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第16章 9話

「じゃあ、深呼吸して僕に背中を向けて」


「は、はい」


 まるでお医者さんごっこをしているような背徳的なものを感じさせる。雪蘭さんやティア先生が横にいるからあまり変なことは出来ないけどさ。……うん?


「い、いや、脱がなくていい。アイシャちゃん、そのままでいいんだ。通路をポイント交換する準備をしておいてね」


 アイシャちゃんもやる気なようだし、やれるだけやってみようか。背中から魔臓を刺激するようにしてゆっくり動かし始める。僕の魔力も少しだけ混ぜて補助するようにゆっくりと浸透させていく。このまま魔法なら発動させることは出来るだろう。問題は、これでイメージが伝わればいいんだけど……。


「よしっ! 今だ! アイシャちゃん通路を」


「ふぁ……ふぁぁぁ! ポ、ポイントぉぉ、交換っ!!」


 テンション高めの若干上ずった感じの声を出したアイシャちゃんは、ポイント交換を無事成功させた。ちゃんと居住区を繋ぐ通路のポイント交換が行われているようで、光ながら新しい通路が生まれようとしていた。いけるのか!?


「……完成したね」


 居住区との間には新しく通路が完成されている。それは見事な普通の岩壁の通路が設置されていた。


「おいっ、普通の通路じゃないか! 一体どういうことなんだよ」


「雪蘭さん、そんなに怒ると将来シワが増えるよ。それにしてもやっぱり無理だったか……。ポイント交換するのは結局のところアイシャちゃんの訳だし、まぁしょうがないか」


 雪蘭さんから冷たい目線を向けられるが、僕にだって出来ないことはあるのだ。責めるなら無茶ぶりをしてきたティア先生を責めてほしい。


「アイシャ、ちょっと気合いが足りないんじゃないかしら?」


 気合いで何とかなると言うのなら、そこそこに気合いは入っていたように思える。結構大きめの声でポイント交換って叫んでいたと思うんだ。これは無理っぽいだろう。


「も、もう一度チャレンジしてみましょうか?」


「お、おい、アイシャ」


「そうね、もっと気持ちを全面に押し出してやるべきだわ」


「ちょっと無理なような気がするけど、もう一度だけやってみる?」


「は、はいっ! 気合いですっ」


 ……うん?


「い、いや、だから脱がなくていい。ポイント交換する時に、通路幅や長さ、どのようにカーブさせるかをもう少し具体的にイメージしてみようか」


「そ、そうですね。タカシさんの魔力が私の身体の中でうねりまくっていて、正直それどころではありませんでした。イメージ、頑張ってみます」


 よし、もう少しアイシャちゃんがイメージしやすいように僕も集中してやってみよう。これでもかと、こねくり回してポイント交換だけさせればいい。どりゃっ!



「ふぁ……ふぁぁぁっ! ふぁっ!! ふぁぁぁぁっ、ふああああああああ!!」


 ……火照った顔をしながら、ふあふあと叫んでいたアイシャちゃんはそのまま気を失って後ろ向きに倒れてしまった。


「これはちょっと厳しそうかな。通路は『魔力操作スキル』を習得してからにした方がいいね」


「これ本当に成功する可能性があったのだろうな?」


 アイシャちゃんの頭を押さえながら、その場で寝かせてあげている雪蘭さんから突っ込みが入る。


「魔法なら発動させることが出来たからね。可能性はもちろんあったと思うよ。力及ばす申し訳無いけどね」


「まぁ、私に謝られても困る。アイシャが了承したのだ。私が文句を言う筋合いではないよ。全くしょうがない、アイシャをベッドに運んでくるよ」


「すぐに魔法で治そうか?」


「うーん。ここ何日か緊張が続いていたからな。アイシャは昨日も殆ど眠れてなかったみたいなんだよ。強制的にでも休ませた方が精神的にも良いだろうと思うのだ。マレーシア政府との緊急な打ち合わせでもない限り、しばらく寝かせてあげようと思うのだけど構わないか」


「その方がいいね。アイシャちゃんを雪蘭さんに任せるね」


「あぁ」


 あれっ? ティア先生が顎を指で掻きながらの思案顔だ。


「あら、困ったわね」


「元から通路は『魔力操作』スキルを習得してからと思っていたから、そんなに困ることでもないよ」


「違いますわ。アイシャが倒れたら誰がご飯を用意してくれるのかしら」


 おおう、そっちか……。相変わらずのマイペースだね。


「昨日、駅弁の『牛肉ど真ん中』を渡していたじゃないか。アイシャちゃんが復活するまでそれでも食べてようよ」


「あれなら昨晩、まだ残っていたので夜食に食べてしまいましたわ。みんな意外と少食なのかしら?」


 間違いなく取り置きしておいたんじゃないかな。あれっ、僕、何か食料持ってたっけ……。


 そういえば千葉のホテルでお土産買ったのがあったか。とりあえず、みんなでダンジョンバウムクーヘンでも食べようか。

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