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第18章 13話

 研究施設は元々あった施設を増築して造られているような、また現在進行形で拡張工事が進められている状態だった。キメラの数を順調に増やしているのではと思えてしまって何とも微妙に思える。


 施設の中に入ると多くのキメラが我が物顔で闊歩していた。B地点は施設の右手奥側の位置にある小部屋だ。これだけの数のキメラがいると少し進むのも大変そうだ。


 僕はスキルで空中を飛びながら進んでいるので何の問題もないが、カイトさん達は苦労しながら進んだことだろう。おそらくフォーメーションA、いやBで進んでいったのだろうね。公爵様と息子さんでカイトさんを、ティア先生とウンディーネを奥さんと娘さんが囲いながらキメラを避けつつようやく辿り着いたのだろう。おっと、ここがB地点だな。


「到着しましたー。みなさんいらっしゃいます?」


 小部屋に来たはいいけど、誰もいないというか多分見えていないのかなって思って声を掛けたんだけど、反応がまるでない。スキルを解除して姿を現してみるけどもシーンとしている。


「あれっ? 本当にいないの?」


 どうやら本当に誰もいないらしい。そうなると何か問題があったと考えるべきだろう。ここに長居するのもやめた方がいい。すぐにスキルを発動させると場所を移動しながらバッジの機能を使う。


「確か位置情報もわかるって話だったよね。使い方がよくわからないんだけど……とりあえずやってみようか」


 カイトさんをイメージするとバッジが反応を示した。軽くローブが引っ張られる感じで方向を指し示してくれる。距離はそこまで離れていないようで100メートル程先にある北側の奥の部屋にいるようだ。


 侯爵様のフォーメーションBで見つかってしまったというのがちょっと考えられないんだよね。小部屋に入って油断してフォーメーションを解除したところを捕らえられたのだろうか。すぐに救出しないと危ないかもしれない。戦えば普通に勝ってしまうだろうけど、侯爵様を人質に取られていたりしたら不味い。



 鍵穴の隙間からそっと部屋に入ると、想像を絶する光景が広がっていた。部屋の奥にはメルキオールが侯爵一家を人質に取っており、部屋の真ん中でカイトさんは左腕を負傷、ティア先生に至っては片膝立ちで頭から血を流している……。ウンディーネが懸命になって血を止めようと頭に張り付いている。


 これは何だ! いや、理解はしている。僕がすぐこの場所へ来ることがわかっていたから、侯爵様の安全を最優先に考えての行動なのだろう。


 自分の心を落ち着かせようとすればするほどに苛立ちが出てくる。キメラに命令したのはお前か、メルキオール。冷静になろうと思えば思うほど、怒りの感情が一気に増幅していく。抑えきれない怒り。もっと早くこの場所へ来れなかった自分への怒りだ。……全っ然っ落ち着けないわ! お前ら全員殺すっ!!


「おい! そこの青いのっ! 回復魔法なんか使ったら、この一家を一人ずつ殺していくから気をつけるんだな! もちろん、攻撃なんてしようものならわかってるだろうな。お前の攻撃が来る前に一人でも多く道ずれにしていくぜ! 残念だけどお前らは精々逃げ回りながら泣き叫ぶしかねぇんだよ! 俺に牙を向けたことは決して許さねぇ。簡単には殺させねぇからな! ……そ、それにしても、なんだ。……少し冷えてきたか……」


 床、そして壁、天井と気がつくと部屋は酷い寒波でも起きたかのように凍り付き始めていた。扉は氷で塞がれており、どこにも逃げ道はない。キメラも異変に気付くがその足元は既に氷で固められており身動きが取れない。


 キメラが魔法を吸収する暇を与えずに葬り去る。そして僕の右手には新魔法が完成していた。吸収できるならやってみればいい。


 氷の銃弾(アイスバレット)


 僕の手に現れた氷の鉄砲は一発目でキメラ達の体の自由を奪っていく。なぜならば、その弾は少しでも掠ってしまったらアウト。その氷は体全体へと広がっていき全てを氷像に変えてしまう。その弾丸のスピードを尻尾で吸収するなど無理であった。


 氷の銃弾(アイスバレット)×10


 部屋にいた白いキメラは、あっという間に氷像と化してしまった。唖然とした表情のメルキオールを他所に目の前のキメラを蹴り倒す。床に倒れ落ちた瞬間にキメラは粉々に砕け散っていった。

 残りは……あー、これでもう一度撃ってやればいいか。


 そして、二発目の弾道がキメラを貫いた時、ほんの少しのヒビ割れが徐々に体全体へと広がっていき、すぐに崩れていった。


 さて、残りはお前だけだメルキオール。どうやって殺してあげようか。

5月24日に集英社ダッシュエックス文庫より発売となります。

お楽しみ頂けたら嬉しいです!

引き続きWebの方もよろしくお願いします。

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