第16章 8話
翌朝からは再びマレーシア政府との交渉があったり、ダンジョンの大部屋を見学するために大勢が朝からダンジョンを訪れてくれたりで、ダンジョンポイントはそこそこに増えているようだ。
滞在ポイントが貯まる前にダンジョンを出てしまう人も結構いたので、そこは何とも微妙なところではあったが、こればっかりはしょうがあるまい。
「この分なら今夜にはしっかり階層造って、ダンジョンモンスターも増やせそうだねアイシャちゃん」
「はい、楽しみです。リザードマンさんがまたいっぱい増えますね」
「階層状態を変えると新しいダンジョンモンスターを召喚出来るようになるから、その辺りを確認しながらでもいいんじゃないかな」
「そうですわ。アイシャ、ローパーを召喚するのよ!」
海階層でローパーって召喚出来るのかな? リナちゃんに聞いて見るか。
「パール君、ちょっとお願いがあるんだけど『静岡ダンジョン』のウナ次郎に会談で聞いてもらいたいことがあるんだ」
「いいよー。何を聞くの?」
「海のフロアを造った時に召喚可能になったダンジョンモンスターを知りたいんだ」
「了解だよ。聞いてみるね」
その後、ウナ次郎情報で『ウルフフィッシュ150P』と呼ばれる噛みつき攻撃をしてくる魚と『イカキング100P』で墨による目潰し攻撃と吸盤を使って海底に引きずり込むモンスターがいるとのこと。リナちゃんはもちろん興味がなかったようで召喚すらしていない。また、どちらもサイズ的には50センチ程度のため、それなりに数を必要とするらしい。
「微妙ね……。全く、ローパーがいないじゃない」
「そう? 組み合わせれば、それなりになるんじゃないかな」
「イカならもっと大王っぽいボスモンスターがほしいかしら。これだと暇潰しに海釣りをするぐらいしか楽しみがないもの」
「アイシャもイカが大好きです。炒め物の具材にとてもいいのです。包丁で網の目を刻むことでソースとよく絡みます!」
ダンジョンモンスターを食べちゃダメだからね。キャッチ&リリースですよ。
「他にも召喚出来るダンジョンモンスターがいるかもしれないし、階層を追加してからそれぞれ召喚してみようよ」
「そうですね。楽しみです」
今夜にはモンスタードールズが会談で『ペナンダンジョン』に来る予定となっている。引き継ぎが完了したら翌朝には日本へ帰国するつもりだ。
階層を増やすことで時間を稼げるようになるので、万が一マレーシア政府がダンジョン攻略に乗り出したとしても、僕達が駆けつけるまで守る時間は作れるはずだ。
「もうダンジョンポイントが6千を超えています」
「今日だけで1万ポイントは超えそうだな。これ1ヶ月もしたら、凄いポイントが貯まってるんじゃないか」
雪蘭さんの言う通りで、テスト期間が終わる頃には、おそらく50万~100万ポイントは獲得出来ているだろう。それだけあれば、階層はもちろん、一気に高難易度のダンジョンにすることが可能だろう。
「テスト期間大事でしょ? しかも一応、マレーシア政府の準備期間も考慮している的な感じで悪い印象を与えていないし、テーブルセットまでプレゼントしてるんだからね」
「テスト期間とはよく言ったものだな。最早、どっちに転んでも『ペナンダンジョン』は大丈夫だろう」
「タカシ様の作戦勝ちですわ。勝負というのは戦う前から決しているものなのよ。理解したかしらアイシャ?」
「さすがです!」
もちろん、ティア先生が考えた作戦ではない。ティア先生からしたら、僕の自慢も自分の自慢のようなものなのだろう。
「さて、迷路のような通路も午前中に造ってしまいましょう。そもそも二階層に舟なんか持っていかせなければいいのだわ」
「通路を狭くしても軍事用のゴムボートとかは持ってこれそうだけどね。というか、アイシャちゃんは『魔力操作』スキルがないんだからまだ造れないでしょ」
「何を言ってますの? タカシ様がアイシャの魔臓ごと操作すればいいのですわ。強引にズババーンとやってしまえば問題ないと思いますの」
「ちょ、ちょっと待て。ズババーンって、そ、それはエロいやつだろう。わかるんだからな! アイシャはまだ16歳なんだぞ」
ティア先生の言うようなことが本当に出来るのかはやったことがないのでわからない。魔法を強引に発動させたことはあったけど、ダンジョンアイテムの設置にも有効かどうかは実際にやってみないとわからない。
「判断はアイシャちゃんに任せるけど、やってみる? 本当に出来るかはわからないけど、設置出来たら安全面ではかなりのところまで持っていけると思うよ」
「そうですね……や、やれることはやっておきたいと思います。ですが、その、あまり痛くしないでくださいね」
「おい、アイシャ!」
なんだこの庇護欲を掻き立てる感じのドキドキは。悪くないドキドキだ。むしろ好きなドキドキかもしれない。
よし、本人の了承は得られたのだからじっくりとこねくり回そう。
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