第2章 10話
「おっ、マスター。なんか山梨のダンジョンマスターから会談の申し入れがきてるっす」
ちなみに、会談は申し入れた側のダンジョンで行われ、会談場所は攻撃不能、お互いの許可なく魔法が使用できないエリアになるらしい。
山梨のダンジョンってうちのあとに開通した二番目のダンジョンだよね。
なんだろ。ちょっと顔貸せやコラっ的なやつだろうか。
「それって拒否は出来るの?」
「もちろん出来るっす。ただ、今回の会談の趣旨について一言、助けてほしいと言ってるっす」
助けてほしいか。
お互い出来たばかりのダンジョンを管理している。
足りない、手が届かないというのはいくらでもあるだろう。
うちもコウモリさんが住んでくれなかったら、ここまで暴れてなかった。
あれっ、ちょっと待てよ。うちのダンジョンが暴れたせいで迷惑掛けている?
「よし、会おう。助け合い大事だからね」
「あれ、てっきり断るかと思ったっすよ。じゃあ、そう伝えておくっす!」
ピースケの返信から30分後、さっそく会談が行われた。
場所は山梨ダンジョン、森の部屋。
会談は各々のマスターと案内人のみで行われるため、ゴブリン達はレイコの部屋に無理やり押し込められている。
「か、会談に賛同頂きありがとうございます。レイコといいます」
どっからどう見ても女子高生だね。制服着てるし。黒髪の肩までの長さのストレートで物静かな印象の女の子です。
それにしても隣の部屋からゴブゴブうるさい。新手の嫌がらせだろうか。
っ!まさか会談を優位に進めるためにこちらの意識を削ぐのが狙いか。
すると、スッとレイコが立ち上がり、隣の部屋に続く扉をバッゴーンと蹴り上げた。
シーン。
「し、失礼いたしました」
な、なんだかピりついた空気じゃないか。この空気に流されてはいけない。ここは大人の余裕を見せるところだ。落ち着け、冷静にいこうじゃないか。
「いえいえ。はじめまして僕はタカシです。これは千葉の銘菓『ピーナッツ最中』です。あと、こちらは案内人のピースケ」
「どうもっす。」
「こちらからお呼びだてしたのにお土産まで頂いてすみません。こちらはワインボトル先輩です。」
「おぅ。よろしく頼むぜ」
やっぱ、山梨だからワインなのかな。ボトル先輩渋さがにじみ出てます。ワインだけに。こっちも落花生だけどさ。案内人には特産品縛りでもあるのかもしれないね。
「あ、あのー。タカシさん」
「あっ、はい。何でしょう」
「話を進めて大丈夫ですか?」
「うん。もちろん。で、助けてほしい。だったね」
そうして、レイコは自分のこと。山梨ダンジョンのこと。そして、助けて欲しい理由を話しはじめた。
山梨ダンジョンは樹海の奥にあるダンジョンのため普通に考えて人が来る場所ではないらしい。今までは鹿や小動物を討伐しポイントを稼いでいた。
ところが昨日、人が侵入し携帯で動画も撮られ逃げられてしまった。
動画にはゴブリンや魔法も映っているかもしれない。
通報されて警察が来たらこのダンジョンは制圧されてしまう可能性が高い。
しかし、レイコはこのダンジョンでみんなと一緒に静かに暮らしていきたいと願っている。
まだ高校生なのに、ダンジョンの方が気が休まるとか、嫌な世の中だよね。
ダンジョンは一階層でこの森の部屋のみ。ダンジョンモンスターはゴブリン系で約30体。保有ポイントは残り400Pとのこと。
あかん。詰んでるね。
他人事じゃないけど警察や自衛隊相手にするには初期ダンジョンってかなり難しい。
僕の場合、魔法適性があったからなんとかなっていたかもしれないけど、レイコさんはどうなんだろ。
「レイコさんのステータスはどんな感じか見せてもらうことはできるかな」
「はい。もちろんです。ステータスオープン」
レイコ
レベル1
体力50
魔力60
攻撃力3
守備力8
素早さ5
レベルはあげていないんだね。
でも魔力は多い方なんじゃないかな。これなら得意属性とか調べてみてもいいかも。思わぬ戦力が見つかるかもしれないしね。雷属性があれば理想的なんだけどな。何といっても身体強化魔法が使えるからね。
あとは魔力操作だね。
あれが僕のように使えたならまず安泰だろう。
「得意属性を調べてみよう。僕がわかるのは水、土、雷の三属性だけだけど魔法を使えるようになるだけで戦略の幅も拡がるからね。」
「はい。よろしくお願いします。」




