第16章 10話
アイシャちゃんが目覚めたのは既に夜を迎える頃だった。『ペナンダンジョン』には、モンスタードールズも到着していて、現在絶賛引き継ぎ中です。
ちなみに、居住区には会議室を設置してダンジョンカメラで入口周辺や大部屋を観察出来るようにしています。
「タカシさん、二階層を造るポイントはもう貯まっているのですか?」
「って、ミクちゃんが言ってるけど、どうなのパール君?」
「うん、大丈夫かな。アイシャが来る前に設置しちゃう? やっちゃう?」
「うーん、来てからでいいんじゃないかな。そんな焦ることでもないしね」
「師匠、マレーシア政府の感じは? 裏切らない? 大丈夫かな」
「向こうにも利がある内は大丈夫じゃないかな。屠殺によってレベルがそれなりに上がるだろうけど、そこまで影響のない範囲と思っていいよ。まぁどちらにしろ数ヶ月で攻略不可能なダンジョンになるだろうから、気にするだけ無駄かな」
「タカシさん、ポイントが貯まってもモンスターやマスターのレベルは低いままというのはちょっと不安じゃないですか?」
「そうだね、サクラちゃん。それもポイントが貯まれば、アイシャちゃんやボスモンスターのレベルは『大阪ダンジョン』で上げられる。それまではサクラちゃんが『魔力操作』スキルの習得を見てあげてよ」
「私もスキルレベルを上げたいからアイシャと一緒に頑張ろうかな。一応ダメもとで聞くけど、その『賢者の杖』は貸してもらえないんでしょ?」
「残念ながらね。しばらくはうちのボスモンスター達に使わせる予定だからね」
そんな目で見ても貸してあげませんよ。第一世界で必要になるからとか言えないしな……。実際、ティア先生達に使ってもらうというのも嘘ではないからいいだろう。
ちょうどその時、居住区からアイシャちゃんが会議室に入ってきた。
「あ、あの……すみませんでした。こんな大変な時に私ったら寝てしまっていて……」
「いいのだアイシャ、私がお願いしたのだよ。ゆっくり休めたようで安心した」
「雪蘭さん……ありがとうございました。あ、あと、ミクさん、サクラさん、リノさん、この度は本当に申し訳ございませんでした」
「タカシさんに謝っているなら、私達には今の謝罪で結構ですよ。でも、次はないですから覚えておいてください」
「は、はい。もちろんです」
「それじゃあ、アイシャちゃん。早速だけど二階層を造ってみようか」
「あっ、はい。えっと、二階層をポイント交換で造るっと。階層状態を……階層状態を?」
「どうしたの? アイシャちゃん」
「タカシさん、階層状態なんですが、普通の『海』と『海(闇夜)』って2つあるんですけど、どちらを選べばよいのでしょうか?」
どういうことだ? 階層状態にそんなパターンを見たことがないぞ。特殊なポイントの稼ぎ方をしようとしているからなのだろうか……。
「パール君、何かわかる?」
「全くわからないよ。夜の海ということは、幽霊船とか出るのかな? ちょっと面白そうだよね!」
幽霊船ねぇ。普通の海なら『ウルフフィッシュ150P』と『イカキング100P』が召喚出来るかもしれない。これが夜だとどうなるのか?
「うーん、判断出来ないからアイシャちゃんに任せるよ。最悪、変な階層になってしまったらすぐにポイントを貯めて変更すればいいよ」
「そ、その言い方だと『海(闇夜)』を試してみればと聞こえるのですけど、実は私も面白そうなので、試してみたい気がしています。何だか裏メニューみたいじゃないですか!」
「おっ、乗り気だね。一応、確認してもらいたいんだけど他の階層状態、例えば『草原』とかはどうなってるのかな?」
「『草原』ですね、草原、草原……あっ! こっちも普通の『草原』と『草原(朝焼け)』っていう2つが選べます。ん? あれっ……よく見ると消費ポイントがあるみたいですね。1日1000ポイントが必要みたいです」
消費ポイントと聞いて慌てて雪蘭さんが話に入ってきた。
「た、高いな。なんだか急に詐欺っぽい雰囲気を醸し始めてないか? これ絶対止めといた方がいいだろう。アイシャ、無理はしない方がいいぞ」
気になる……。とっても気になる。1000ポイントぐらいなら平気だと思うんだけど、アイシャちゃんのダンジョンだからな。自分のダンジョンなら間違いなく試しているはずなんだけどね。うーん……。
「あ、あの、タカシさんだったらどうしますか?」
「他に不安を抱えている状況で、更なるチャレンジはしない方がいいだろうね。もう少しポイントに余裕が出てきた時に、また考えたらいいんじゃないかな」
「そ、そうですよね……」
「いや、今は攻勢に出る時よアイシャ。私なら今すぐ10階層ポイント消費の階層にするわ」
「そうだ! 『草原(朝焼け)』には新種のモフモフが召喚出来るはず。やれ、アイシャ。迷うな、モフモフの意思を感じろ」
ティア先生とリノちゃんが暴走し始めているな。少しぐらい我慢しなさい全く。
「えいっ!」
「パ、パール君!?」
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