第17章 2話
ようやく日本に戻ってきた。
最初、水竜フライトハイのティア先生がインドに向かって飛行を始めたのでどうしようと思ったのだけど、スリランカの手前でどうにか引き返すことが出来てホッとしたものだ。
「タカシ様、目的地はどちらかしら?」
みんなはホテルかな? それともダンジョンに戻ってるのだろうか。
「『千葉ダンジョン』かな。とりあえずピースケと話をした方がいいだろうからね」
「かしこまりましたわ。では亀山ですわね」
飛行機や船、そしてレーダーにも注意しながら低空飛行で千葉県まで戻ってきた。海岸線に浮かびあがる銚子から続く九十九里浜が三日月のように美しく見えている。
ダンジョンに戻ると、ピースケとタコ丸しかいないようで、みんなは再びホテルに滞在しているようだ。じゃあ、早速話を聞くことにしようか。温泉が待っている。
「マスター、お疲れっす。『ペナンダンジョン』は、もう大丈夫っすか?」
「うん、もう大丈夫だと思う。あとはモンスタードールズの3人にお願いすることにしたよ」
「それはよかったっす。で、こちらが『大阪ダンジョン』の……」
「タコ丸だ。クリアおめでとさん」
たこ焼き風のゆるキャラ、タコ丸がピースケの隣に立っていた。案内人って、表情が分かりにくいから怒っているのか、そうでもないのか判断しづらいよね。
「うん、どういたしまして」
「それで、マスター。ダンジョン協会のガズズから連絡があって……」
ピースケから話を聞いて幽霊になるという意味をようやく理解できた。その話を聞いたら選択肢は1つになるのかな……。
「それで、あんたは俺をどうするつもりなんだ?」
「案内人が死なない道を探そうかと思っていたんだけど、その話を聞いた後だと第一世界に送ってあげようかなと思ってる」
「特典が貰えるかもしれないし、俺もここに残る意味を見いだせない。まぁ、賛成だ」
「痛いのは嫌だから麻酔で寝てる時にサクッと殺してほしいらしいっす」
「お、おいっ! い、いや、そうだけどよ。お願いします。痛くしないでください」
タコ焼きのゆるキャラが綺麗に土下座していた。まぁ、そうだね。苦しまないように第一世界に送ってあげよう。またダンジョン協会でお会いするかもしれないしね。
「了解。眠っているうちに第一世界に送ってあげるよ。いつでもいいのかな?」
「お、おう。いつでもOKだ」
ピースケの方を見て確認するけど、やってしまって問題ないようだ。では、サクッと殺してあげようか。麻酔ガスをイメージした疾風の魔法を発動させるとタコ丸の口元に持っていく。力を失ったかのように崩れ落ちるタコ丸。床に辿り着く前にタコ焼きを火弾した。
「タコ焼きの二度焼っすか!?」
「いや、だってさ、タコ焼きの心臓の位置とかわからないし、痛みで下手に目を覚まされても可哀想とか思ってたら、手っ取り早く焼いてしまえばいいやってね」
「焼いてる途中に目が覚めたらもっと酷いことになってたに違いないっす」
「確かに……。タコ焼きだけに熱に強かったり……しないね」
案内人の姿は既にダンジョンから消え去っており、間違いなく第一世界で幽霊となって復活? していることだろう。ゾンビじゃなくて幽霊でよかったと思う。そういえば、リリアさんのダンジョンにゴーストってモンスターがいたけどあれに近いものなのだろうか。
ピコン!
他ダンジョンの案内人討伐を確認しました。特典として、初回限定支援プレゼント『賢者のローブ』を入手しました。
その連絡の後、いつの間にか僕の手には、ゴージャスなローブ『賢者のローブ』が握らされていた。
「見た目は今までのより、ちょっとだけゴージャスな感じの服ですわね。タカシ様、そのローブはどんな効果があるのかしら」
「うんとね、防御+50、魔法防御30%アップに攻撃魔法を一定確率で魔力吸収するらしい」
「それはまた、凄いですわね……」
「賢者シリーズっすか。杖にローブ、あとは指輪とかブーツとかネックレスとかもあるかもしれないっすよ」
「初回限定って言ってるから次は貰えないんだろうね。まぁ、何というかラッキーだったね。タコ丸を助けておいて良かったよ」
あと数日でまた第一世界に戻らなくてはならないんだよね。向こうはどうなってるのかな……。とりあえず、もうしばらくゆっくりさせてもらおう。バカンスが途中になってしまったからね。
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