表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
275/355

第18章 2話

「と、とりあえず玄関をノックしてみようか」


「そ、そうですわね。ところであの玄関、これでもかと蔦が絡まっているように見えるのですけど、しばらく開けた形跡がないですわ。まさかと思うのですけど、ナイトライダー死んでたりしないかしら」


「縁起でもない。そんなはずは……ないよね?」


 手入れのされていない庭、生活感を感じさせない不気味な外見からも、いかにもなお化け屋敷を想像させる。確かに何年も使われていないような感じで扉を覆うようにびっしりと蔦が絡まっているし、家の中も静かすぎるのでティア先生の言うことにも妙な説得力があって困る。


「えいっ!」


 そんなかけ声とともになんの躊躇いもなく扉を蹴り倒してみせたティア先生。何となく手で触りたくなかったのだろう。でも、貴族の玄関は勢いで蹴っちゃダメ。


「ちょっと! 怒られちゃうでしょ」


「大丈夫ですわ、近くに人の気配を感じませんもの」


 倒れた扉で埃が舞い上がっている。家の中も明らかに年単位で使われている様子がない。


「廃墟かしら」


 まさに廃墟といっていい廃れ具合だ。しばらく進んでいくと、ようやく人の気配を感じられた。どうやら地下に人がいるらしい。



「……扉を壊されては困ります。そ、それで、どちら様ですか?」


「……!!」


 いとも簡単に後ろをとられていた。


「あ、あなたは……ナイトレイ侯爵様でしょうか? 私はベルサリオ公爵様のご紹介でお伺いいたしましたタカシと申します」


「……ふぅ。まったくビビりましたよ。ベルサリオ様のお客人でございましたか、みんな出てきてよいぞ! この方々はご客人である」


「ほ、本当ですか? 父上!」

「あ、あなた、この毒針は使わなくていいのね?」

「ちちうえ! 扉を壊したのに味方なのですか?」


 ぞろぞろとナイトレイ家の面々と思われる方々が口で飛ばすタイプの毒針を手にキッチンやら階段の影から出てくるではないか。


「こんな近くに居たのに気配を感じさせないなんて相当な手練れかしら!?」


 貴族なのに、まさに隠密系。


「あっ、いえ。ナイトレイ家遺伝系のスキルなのですが、基本的に影が薄いだけなのですよ。遺伝的に力も無いので、おそらくお二人には毒針を躱された後、あっさりと殺されるだけでしょう。あなた方は私でもわかるくらいにおそろしく強い」


 そう言って家族並んで見せたナイトレイ家の顔立ちはとても薄く、なんというか印象に残らない。侯爵様夫婦は三十代前半ぐらい。お子さまは長男が十歳、長女が五歳ぐらいか。全員がふとした瞬間に忘れてしまいそうになるレベルの印象の薄さなので、貴族としては致命的に向いてない。


「今、貴族として致命的に向いてないと思われましたね。まさにその通りです! たまたま先祖がこのスキルで王様を暗殺者から守って亡くなられたそうなのですが、その忠義から名誉的な侯爵になってしまったそうで……」


「私なんて、侯爵様と結婚して玉の輿かと思っていたのですけど血が繋がってないにも関わらず、私にもスキルが伝染して……既に両親からも忘れられてますのよ」


「僕も学校に通っていても誰も話し掛けてこないからつまらなくてさ。先生から出席も呼ばれなくなったから最近は行ってないんだ。あっ、でも今は内戦中だから行かなくてもいいんだったね!」


 悲しい。なんだこの悲しいスキルは。というか、伝染とか怖いわ!


「こんなスキルですから領地運営なども向いておらず、お恥ずかしながらベルサリオ様に代わりをお願いしているような状況なのです。あっ、身内以外には伝染しませんのでご安心ください」


「そ、そうだったんですね……。それにしても、この屋敷は酷くないですか?」


「使用人を雇っても、私達がいないと思って働かなくなったり、物を盗まれたり、堂々と住み始めたりする者もいる始末でして」


「朝起きたら犯罪者の集団がここをアジトにしようとしていたのは驚きましたね、あなた」


「おぉ、そんなこともあったなぁ。あの時は私の毒針が火を吹いたっけなぁ。あー懐かしい」


 つまり、隣近所からも廃墟だと思われており、主に犯罪者が勝手に入ってくるので諦めて住居を屋敷の地下にして、厳重にカギを掛けているそうだ。たまにやって来る犯罪者は、影の薄いスキルであっさり返り討ちにしているそうだ。


 ちなみに、出入口は地下から庭の脱出孔があるそうで、そこを使っているとのこと。


「そ、それで、こちらの手紙をお渡しします。公爵様からです」


「手紙ですか、ふむふむ……なるほど、潜入作戦ですか」


 ナイトレイ侯爵、公爵派であるにもかかわらず、王都に残り続けてた強者として、また内戦を早期に終わらせた立役者として、ベルサリオ国王より第一位の褒賞を得たとされているが、その姿を知るものは多くない。

5月24日に集英社ダッシュエックス文庫より発売が決まりましたダンジョンの管理人はじめました。ですが、本日書影を活動報告の方に公開させていただきました。

ぜひぜひティア先生とレヴィを見に来ていただければと思います!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ