第17章 11話
「お、おいっ、変態! 貴様、聖女様に何をしているのだ!」
予想通りというか、そういうタイミングで人が来るのは大体わかってるんだ。人生そんなに甘くないんだよね。知ってるとも。
「ちょっと待てゴリズ。ちゃんと状況を見てくれ。どちらかというと聖女様が積極的なんだけど、これ一体どういうこと?」
「なっ? 聖女様からだと!? 聖女様、早くそこの汚物から離れて下さい! しっかりしてください。一体どうされたのですか?」
ゴリズが肩を揺するようにして、聖女様の頭がカクカクと前後に動かされていると、急に力が抜けたようにソフィアさんが気を失ってしまった。
「ソフィアさん大丈夫ですか? 治癒必要かな」
「こ、これ以上変なことをするな!」
「ん……。あ、あれっ、私は何をしていたのでしょう? どうしたのリズ、そんな恐い顔して」
「正気に戻られたのですね。聖女様は、その、私がここに来たときには、そこの変態とキスをしておりまして……」
「ふ、ふぇー!! キ、キ、キスですか!?」
「やはり覚えてらっしゃらないのですね。おいっ、まさかとは思うがお前がおかしな魔法を使った訳ではあるまいな?」
「そんな特殊な魔法知らないよ。ソフィアさんに何か心当たりはないのですか?」
「わ、私は、朝のお祈りをするために神殿に来たことまでは覚えているのですが……あっ!」
「どうされたのですか?」
「水神様です! 私の頭の中に語りかけるように水神様の声が聞こえたのです。確か、『暫くの間、貴女を依り代として使わせて頂きます。そして、これは貴女自身にとっても格の上がることとなるでしょう』と」
「理解できません。い、いえ、聖女様のおっしゃることがではなくてですね。何故そこの変態とそのような行為をしていたのかがです」
「水神様のやることですので、我々には到底及びのつかない深い理由があるのかもしれません」
「とはいえですね、抱き合ってディープなキッスをされていたのですよ。お、お前も何で避けないのだ! あっさり受け入れるな!」
「ディ、ディープでしゅか!?」
顔を真っ赤にした聖女様が顔を隠すように俯きながら手で覆っている。どうやら軽めのキスを想像していたらしい。
避けられないこともなかったけど、避ける必要性を感じなければ避けないよね。
「いや、こんなの流石に想定外だよ。ところで、ソフィアさん。格が上がるということだけど、何か変わったことはあったのですか?」
「そ、そうですね。何も変わったところはないように思えるのですが」
今の聖女様を見る限り、さっきの聖女様は明らかに違う人物だ。まるで本当に憑依したかのように。あれっ、僕の魂とか吸われてないよね? 急に怖くなってきたんだけど。
治癒
「お、お前、今何をした!」
「何って? 自分に治癒をしただけだよ」
「さ、さすが変態……あくまでも自然を装いながらも自らに治癒を撃つとは」
「酷い言われようだね。ソフィアさんがいなかったら、間違ってゴリズに向かって治癒の練習をしちゃうところだったよ」
「練習……あっ! それでしたら私が治癒魔法を使ってみましょうか」
格というのがよくわからない以上、いろいろと試してみた方がいいだろう。
「そうですね。魔力の量や質に変化がないか確認してみた方がわかりやすいかもしれませんからね」
「それではリズ、こちらにいらっしゃい」
「は、はい、かしこまりました」
治癒
「…………」
「ど、どうですか?」
「お、おそらく、普通の、いつもの聖女様の治癒だと思われます」
格が上がるってどういうことなのだろうか。
礼拝場所には水神様と思われる像が建てられているのだが……。
「ブフォー!!」
そこには、どうみてもムキムキな男性が布で大事なところを申し訳なさ程度に隠しているだけのお姿で立っていた。何度見てもそこにいるのはほぼ半裸の偉丈夫。片手で三叉の矛を掲げていた。
「水神様の名はポセイドン様。大海を司る神様でございます」
水神様、想像していたのと性別が違い、とてもインパクト溢れるお姿をしていた。
「水神様って実は女神様だったとかいう史実は残されていないのかな?」
「残されてないですね。水神様はこの力強いポセイドン様お一人でございます。歴代の聖女様も神託を受けた際には男性の声だったと聞いておりますし、私も先ほど聞いた声は間違いなく男性の声でございました」
はい、アウトー! ポセイドン、ゲイ確定! どんな理由があったのか知らないが随分とグイグイくる神様だったな。次回以降は本当に気をつけよう。あれは絶対関わっちゃいけない奴だ。
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