第19章 5話
相変わらずてんとう虫さんの仕事が早くて助かる。『大阪ダンジョン』の入口には、あっという間にテントが立てられてしまい、災害用のお風呂も設置されていく。同時に大型のトラックが入ってくると食事の準備も進められていった。どうやら野外用炊飯車と呼ばれるものらしく、大量の温かいご飯が作られていくようだ。
「早いね。とりあえずの居住環境はこれで整いそうだ」
「こっちの世界の人間ってのはスゲーんだな。タカシがテントを立てるって言ってたのを文字通り受け取ってたんだが、これはテントじゃねぇよ。どちらかというと、かなり上等な家だろ。しかも風呂付き食事付きかよ」
「もう少し本格的なのは、次にガルフさんが来るまでには用意できるように整えておきますよ」
「更にグレードアップするかよ……。タカシに、もっと早く来てもらえたらここでの活動もそこまで大変ではなかったのかもな」
「ところで、ミサキさんのことだけど。ガルフさんが知ってる情報は何かないの?」
「な、な、なんだよ、急に!」
「いや、こっちでも調べてみるけどさ、メッセージのやり取りをしているぐらいなら何か情報がないのかなと」
「そ、そうだな。ミサキは食べるのが好きみたいだな。まぁ、あのおっぱいだ。栄養は胸にいってるんだろう」
「……」
「ち、違うぞ。俺は外見的なものに惹かれた訳ではなくてだな。包容力というか、あの豊満な優しさにだな……」
「オッケー、オッケー。それ以上は特に聞かないからいいって」
豊満な優しさってなんだよ。こいつ、真性のおっぱい星人だな。
「あー、一つ思い出したぜ。ダンジョンポイントが貯まってきたから、そろそろダンジョンの整備やモンスターの配置を進めたいらしいんだが、新人マスターやら『大阪ダンジョン』のことでみんな忙しいから相談しづらいんだとか言ってたな」
「ガルフさんが相談に乗ってあければいいんじゃないですか?」
「だが、俺様は姫様を守らなければならない。他のダンジョンマスターの相談に乗っていていいのか?」
「とりあえず、リリアさんと『熊本ダンジョン』を攻撃する敵は今のところいないんだから大丈夫じゃない? 今はどちらかというと『熊本ダンジョン』と『佐賀ダンジョン』は、友好を繋ぐための懸け橋になってもらわなければならないんだ。『大阪ダンジョン』に遠征に来る時以外は時間とれるんじゃないかな。よかったらリリアさんにそれとなく伝えておきますよ」
「そ、それもそうか。し、しかし、それでは姫様に俺の気持ちがバレてしまうんじゃねぇか?」
「うーん。バレた方が協力してもらえそうな気もするんだけどな。リリアさんもミサキさんと仲良さそうだしプッシュしてもらえるかもしれませんよ」
「そ、そんなもんか。わ、わかった、ここはタカシに任せよう。俺はミサキの豊満な笑顔の為なら助けになってやりてぇんだ」
豊満の使い方がなんか違う。おっぱい星人ではないのか? まぁ、いい。いずれにしてもボスモンスターが他のダンジョンのマスターに恋心を抱くとかとても興味深い。ミサキさんにその気持ちがあるなら是非とも応援したいが、獣人とか今まで接したことがないからハードルは高そうだよね。人に変身出来るのが何よりの救いだ。
そんなことを話していたらどうやら食事の準備もかなり進んでいるようだ。美味しそうなカレーの匂いが辺りを漂わせている。屋外で食べるカレーって格別に美味しいよね。
カレーって匂いから食欲をそそられるし、仕事して疲れた体もスパイスで元気にしてくれるような気がするんだ。漢方やハーブがベースで作られているんだから当たり前かもしれないけど、何種類も調合してよくこの味に辿り着いたよねと感心してしまう。
日本のカレーはクミンやターメリック、コリアンダーがベースになっているけど大量の野菜とお肉もバランス良く入っているのも体に優しいのかもしれない。トマトペースト、玉ねぎ、人参にじゃがいも等カレーに合う野菜は多い。
「こっちの設営も一段落しそうだし、ダンジョン内はいったん僕とウンディーネで受け持つよ」
「悪りぃな。じゃあ、お言葉に甘えて姫様たちを呼んでくるか。この短時間でダンジョンの外がこれだけ様変わりしていたら流石に驚くだろうな」
それにしてもミサキさんと仲の良いダンジョンマスターって誰だっけ? 同期としてはコウジさんとモンスタードールズになるんだろうけど、そこまで仲が良いって程ではない気がするんだよね。新人マスターさん達はまだ交流というよりも自分の事で精一杯だと思うし。となると『静岡ダンジョン』のリナちゃんか。あの変態女の子から得られる情報に不安しか覚えないが、何もないよりかはマシか……。
とうとう明日5月24日は発売日となります。
集英社ダッシュエックス文庫より発売です!
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