ジルサンダーの行方はわかりましたか?」
「はい、その白いキメラですが、魔方陣の中心に固定されています。今は生きていますがおそらく起動の際に……」
「なるほど、どうやら『転送』スキルについて調べてみる必要がありそうですね。時間まで僕は魔方陣を調べることにします」
「了解です。それで、食事に入れる毒についてはこちらで準備しましょうか?」
「あー、それならヨルムンガンドちゃんにお願いするので、アグノラ(変化)と侯爵様男性チームと共に行動をお願いしたいと思います」
「かしこまりまりました。侯爵様を二つに分けるのですね。では侯爵様女性チームは?」
「いったん待機で、今まで通りアグノラ(キュア)の面倒を見てもらいます。戦争開始時にフレーゲル国王の側にメルキオール(カイト)といてもらいたいと思っています。うちの女性陣と一緒に行動してもらって可能な限りキメラをキュトラスに入る前に討伐してもらいたい」
「了解です。フレーゲル国王に見つからないように上手く進めていきましょう」
「タカシさんは一人で行動されるのですか? 内戦真っただ中です。さすがに危ないのではないでしょうか」
心配したレイコさんからのご意見だ。レベル的には大丈夫だとは思うけど念には念をだね。
「僕が向かうのはキュトラスだから問題ないとは思うけど、そうだね、ウンディーネに来てもらおうかな」
その言葉を聞いたウンディーネはティア先生の胸から出てきて、ふわふわと飛んで来ると僕の頭の上に着陸した。やっぱりその位置なのね。
「よし、それじゃあ別行動だ! ティア達はカイトさんの指示で動いて。あと、ヨルムンガンドちゃんのフォローが必要になった場合はサポートお願いね。では、キュトラスで!」
5月24日発売日となりました。
集英社ダッシュエックス文庫より発売です!
お楽しみ頂けたら嬉しいです!
引き続きWebの方もよろしくお願いします。
ポイントやブクマがまだの方は是非ともよろしくお願いします。




