第19章 10話
「これはなかなか面白いアイテムで10枚揃うと空を飛べるアイテムに変わるっすよ。あとは、錬成して武器や防具の重さを軽くしたりできる素材っすね」
空を飛べる。武器や防具の錬成だと……。ちょっと初めて聞く言葉が出てきたな。
「なるほど、それは便利であるな。私は自分の翼があるので必要ないがタカシはそれで空を飛ぶことが出来るようになるぞ。こ、これで、一緒に空中デートができるではないか」
スキルエレメントを使えば既に僕も空は飛べるんだけど、このアイテムの飛ぶというのはどういうものなのだろうね。
「マスター、このアイテムを使うと背中から翼が生えるっすよ。まさに『ガルーダ』のように翼を使って空を飛べるっす」
翼が生えるとはまさにエンゼルだったね。
「ピースケ、アイテムの使用時間はどのくらいなのかな?」
「2時間ぐらいっすね。時間が来ると翼のサイズが小さくなってくるっすよ。アイテムの連続使用も出来るから追加で使用すれば継続して使えるっす」
ピースケが羽を10枚手にとって手のひらでまとめると光り輝いて1枚の大きな青い羽根に変わった。
「これを胸に当てると体に吸い込まれていって、すぐに翼が生えてくるっす。誰かやってみるっすか?」
「よし、カール行け」
「い、いや、私は全身が包帯で巻かれているので、ちょっと……」
「ちょっと面白そうだから私が飛ぶよ。ピースケさん貸して!」
こういう時に女の子の方が割と度胸があるというか、好きだよね。苦手な人もいるだろうけど、基本的に女子って遊園地のジェットコースターとか何でめっちゃ乗りたがるんだろうって思う。
「サクラさん、よろしければ私が代わりましょうか?」
「大丈夫、大丈夫。勇者君は私が上手く飛べなかったときに地上で助けくれればいいよ」
「はい、かしこまりました」
ピースケから青い羽根を受け取ったサクラちゃんはまったく躊躇とかなく自分の胸にあててみせた。
「おおー、本当に吸い込まれていくよ! にゃああっ!」
変な声を出したサクラちゃんは内股気味にしゃがみ込むと背中の服を突き破るように大きな翼がバッサバサと生えてきた。いやいや、カールさんが言ってた言葉聞いてなかったのかよ。
「ちょ、師匠、後ろ向いててっ! あ、あと、なんか着るものー!!」
何故に僕だけ後ろを向かされるのか。それに急に着るものとか言われても、背中の空いた服なんて、そうそう……いや、ビキニならいけるか。
「サクラちゃん、ビキニならあるけどそれでいい?」
「この際、何で師匠が女性もののビキニを持っているのかは聞かないけど、とりあえずそれ貸してっ!」
いつでもみんなと水遊びできるように、水着くらい持っておくのは紳士のたしなみなのだよ。ダンジョンアイテムなので、まだ成長途中のサクラちゃんでもピッタリとフィットするビキニだ。喜んでもらいたい。
「このアイテム使う時は男性は上半身裸、女性は上半身ビキニ着用になりそうだね。それで、サクラちゃん、どう? 飛べそう?」
「ちょっと待って! 今、動かし方をね、おっ、動く動くっ! すごっ! と、飛ぶよ」
サクラちゃんの身長と同じくらいの大きな白い翼がバサバサと動き始めると、すぐにフワッとその体が浮かび上がった。
「遠目から見たら『ガルーダ』と間違えそうだね。頭が鳥か人間かの違いぐらいだもんね」
「ちょっ、間違っても攻撃とかしないでよっ!」
すでにコツを掴みつつあるのか、僕たちの上を旋回するように自由に飛び回っている。
「サクラちゃん、結構簡単に飛んでいるように思えるんだけどそんな難しくないの?」
「なんか思っていたよりも自由自在かも。好きな方向や高さに移動できるし、あと何より全然疲れとかないんだ。これやっぱりアイテムだからかな?」
「そうかもしれないっすね。アイテム使用後に疲れが出る可能性もあるっすからそこは注意というかあとで教えてほしいっす。その時はマスターがすぐに回復してくれるっすよ」
「回復魔法ぐらい私も使えるから大丈夫だよ。ちょっと楽しそうだからこのまま『大阪ダンジョン』行って空中戦楽しんでくる! 勇者君も一緒に来てフォローよろしくー」
「かしこまりました」
「あっ、サクラちゃん雷鳥さんもいるから気をつけてね!」
「オッケー!」
何やら楽しそうに『大阪ダンジョン』へと文字通り飛んでいった。面白そうなアイテムだね。
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