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第19章 4話

 ダンジョンの入口に戻る途中で再びウンディーネと出会ったのだが、討伐を張り切っているようだった。一方でフランケンとリタちゃんはその討伐の仕方にドン引きしていたけども。


「パパぁ! こ、この子、他に攻撃手段ないのでしゅか?」


 フランケンもリタちゃんも血飛沫が飛んだのだろう。上半身が血で汚れていた。地面には頭がパァンされた『ガルーダ』が一面に積み重なって広がっている。ダンジョンが吸収するまでにはまだ時間がかかる。


「多分ウンディーネにとって、このやり方が一番効率がいいんじゃないかな。しばらくは討伐しまくるだろうから二人は少し休んでいてよ」


「そ、そうでしゅね。それで、パパはどこに行くでしゅか?」


「ここの暮らしを向上させるために外に快適に泊まれる場所とか、お風呂やらを用意しようと思ってね」


「お風呂でしゅか? 出来れば今すぐ入りたいのでしゅが……」


 顔が血まみれの幼女と、厳ついフランケンの顔にこびりつく血化粧はインパクトが強い。完全にホラー映画だ。


 水弾(ウォーターボール)×2


「すぐにお風呂に入れる訳ではないから、とりあえずはその水で洗い流してもらえるかな?」


 フランケンとリタちゃんの目の前にそのまま浮かんだまま微動だにしない水弾(ウォーターボール)


「タオルはあったかな……? おっ、あったあった。これで拭いてね……??」


「な、な、何で、水弾(ウォーターボール)が宙に浮いたまま止まってるでしゅか!?」


「いや、この方が使いやすいでしょ? リタちゃんのはもう少し低くした方がよかった?」


「まったく自由自在でしゅねっ!」

「フンガ」


 フランケンもお気に召したようで頭ごと突っ込んで首をぶんぶんと振っている。なかなか気持ちよさそうに使ってもらっているようで何よりだ。


 後ろを振り返ると、ウンディーネが容赦なく大量に無差別パァンさせている。どうやら『ガルーダ』程度の相手なら不覚をとることも無さそうだ。レベル20ぐらいまで一気に上がるといいんだけどね。


「それじゃあ、ちょっと外で作業お願いしてくるからウンディーネのことよろしくね」


「よろしくねって、あの子既に私たちより強い気がするんでしゅけど……」

「フンガ……」


 おそらくフランケンと同程度のレベルなのかもしれないけど、ベースとなるステータスにはかなり差がありそうだからね。うちのボスモンスターはとても優秀です。



 ダンジョンの外に出ると相変わらずガルフがスマホを弄りながら怠そうにしていた。というか、かなりスマホ操作に慣れている気がする。


「その指で随分手慣れた操作をしてるんだね」


「ぬぉーっ! なんだよっ、もう出てきたのかよって、うわぁー! 間違ってメッセージ送っちまったじゃねーか」


「メッセージ? 誰に?」


「い、いや、何でもねー。き、気にするな」


 ピロリロリーン♪


「返事が来てるみたいだけど」


「な、何で、こんな返事が早ぇーんだよ!」


「で、誰?」


「ミ、ミサキだ……」


 どうやら、リリアさんの恋バナ相談の仲介役をしている内に、いつの間にか仲良くなっていたようだ。狼男と人間の女の子ね。異種族間の恋は現在僕もしている訳で応援しないこともない。


「ミサキさんはどんな感じなの? 脈はありそうですか?」


「い、いや、まだそんなんじゃねぇんだ。次会った時に欲しい食べ物とか聞いたりしてるだけでよ」


 見た目に反して何だかピュアだね。


「好きなタイプとか聞いてみましょうか?」


「マ、マジか!? 頼めるか? だけど俺が聞いてるとか絶対に言うんじゃねーぞ」


「それはもちろんだけど。ガルフさんって狼男じゃないですか? 僕の知ってる狼男って、満月を見ると人間から変身するんですけど、ガルフさんって人間の姿とかって出来ないんですか?」


 ある程度の知能があり強いボスモンスターの場合はヒト型になれるはずだ。うちのダンジョンはほとんどがそうだしね。


「満月の日は確かに動きがよくなるな。月との関係性はよくわかんねぇーが、その時は人間にも変身出来るぜ」


「えーっと、つまり満月の日しか人間になれないってこと?」


「そうだ」


 僕の知ってる狼男と真逆ではあるが、ボスモンスターなんだから普段が人間では困るよね。納得と言えば納得である。


「ちなみにだけど、次に満月になる日っていつなの?」


「確か、一週間後くらいだな」


 なるほど、それまでにちょっと手を打ってみようか。


「とりあえず、一週間後に戻る時に『佐賀ダンジョン』に寄ることをメッセージで伝えておいてよ。欲しい土産物とかも聞いてね。ガルフさんにはミサキさん好みの男性に変身して会ってもらいましょう。それまでにどんなタイプが好みか探っておきますね」


「そ、そうだな。何というか、その、すまねぇな」


 それから、僕は近くにいるてんとう虫さんを呼んで、ダンジョン外側の居住区化を丸投げさせてもらった。夕方までには簡易的なテントとベッド、そしてお風呂にも浸かれるだろう。

5月24日に集英社ダッシュエックス文庫より発売となります。

お楽しみ頂けたら嬉しいです!

しばらく毎日更新予定です。

引き続きWebの方もよろしくお願いします。

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