第17章 3話
ゆっくりと残りのバカンスを過ごせた僕たちは、再び第一世界へ戻っている。途中でマレーシアに行くなどイレギュラーもあったが久々にのんびりできた。ダンジョンマスターだってゆっくりのんびりしたい時があるのだ。みんなにものんびりしてもらえてよかった。これからも福利厚生のしっかり整ったダンジョンとして適度に力を抜きながらやっていきたいと思う。
ところで現在の状況ですが、ただいまお城にて魔王様から僕がダンジョンに戻っている間の状況を伺っているところであります。
「状況を説明しよう。タカシが取り逃がしたキメラとメルキオールの行方は現在、カイトが追っているのだがまだ発見できていない。次に、聖女様とカシューの交換について日取りが決まった。こちらは、明日行われる予定だ」
「僕たちは、聖女様とカシュー様の警護をすればよいのですか?」
「いや、警護はタカモトが行うので間に合っている。タカシには人族の国へ潜入してもらいたい」
「潜入ですか?」
「現在、人族の国では国王派と公爵派に分かれて内戦が勃発している。我々は、公爵派が勝利するよう手伝わねばならん」
「僕、潜入とかしたことがないのですけど」
「タカシは人族の世界でも顔バレしていないし、その力も申し分ない。また、潜入するにあたってスキルの系統も犯罪的なものが多く適任だと思っている」
犯罪的って褒め言葉じゃないからね! それとまだ早いけど、義理の息子に言うことばじゃないから! もっとオブラートに包んで!
「自分で言うのも何ですが僕ってこちらの地理に疎いから、どこが人族の国かとかよくわかってないのに大丈夫でしょうか?」
「その点は抜かりない。アドバイザーを付けているのでその者と一緒に公爵領へ向かってもらう」
「アドバイザーですか。それは助かりますね」
「聖女様、どうぞこちらへ」
隣の部屋の扉が開くと聖女様が入ってきた。どうやら聖女様、捕虜兼アドバイザーに就任した模様。
「タカシ様、ご無沙汰いたしております。この度は公爵領にご助力頂けるとのこと。誠にありがとうございます」
「ソフィアさんがアドバイザーなのですね。知らない方に案内されるよりとても心強いです。改めましてよろしくお願いいたします」
公爵領に着いたら間違いなくゴリズもセットで付いてくるのが見えている。それが若干面倒くさいぐらいか。おそらく待遇もそれなりに良くしてもらえるだろう。適当に雷鳥さんを飛ばしておけば1週間ゆっくり過ごせそうな予感。
「タカシには聖女様の護衛ということでそのまま公爵領に入ってもらう。向こうについてからは公爵のレオナルド殿の指示に従って動いてくれ。一週間に一度、魔王領に報告の為戻ることは先方にも伝えている」
「かしこまりました。キメラがいる以上むやみに魔法攻撃を仕掛けるわけにもいかないでしょう。カイトさんの調査状況を伺いながら無理のない範囲でじっくり進めてまいります」
「内戦だからじっくり進められても公爵殿も困るとは思うのだが、キメラとメルキオールについては頭が痛いな。カイトが早く見つけ出してくれることを祈ろう」
「それでは明朝頼むぞ。しっかり準備をしておくように。では下がれ」
「はっ」
魔王様との謁見が終わるとみんなと一緒にアモナ姫のところへ顔を出すことにした。これは、ティア先生たちもまだちゃんと話が出来ていないからという要望もあったし、先に女性同士での話し合いが必要とのことだった。みんなの目がなんか怖い。男は黙って言いなり。男は黙ってやり過ごす。
扉をノックするとすぐにジルさんが迎え入れてくれた。僕たちがこちらに来たことは知らされているようで既にお茶の準備をして待っていてくれたとのこと。
「アモナ姫、ただいま戻りました」
「タカシ様、ピースお兄さま、それから初めまして。みなさんのことは存じ上げております。ティア様、レヴィ様、レイコ様。ヨルムンガンドちゃんとウンディーネ様はいらっしゃってないのですね」
「えぇ。私たちは一度じっくり話をした方がいいと思ってますの。前回は誘拐に巻き込まれて話が出来ませんでしたからね」
「そうですね。私もみなさんとちゃんとお話をしたいと思っておりました。タカシ様、ピースお兄さま、申し訳ございませんが席を外していただけますでしょうか」
「そ、そうだね。では、僕たちは先にピースケの家に行ってるね」
きっと、これから女性同士の話し合いが始まるのだろう。そこで決められたことに僕の意見が介入する余地はきっとない。または、この話し合いの内容が僕に知らされない可能性すらあるだろう。穏便に嵐が過ぎ去るのを待つように僕は知らないふりをしていればいいのだ。
「マスター逃げちゃダメっすよ」
「えっ?」
とりあえず、ピースケとミルさんに結婚とか夫婦関係について相談してみようと思う。
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