第19章 11話
「タ、タカシ、夕食後に私のとこへ来なさい。お主の血を吸うと私が気を失ってしまう可能性があるからな。寝る前にじっくり吸わせてもらおうと思っておるのだ。本当はせっかくタカシがいるのだから朝昼晩と吸わせてもらいたいのだが、残念ながら私の体力が持たなそうなのでな」
「う、うん。そうだね。あれからまた少しレベルも上がったしね……そう考えると大丈夫か心配になるかな」
「そ、そうだったな。タカシはカモメのジョナサンを倒したのだったな。ということは、そろそろレベルも60が近いのではないか」
「そ、そうだね。も、もう少しだけ上かなー」
「おおー、流石であるな。タカシは既にレベル60オーバーなのか」
実際は、キメラとか倒してレベル80になってるはずだから、リリアさんの吸血がちょっとだけ心配でもある。前回の吸血でも気を失ったのだから、吸血する量は様子を見ながらにした方がよいだろう。
「少しずつ吸うようにしてよね。悪影響はないとは思うけど、何かあったらみんなに怒られちゃうからさ」
カールさんも、うんうんと頷いている。マスターが性的に吸血して意識不明とか目も当てられないだろう。
「姫様、これだけ濃厚な魔力の塊を吸血出来る機会はそうないのです。定期的に頂けるとはいえ、多少無茶してでも頑張ってもらいたいと思います」
「うむ。吸い尽くしてみせよう!」
吸い尽くすのはダメぇー!!!! というより失神するから無理だとは思うんだけどね。そんなことよりもカールさんが反対の立場ではないのが意外だ。むしろどんどん吸血させたいご様子だしね。
「んー、吸血することで何かメリットがあるように思えるね」
「じ、実はな、タカシ。私の『眷属化』のスキルなのだが、タカシの血を吸血した際にスキルレベルが上がったのだ。おそらくだが、レベルの高い者か、魔力濃度の濃い血を吸血したことが要因と考えておる」
そんなスキルの上げ方があるとはね。確かに吸血に関してはその可能性はありえそうだ。
「ささ、タカシ殿、そろそろ湯浴みをして清めるといいでしょう。その間に夕食の準備も整っていることでしょうから。夕食後にちゃちゃっと吸わせて頂きます」
カールさんがとても積極的だ。吸血されるのを誰にも反対されない状況は悪くないが、その内スキルレベルがマックスになって僕が眷属化されてしまうこととかないだろうね? 毎回、若干の不安を感じさせられるが、まぁ約束だしリリアさんのことだから大丈夫だろう、と思う。いや、信じてる。
「じゃあ、お言葉に甘えてお風呂を頂こうかな」
サクラちゃんと勇者君がダンジョンに入ってるし、雷鳥さんもまだまだ健在なのでダンジョンの方は大丈夫だろう。
さて、吸血されてくるか……。
風呂の後に夕食を頂き、僕は指定されたテントへ入っていった。テントの奥に設置してあるベッドに横たわっているリリアさんと目が合った。なんと表現したものか、好奇心と畏れが入り交じったような目だ。やはり、それなりに緊張するのかもしれない。
「来たか……。タカシはもう10億ポイントを達成したのだよな?」
ほう、その質問が来たか。さて、どう答えたものか……。本当のことは言えないんだよね。
「何でそう思ったのかな?」
「ジョナサンのポイントは私のダンジョンよりも少し高いと踏んでいた。それはおそらく間違いないであろう。そのダンジョンポイントがタカシのダンジョンに入るとなるとアホでも計算できる」
「なるほど」
「更に言えばタカシの外出もこれで何度目だと思っている。私の知る限りだけでも三度目だぞ。少なくとも3億ポイント以上は持ってないとおかしい」
もろバレしてるじゃないか。
「外出に関してはちょっとした裏技的なアイテムがあってね。実のところ僕はポイントを消費せずに外出してるんですよ」
「左様か。はっきりと回答出来ないところをみると、何かしら話せない理由がありそうだと考えるべきかな」
「……」
「まぁ、いい。ここからは私の独り言だと思って聞いてもらいたい。この世界ではなく、私のダンジョンが攻略された世界での話だ」
そう言ってリリアさんが語り始めたのは第二世界での話だった。とりあえず何となく安心したのは勇者一行に攻略された訳では無いということだった。勇者君、普通に今ここにいるからね。
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