第19章 6話
ダンジョン内は一旦僕とウンディーネに任せてもらって、『熊本ダンジョン』組は、お風呂とお昼ご飯タイムにしてもらった。この一週間ちょっとの疲れをしっかり癒してもらいたい。別に放っておいた訳ではないんだけど、途中少なからずバカンスを挟んだ身としては若干の後ろめたさみたいなものもあるわけで。
何が言いたいかというと、夜はリリアさんにたっぷりと血を吸われても許してあげよう。これは断じて浮気ではないし、条件というか条約みたいなものだからきっと大丈夫。
僕が心の中で葛藤していると、ウンディーネが不思議そうな顔をしながら僕の頭の上から覗きこんでいた。ち、違うし、浮ついてなんかないんだよ。
ちなみにダンジョンの二階層へ向かう階段は氷の魔法で完全封鎖させてもらっていて、『ガルーダ』達はリポップして逃げられないことを悟ると、ある程度の数が集合すると団体でダンジョンの出口を目指して飛んでくる。外へ逃げようとしているんだろうね。いや、死にたいのだろう。何かを察して飛んでこない個体もいるので、その場合は奥から僕の遠隔操作魔法で弱らせながら強引にこちらへと呼び寄せる。
パァァン! パァァン! パァァン! パァァン! パァァン! パァァン!
そうして傷つきながら飛んできた『ガルーダ』は、その全てが鳴き声を上げることも出来ないまま途中で落下していく。頭が破裂し、体は極端に干からびたかのようにゲッソリと収縮してしまう。ウンディーネの必殺技である水操作スキルで頭部に集まった水分はその容量を超えた瞬間パァァンするのだ。頭部以外の部位は干からびてしまったかのように骨と皮を残して萎んでしまっている。このスキルは対象がある程度弱っていないと使用できないスキルのため、僕もある程度元気そうな『ガルーダ』を狙って体力を削ってあげているのだ。ダンジョンの入口周辺にはその亡骸が大量に積み上がっていく。
水弾
頭のない干からびた鳥人間がいっぱい積み重なるのは見た目にもアウトなので、時折り水で奥の方へと流している。ダンジョンが吸収するまで奥の方にいってもらおう。しかしながら、リポップした『ガルーダ』はその大量の仲間の変死体を見てしまうと逃げようともしなくなる訳で、二階層の階段周辺まで逃げるように大人しく固まってしまう。困ったものだな……。
僕が心の中で葛藤していると、ウンディーネが不思議そうな顔をしながら僕の頭の上から覗きこんでいた。ち、違うし、というか半分はウンディーネのせいなんだからね!
「まぁやることは変わらないからいいんだけどね。目には目を鳥には鳥を! キリがないからここは雷鳥さんにお願いしよう」
雷鳥×3
キュルキュルー キュルルー! キュルキュルー キュルルー!
「君は奥の二階層のところへ行ってリポップして集まってきた『ガルーダ』を死なない程度に威嚇もしくは攻撃してこっちへ連れてきてね」
「真ん中の君は中間地点に待機して、無傷で飛んでくる『ガルーダ』を弱らせてくれる?」
「最後の君はダンジョンの入り口付近で待機して『ガルーダ』が逃げ出さないように見張っていてくれるかな」
キュルルー!
何となく役割を理解してくれた雷鳥さんはすぐに自らの持ち場へと移動していった。雷鳥さんの魔力が永遠に無くならなければ『大阪ダンジョン』の門番として有効活用できるんだけど、そこまでの便利さはない。攻撃をしなければ数日は持つかもしれないけど、雷鳥さん敵を見たら我慢できずにすぐに攻撃しちゃうからね。すぐに消えてしまうだろう。
それでも入口の警備とかには使えるのでしっかり休憩時間をとれるかもしれない。誰か他のダンジョンマスターでこの魔法を使えるようになればいろいろと運用も楽になると思うんだけど……。さすがにまだ難しいか。サクラちゃんあたりがもう少しレベルが上がってくれば可能性があるかもしれないんだけど。師匠としてもう少し彼女を鍛えてあげようと思う。主に今後の自分が楽をするために。
僕がそんなことを考えていると、ウンディーネが不思議そうな顔をしながら僕の頭の上から覗きこんでいた。べ、別に変なこととか考えていた訳じゃないからね。ちゃんと、今後の『大阪ダンジョン』の運用方法を考えていたんだからっ!
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