第19章 12話
ここからは、リリアさんから聞いた話を僕なりに少しまとめて紹介しようと思う。
第二世界では終盤戦を迎え、おそらくは一部のダンジョンがポイントをクリアしている状態。またダンジョンで鍛えられた人間による侵攻が激しさを見せ始めていた。破滅と生き残りを掛けた戦いは激化の一途を辿る。
もともと数の戦いでは強い人間達も閉鎖されたダンジョン空間、また階層毎に変化するダンジョンには手を焼いていた。そこで、人間達が考えた戦略は少人数パーティによる能力特化人材の育成、後の勇者パーティの誕生に繋がる。
この戦略はダンジョン攻略において効果的で、回復役、罠解除、タンカー、アタッカー、遠距離攻撃など役割が明確化されることで生還率が劇的にアップしていった。何度も攻略を繰り返すことでレベルも上昇していく。すると、遂にその進化ともいえる職業『勇者』が誕生した。勇者はその圧倒的能力によりパーティのバランサーとしてパーティをパワーアップさせていく。
バランサーという言葉では伝えきれないが、能力特化したメンバーの代理になれる人材であり、圧倒的火力を持った距離をいとわないアタッカーでもある。つまり何が言いたいかというと、戦闘の際に他のメンバーが不慮の事故や攻撃を受けて傾き掛けてしまった状況をたった1人でカバーリングできてしまうのだ。
勇者の能力を知った人間達は、まだレベルの低い勇者を大事に育てていく。その過程で一部勘違いをしてしまう馬鹿な勇者もいたが、その戦略は次々と成功をおさめていくことになる。
ここまでが前情報としてリリアさんから聞いた話だ。
「正直に言おう。ポイントクリアをした先にあの勇者共がいるのならば、相当な危険がつきまとうはずだ。タカシも奴等とは真っ正面からぶつかることの無いように注意をしてほしいと思ってな」
「リリアさんのダンジョンを攻略したのは勇者パーティだったの?」
「うちを攻略したのは復活組だよ。どのダンジョンも勇者パーティから逃げるように入口を偽装したり、上手くやり過ごして逃げていた。クリアするためにはダンジョン同士で争ってポイントを稼ぐしか方法が無かったのだよ」
「なるほど。この世界にも勇者を誕生させてはいけませんね。今は上手くやれているけど世界中にダンジョンが広がってしまうと流石に手に負えなくなるか」
「もしもタカシが知っていたら、もしくはこれから会うことがあるのならば……その、お願いがあるのだが聞いてもらえるだろうか」
「何でしょう?」
「私には前の世界でとても頼りになる同盟仲間がおってな。おそらく特殊なダンジョンなので今も頑張っていると思われるのだ。もしも会う機会があるのなら敵対することのないようにしてもらいたいと思ってな。会った時に私の話をしてくれればきっと仲間になってくれるはずだ。その者の名はドロシー。ダンジョンは空に浮かんでいる島の中にあるのでそう見つかることはない」
「ドロシーさん? 攻撃的な人でなければそう揉めることもないとは思うけど、そうだね。もしも会うことがあったのならリリアさんの近況を伝えておくよ」
「ありがとう。もしも困っているようならドロシーを手助けしてやってほしい。では、そろそろ、あれだな。きゅ、きゅ、きゅ……」
「きゅ?」
「きゅ、吸血するぞっ!」
そういってリリアさんに引っ張られるようにベッドに引き込まれた僕は、あっさり首筋をホールドされていた。この顔の近さが恥ずかしいんだよね。恥ずかしそうに少し顔を赤く染めながらも好奇心の方が勝っている。女の子ならではのいい匂いがしてとてもドキドキしてしまう。ここからはリリアさんが気持ち良く失神するまで僕にすることはない。なんとなく後ろ髪を軽く撫でてあげるぐらいか。
どうやら準備は整ったようだ。ツプッと首筋に突き刺さる感触はあるが痛みは全くといって無い。むしろ耳元でピチャピチャとリリアさんが僕の血を啜る音が聞こえてくるのでとてもエロい。隣のリリアさんは貪るようにして時折りペロリと首筋を舐め上げるようにして恍惚とした表情をしている。息も荒く目がトロンとしたかと思うとそのまま後ろ向きに倒れてしまった。
「リ、リリアさん? だ、大丈夫っ?」
そろそろ吸血するのも限界じゃないかな……。やはりレベルが上がった影響はあるようだ。前の時はもう少し長く楽しんでいたように思える。白目だけどちゃんと息はしているみたいだし顔色も良いように思える。い、一応、治癒魔法も軽くかけておこうか。
治癒!
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お楽しみ頂けたら嬉しいです!
引き続きWebの方もよろしくお願いします。
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