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第18章 1話

 街の中に入ると武装した数名の兵士以外には人影は見当たらず何とも言えない静けさが漂っていた。


「なんだかこの辺りは人の気配がありませんわ」


「うん、お店もほとんど閉まってるみたいだね」


 王都の門をくぐると周辺に人は疎らで、みな家の中にいるのか、どうにも街に活気がない。屋台も出ていないし、市場も閉鎖されているようだ。ガタゴトと馬車が通り過ぎていく。門から入ってきた荷馬車は真っ直ぐに中央の大きな通りを抜け奥へと進んでいっているようだ。


「あの馬車はどちらに向かっているのでしょう?」


「よし、追い掛けてみようか。何かわかるかもしれないしね」


 僕はティア先生と透明化を解除することなく、そのまま荷馬車を追い掛けていく。ある程度予想通りというか、一番奥にある大きな城の中へと馬車は入っていった。


 そして人の気配を感じられなかったのが嘘のように城の周辺には長い行列が形成されている。どうやら食料や生活物資が配給されているようだ。


「ここは、また異様な光景ですわね」


 白い鎧を纏った偉そうな人が品物を順番に渡している。たまたま配給のタイミングだったのだろうか。大分待たされているのだろう、並んでいる人からもイライラが募っているようだ。


「何でこんなに待たされなきゃならねぇーんだよ! 上を選べない平民はたまったもんじゃねぇーなぁー!」


「あぁー、俺も公爵様の方が良かったぜ! 何でも最近、聖女様が戻ってきたそうじゃねぇか」


「本当か? つまり、聖女様は公爵様派ってことかよ!? ベルサリオの人だから、まぁわかっちゃいたけどよー、直接戦わないとはいえ聖女様と敵対することになるなんて辛ぇなぁ」


「おいっ、お前ら五月蝿いぞ! 無駄愚痴叩くようなら配給はやらんぞぉ!」


「か、勘弁してくださいよー。こいつらだってストレスが溜まってるんですから」


「私語は慎めと言っただろうがぁぁ!!」


 白い鎧の兵士は問答無用で蹴り飛ばすと、倒れた男に向かって剣を抜いた。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! こ、こんなことで殺されなきゃならねぇのかよ……」


「は、早く逃げろ! な、何なんだよ、くそっ!」


 流石にそろそろ見てるだけだと不味いようだ。とはいっても姿を現すつもりはこれっぽっちも無いけどね。こういう時は魔法で気をそらそう。あそこの壁でいいかな……。


 水弾(ウォーターボール)


 ドゴォォォォォーン!!


「うぉぉぉ! て、敵襲ー!」

「ど、どこからだ! 狙撃されているぞぉ!!」

「総員、迎撃態勢!!」


 慌ただしく白い鎧の兵士達が周辺を警戒していく。しかしながらどんなに探しても敵など見つかるわけがない。見えるところに敵はいないんだからね。この隙を逃さずに国王ヘイト活動をされていた住民の方々は姿を消したようだ。


「ここは、ベルサリオなんちゃらが話していたナイトライダーのところへ行ってみるしかないかしら」


 ナイトレイ侯爵ね。街の雰囲気は何となく肌で感じられたので、残りの情報収集も含めて侯爵様の所へ行くしかないかな。


「そうだね、侯爵様の所へ行って今後の作戦を練ろうか」


 公爵様より教えてもらった侯爵様のお屋敷は城からは大分離れた場所にあった。表向きは国王派に属しているらしいのだが裏ではがっちり公爵派とのこと。貴族とは立ち位置が難しいもので、最悪の事態が起きた場合に備えて派閥を敵方にも残すことを考えたりしているらしい。つまり、公爵派なんだけど、表向きには国王様万歳を徹底しているのがナイトレイ侯爵なのだそうだ。世知辛い貴族社会の一端を垣間見た気がする。


 ナイトレイ侯爵の住むお屋敷は、王都を囲う北壁面側のジメジメとした日当たりの悪いかなり年季の入った趣のある屋敷だった。壁面は蔦にビッシリと覆われており、よりジメジメ感を演出されている。庭の手入れをする予算がないのかしていないのか雑草が伸び放題の荒れ地だった。


「ボロっちいわ! 侯爵って結構な上級貴族だと思うのですけど、ナイトライダーは落ち目なのね!」


 貴族制度としては公爵デューク侯爵マーキス伯爵アール子爵バイカウント男爵バロン騎士ナイトの順の階級制度があり、功績や血縁などにより国王から社会的特権を認められた人及びその一族のことである。侯爵位は見ての通り公爵位の次にあたる上級貴族。かなり偉いはずの貴族なのだけど何があったのだろうか。落ち目かどうかの判断はちょっとわからないんだけど、これが不遇の貴族ナイトレイ侯爵との出会いだった。

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