第2章 12話
「メリットっすか。今の状態のダンジョンだとあんまりないっすね。デメリットもそんなにないっすけど」
管理権限を全て僕に渡されるが、どうやらダンジョン間のポイント、モンスター移動は出来ないし、僕が参戦することも出来ない。
つまり今ある戦力、ポイントでレイコさん達を守るしかないのだが山梨ダンジョンは今のところゴブリン系しか召喚出来ない。
えっ、それだと無理じゃ…あれっ、助けられなくない?
「しいていうなら、ダンジョンマスターとボスモンスターは助けられるっすよ」
「あぁ。『解放ダンジョン』だな」
傘下に入ったダンジョンマスターはボスモンスター扱いになる。
解放ダンジョンのボスモンスターはダンジョン間を一度だけ移動することができる。
ただ、問題がないことはない。
「マスターがいなくなったダンジョンを『解放ダンジョン』っつうんだが、ようは管理放棄ダンジョンだ。モンスターはリポップし続けるから侵入者にとっては良い狩り場になっちまうがな」
「そうっす。これが微妙なメリットっすね。ボスモンスターを入手できるっす。ただ山梨ダンジョンは出来たばかりっすからね」
ちなみにダンジョンを攻略された場合も『解放ダンジョン』の状態になるという。
高難易度のダンジョンが解放されてしまうと侵入者のレベルが上がりやすくなるため周囲のダンジョンにとっても死活問題となる。その点、山梨ダンジョンはゴブリン系統しかいないため侵入者のレベルが上がりにくい。つまり影響力はさほどないだろうとのこと。
「先輩やゴブリン達はどうなるのよ」
「俺たちゃ、ここから動けない。侵入者と戦い続けるだけだ」
「じゃあダメね。話にならないわ」
「レイコ。俺たちはお前に生きてもらいたいんだ。ゴブリン達は死んでも生き返るがレイコは違う。お前を守れないのは悔しいが、力がないのだからしょうがない。それがこの世界の掟だからな」
「嫌よ。私はみんなと一緒にいたいの。そうでないなら意味がないわ。徹底抗戦よ」
その時だった。
「侵入者だ!全部で20人。ゴブリン達をこの部屋に移動する」
警察の特殊部隊が遠くに見える。
「レイコ!早く管理権限をタカシに渡すんだ」
光のエフェクトとともにゴブリン達が現れる。
チラッと後ろを気にすると前へ走り出す。後方ではゴブリンリーダーがゴブリンメイジに指示を出している。
「レイコ!ボーっとしてんじゃねぇ!」
ズバババッバババババッンン!
先頭のゴブリン達が一斉射撃の餌食になりはじけ飛ぶ。
一気に10体が消えた。
特殊部隊はこちらを警戒しながら前進してくる。
木に登って隠れていたゴブリンが特殊部隊の後方から飛びかかり3人の隊員を道連れに討たれる。
そこへ、二方向からファイアボールが撃たれるも強化盾で防がれた。
警戒しながら尚もにじり寄る特殊部隊。残りのゴブリン達は木の影や上から投石を繰り返しながら時間は稼いでいる。
が、じり貧だ。時間の問題だろう。
ワインボトル先輩がゴブリンリーダーに目配せした。
「っかはっ!」
ゴブリンリーダーがレイコに首トンし、申し訳なさそうに抱きかかえていた。
「マスターが意識不明のため案内人がダンジョン管理権限を代行するぜ」
気絶したレイコを眩しそうに目を細めて見た後、ワインボトル先輩は僕に振り返り頭を下げながら言った。
「ダンジョン管理権限をタカシに委譲する!タカシには何のメリットもないかもしれないが頼む。レイコを、レイコを助けてやってくれ」
「わかった。任せてくれ。ボトル先輩はどうするの?」
「案内人は他のダンジョンには行けない。俺はリポップもしねぇからここでお別れだ。お隣のマスターがお前ぇみてーないい奴でよかったぜ。レイコに伝えてくれ。お前らしく、そして強く生きろってな」
そう言うと、入口の方を向きゴブリンリーダーとともに突っ込んでいく。
「じゃあな」
次々と殺られていくゴブリンと銃弾を食らい傷を負いながら特殊部隊をぶん殴っているボトル先輩を見ながら僕はレイコさんを背負い千葉ダンジョンに戻った。
◇◇◇◆◆
ピコン!
開通から一年以内に他ダンジョンを傘下に率いれました。
初級マスター特典『ボスモンスターチケット』を入手しました。




