第17章 10話
「まるで、何歳も若返ったかのように体が自由に動くし、視界も良好だ。タカシ殿は医術の心得もおありでしたか」
「いえ、普通の治癒でこざいます」
「何をご謙遜を。これだけの魔法を使えるのです。大変な修行をされたのでしょう」
そこまで大変なこともしてないような気もするが、あまり謙遜しすぎるのもよくないのかもしれない。
「そうですね。他にも、内戦で怪我をされた方や体調を崩されている方などおりましたら言ってください」
「それは素晴らしい案でございますね。私も及ばすながらお手伝いさせていただきます」
「タカシ殿、その、どのレベルまで治せるのであろうか」
「そうですね。生きていれば。流石に寿命の近い人を回復とかはできませんよ」
「生きていれば……な、なんと!」
「タカシ様はそこまで熱心に回復魔法を修められたのですね。タカシ様から見たら私の力などまるで赤子のようなものなのでしょう。きっと水神様の寵愛を受けているのでしょう」
水神様の寵愛ね。最近はいろんな属性の魔法に手を出しているものの相性が良い魔法は水魔法のようだし、ティア先生やレヴィと出会わせてくれたのもこの属性のお陰なのだ。どちらかというと此方からお礼を言わせてもらいたいところだ。
「水神様には是非ともお礼をさせて頂きたいですね」
「まぁ、とても信心深いのですね。治療は水神様の神殿で行いましょう。治療を行う前に神殿でお祈りを捧げるとよいでしょう。私もタカシ様の潜入にあたってのご無事をお祈りいたします」
「それはいいですね。公爵様それでよろしいでしょうか」
「うむ。実は治癒が間に合わなかった兵も多くおってな。退役せざるを得ないと気を落としている者も少なくないのだ。神殿の救護所に怪我をしている者の多くが集められておる。こちらこそお願いできるであろうか。依頼とは別のお願いになるので、何か別のお礼を用意しよう」
今日のところはいったんお開きとなるようで、明日から2日ほど治癒を行うこととなった。やはり戦争なのだ。結構な数の人が怪我で苦しんでいるのだろう。潜入のミッションについても、王国にいる諜報部隊と話が進み次第動いていくことになっており、準備にもう少し時間が掛かるとのことだった。
まぁ僕的には、のんびり聖女様と治癒ごっこをしている方が楽しそうなので、潜入に関してはのんびり進めてもらいたいところだと思っている。この街は戦場になっていないようなので、明日は情報を収集しながらベルサリオの街を観光させてもらおうかな。
◇◇◇◆◆
翌日早く目が覚めた僕は、一人で水神様の神殿へと向かった。個人的にだがなんとなく、お参りとかお祈りをする時って朝の方が気持ちいい気がするんだ。早朝はまだ人が動き始めていないため、とても空気が澄んでいる気がして、神殿も10%増しに神聖に感じるというものだ。僕は前日に場所を教えられていた神殿の奥へと進んでいった。するとそこには先客がいるようだった。
「あれ? ソフィアさん、早いのですね。まだ誰もいないと思ってましたよ」
お祈りを捧げていたソフィアさんが僕の声に反応して立ち上がる。
ニコニコとこちらを見ながら興味深そうに僕の顔を見ている。何だか雰囲気がちょっと違うように感じるのは、この神聖な場所と早朝で僕が多少寝ぼけているからなのかもしれない。
ソフィアさんはゆっくり近づくと僕を抱き寄せるようにしておもむろにキスをしてきた。頭が混乱している中、そのキスはディープなものになっていった。ゆっくりと舌を絡めるようにして僕の口の中を丁寧に凌辱していく。両腕は僕の背中をがっちり抱きしめており逃すつもりがないことが窺える。密着度が高く、否が応でも豊満な胸の感触も楽しめる。これが異世界における朝のご挨拶というものか……。なんて積極的なんだ。
「ちょ、ちょっ、ソフィアさん!?」
さすがに様子がおかしいと思って、残念ではあるがそっと口を離してソフィアさんの顔を見る。
何かおかしいことでもしてるんですか? 的な表情をして首を傾げていらっしゃる。どういうことだ? うっとりとした表情のまま続きをせがむように再び抱きついてくる。何ですかこのサービスタイムは? このまま続けてもよろしいのでしょうか。
それにしてもこの聖女様、出会ってから時折見せる聖女らしさを感じさせないパフォーマンス。高卒ルーキーながらスタメンを勝ち取れそうな程に勢いがあります。
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