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第18章 4話

「侯爵様、潜入は私とこちらのレヴィの二人で向かおうと思います。ところで近衛師団は今どちらにいるのでしょうか?」


「近衛師団はずっと王都にいますよ。白い鎧を纏っておりますので見た目で判断できるはずです」


「あー、あの人達ですね。配給をしていた兵士が白色の鎧だったので覚えています」


「あぁ、それですね。間違いないです。国王を守るための師団なので、行動は国王の動きと共にあります。今回の内戦ではそれが裏目に出てしまっているようですが……」


 つまり、公爵様が反旗を翻した時に周辺の国王派の師団を動かし、近衛師団を王都を守るために配置してしまったのが、ここまで(もつ)れてしまった要因らしい。内戦はダメージしかないのだから早期解決すべきなのにね。


「それでも、さすがに最終決戦となれば出てきますよね。あと2週間程度の時間で何ができるかな」


「潜入はどのようにされるおつもりだったのですか?」


「スキルで透明化することが出来るので、それで潜入しようと思っていました」


「そ、それは、ひょっとして私達の先輩にあたるスキルなのでは!」


「違います。気配は消せませんので別系統のスキルでしょう」


 存在が希薄になるのと、透明化するのは似てはいるけど別物だろう。透明化よりも全然凶悪な気がする。実際、透明化はカモメのジョナサンには通用したけど、タカモトさんにはやられるところだったしね。


「どうでしょう、実際に見てみた方が話が早いと思うのですが、近衛師団のいるところまで案内しましょうか。次いでにタカシさんに合うサイズの鎧も確保してきましょう」


「そうですね。お願いします」


「それではフォーメーションAでいきます」


「フォ、フォーメーションですか……」



 こうして、侯爵一家の案内により城へと向かって歩いているのだが、街に人が少ないがゆえに侯爵一家を認識しない人が多くてなんとも不憫さを感じさせる。フォーメーションAとは、侯爵ご一家が僕とレヴィを囲うようにして手を繋いで歩いているだけだ。しかしながら驚くことなかれ、街行く人は道を歩いていても普通に正面からぶつかってくる。フォーメーションA完璧に機能してやがる……。


「普段買い物をする時も会計を並んでも見てもらえないじゃない? しょうがないから金を置いて出ていくのだけど、おつりをもらえないから小銭をちゃんと持ち歩くようになったわ」


 見てもらえないじゃない? って共感を求められても困る。小銭をしっかり持ち歩く貴族、しかも侯爵家。とても不憫だ。


 城の中に入る時も止められることなくスムーズに通過していくフォーメーションA……。予想外に透明化

することもなく進んでいく僕とレヴィ。他のフォーメーションも気になるところだ。


「ちなみになんですけど、透明化のスキルってやつ一度見せてもらってもいいですか?」


「あっ、はい。構いませんよ」


 僕はその場で透明化するとレヴィと手を繋いでスーッと消えていった。


「どうですか?」


「すごいですね。声は聞こえるのに本当に見えない。私たち家族も周りから見たらこんな感じに認識されていないのでしょうね」


 ちょっと違う気もするけど、深く突っ込むと侯爵様が傷付くかもしれないから黙っておこう。それにしても人から認識されない世界って心が折れそうだ。侯爵様も同じ悩みを持つ家族がいなかったら相当に病んでいたことだろう。なんとなくナイトレイ家には優しく接してあげようと思う。


「タカシさん、レヴィさん、こちらが近衛師団が普段から鍛錬や合同訓練をしている場所です。隣にあるのが武器庫で鍵が掛かっておりますが、暗証番号は029315です。お肉最高で覚えておいてください」


 まるで社会科見学でもしているかのように城内の関連場所を案内していく。どうやら侯爵様、ベルサリオ公爵様の指令で城の内部調査を進めていてくれたようだ。


「こちらが、宿泊場所と炊事場になります。食材は隣の倉庫に馬車ごと入荷されてきて、賞味期限の近いものは配給に回しているようです。王都周辺は公爵軍との戦いが激化しており物資が入りづらくなっております。早くこんな内戦は終わらせないとなりません!」


 そう言いながら、侯爵一家は持ってきたバッグに食糧を詰め込んでいく。


「いや、私達一家はベルサリオ様からお金は頂いておりますが、配給は並んでも認識されないじゃないですか? そりゃあ、ここに来るのは日課になりますよね?」


 いや、だから共感を僕たちに求めないでもらいたい。僕たちは並ぼうと思えばちゃんと配給もらえるからね!

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