第19章 14話
「師匠から魔法を教わるのは久々な気がするね。どうも感覚的な指導が多いからわかりにくいんだけど、やってることは凄いんだよね」
「もう少し丁寧に教えられたらいいんだろうけど、僕も感覚でやってるから上手く説明出来ないんだよね」
「それで、師匠は私に雷鳥を覚えてもらいたいんだっけ?」
「そうそう。24時間ダンジョンの監視をさせる訳にもいかないし、後々のことを考えても使い勝手のいい魔法だと思うんだよね。ところでサクラちゃんってレベルいくつになった?」
「もうすぐ12かな。何で?」
思ってたより低いな……。これだと流石に難しいか。
「いやね、僕がこの魔法を覚えたのが結構レベルが上がってからだったからどうなのかなーと思ってね。それにしても12かぁ……」
「な、何なのかな!? 何だかバカにされている気がするかな! とりあえず、イメージするからやってみせてよ」
「ごめんごめん。それじゃあ、やってみるね。この魔法は雷属性の中級魔法になるんだ。雷属性の魔法を鳥の形をイメージして命を吹き込むんだ。ここから更に応用で罠感知をつけることも可能だけど、とりあえずは難しそうだから今回は無しの方向で。じゃあ、いくよ!」
雷鳥!
羽ばたきをしながら雷鳥さんが僕とサクラちゃんの間に浮かび上がった。
「鳥の形をイメージするってとこまでは何となく理解できるんだけど、命を吹き込むとか言われてもねぇ……。命、どうやって吹き込むの?」
「こう、魂を注ぎ込む感じかな」
「そんなこと言われても魂注ぎ込んだことないからなぁー。ここは勢いでいってみようか」
賢者の杖を貸しているから少しはイメージが伝わりやすくなっているだろう。頑張れサクラちゃん!
雷鳥!
ピョピョピョ ピョピョピョ
「おっ、いきなり出来たね。さすがサクラちゃん!」
「いや、これは鳥じゃなくてヒヨコだよね。空飛べなさそうだし、何よりめっちゃ弱そうなんだけど……」
ピョピョ鳴いていたヒヨコは数分もすると自然と消えていった。うん、まぁ、そんな簡単ではないとは思ってるよ。ここからはひたすら練習あるのみ。何度も体で覚え込ませればきっと何とかなるはず!
「ふああああああああ!!!!!!!!」
「ああああああああああっくっ!!!!」
僕がサクラちゃんの背中に手をあて、何度も何度もイメージした雷鳥を魔力に返還して出していく。サクラちゃんの魔力が無くなれば僕の魔力を注ぎ込んで無理やり魔法を完成させる。めっちゃ叫び声を上げている中学生女子。そろそろサクラちゃんがわからなくても体が覚え始めているのではないだろうか。
「ふぁっ、ふぁっ、ちょっ、師匠、ストップ! ストップだってばっ!」
「やっぱり難しいのかな。少しレベル上げてから再チャレンジする? 僕が強引に魔法を発動させれば一応は出せるのになぁ」
「いや、いや、そういう次元じゃない気がするよ。もっと、何て言うか魔力の濃度が違うというか、体の中で魔力のうねりがぐるんぐるんしてたよ。これは今の私では絶対無理っ! こんな動き初めてだよっ」
「そうかなぁ、もうちょいな気もするんだけどな。だって中級魔法使ってたじゃん」
「あれは、合体してたからだよ」
「合体……それだっ!」
「でも、ミクもリノも今は『ペナンダンジョン』を動けないんじゃない?」
「いや、いや、一週間ぐらい大丈夫だよ。問題はどうやってここまで来てもらうかだね」
「それは大丈夫。あの二人は普通に『新潟ダンジョン』から面会で行ってるから戻ってこれる。迎えを『新潟ダンジョン』に用意してあげればすぐに来れるはず。あと、もううちのダンジョンポイント全く余裕ないから何とか増やしておいてよね。気軽に外出できないんだから!」
それもそうか。『新潟ダンジョン』のダンジョンポイント増やす手段って何かないかな……。ここは無難に滞在ポイントで増やすべきかな。
「在日米軍及び特侵隊を万単位でキャンプさせよう。しばらくダンジョンに戻らないから構わないよね?」
「うん、助かるよ師匠。うちがポイント貯まったら『静岡ダンジョン』や『山形ダンジョン』も早くポイント貯めて外出させてあげてよ」
「そうだね。もう、隠す必要もないか。『てんとう虫』さんによる乗っ取りが成功した生きた人をどんどん回していこう」
「コウモリさんや養鶏どころの話じゃなくなってきたね。面白くなってきそう! ダンジョンマスターも『大阪ダンジョン』でレベルアップ出来るし、ここの運営ももっと楽になるはず」
これで大分先が見えてきたかな。モンスタードールズの合体で雷鳥さんを召喚させる。『ワイバーン』と『ゴースト』のレベルアップで安定的な運営にシフトさせていく。あとは各ダンジョンのボスモンスターや外出ポイントを獲得したダンジョンマスターを連れてくる流れで問題ないだろう。
「アイシャちゃんに連絡をとって二人に戻るように伝えておいて。僕は輸送用ヘリを新潟に手配しておくよ」
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