第2章 11話
「魔法ですか。魔力があるのはステータスでわかっていたのですが、どうしたら使えるのかわからなくて」
この場所にティア先生がいれば説明も早いのだろうが、この場所には僕たち以外は立ち入れない。なら僕がやるしかない。
魔力操作は得意な訳だしやれるだけやってみよう。
◇◇◇◆◆
私は今、ものすごく集中している。タカシさんが言うには、魔力は心臓の裏側やや下あたりにある魔臓と言われる臓器が作り出し、魔力を使えるようになると血液のように体の中を巡るようになるそうだ。
「レイコさん、もっと集中して」
タカシさんが私の背中に手をあてながら魔力を流し魔臓を刺激している。暖かいうねうねしたものが心臓にまとわりついている感覚です。
男の人に慣れていないのもありますが背中から身体中をまさぐられているような変な気持ちでなんだか恥ずかしい。で、でも嫌な感じではなく、なんだか暖かくてどちらかというと気持ちがいい…。タカシさんが少し強めに魔力を流してくる。
「ふぁー。な、なにか、で、出ちゃう……」
すると、魔臓にヒビが入り少しずつ魔力が零れだしてきた。
「レイコさん!これをゆっくり全身にくまなく循環させてください」
タカシさんのフォローのおかげでスムーズに、魔力は血液のように自然に体を巡りはじめた。
「もう大丈夫だね」
えっ、もう終わっちゃうの。タカシさんの暖かく力強い魔力が私の身体から抜けていく。なんだか少しさみしい。ま、魔力ってすごいかも。
「僕がレイコさんの魔力に触れて感じたのは土属性。あともう一つあるみたいなんだけど僕の知らない属性のようでわからないんだ。ごめんね。もちろん追加の属性についてもダンジョンの交換ポイントで取得可能だから安心してね」
「僕が見本を見せるからしっかり観察してね。では、土棘!」
地面から土のトゲが生まれ突き出てくる。
魔法だ。タカシさんの身体から魔力の流れを感じた。あとはイメージ。今見たのと同じように魔法を放つ。
「土棘!」
で、出来た。
「出来ました!タカシさん」
嬉しくってついタカシさんに抱きついてしまった。恥ずい。とても恥ずかしい。けど、もっとこうしていたい。こ、これは恋!?かもしれない。そ、そうなのかな?
「よ、よかったね。最初から出来るのは素質が高いらしいよ」
まずい。最近の女子高生のスキンシップはアグレッシブ。時代は変わったのだろうか。流行の最先端はいつだって女子高生。これは抱きついているのではなく、ただのハグ。欧米的な日常なのだ。
そう。きっと挨拶のようなものに違いない。
勘違いしたら負けなのだ。その瞬間、一気にキモい人になるのはわかりきったことだ。
「この人です。このおじさんキモいんです」とか言われて、条例違反やら社会的制裁が押し寄せてくるのは明白。
最近の女子高生。なんて恐ろしいのだ。
「もう一段階レベルを上げてみようか」
これはどうかな。
「次は魔力操作だよ。よりイメージを明確にして魔力を繊細に操る。土壁」
僕のイメージは強化ガラスの壁。
「な、なんでガラスが!」
「ただのガラスじゃないよ。銃弾も弾く強化ガラスだよ」
「す、すごいです。魔法ってこんなこともできるのですね」
よ、よし。イメージするのはガラス。ただのガラスじゃない。銃弾も弾く強化ガラス。
「土壁!」
しかし、出来たのは小さな腰下あたりまでの高さの土壁。普通の土の壁だった。
まぁ、そんな上手くはいかないか。
「魔力操作は練習することでも上達するよ。一番はレベルアップだけどね」
ただ、レベルを上げている時間はないかもしれないよね。こうしている間にも警察が準備を進めているかもしれない。
ダンジョンに侵入してこなかったとしても入口は封鎖されてしまうだろう。そうなればレベルを上げるのは難しい。
最初は助言することで自立してもらっていい関係を築こうとか思ってたけど現実は厳しいね。
動画で山梨ダンジョンの戦力はある程度知られてしまっているし、千葉ダンジョンに来た部隊より強力な装備か人数をかけてくる可能性も高い。
そうなると山梨ダンジョンを千葉ダンジョンの傘下に入れることになる。
この場合のメリットとデメリットを聞かないことには始まらないね。




