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第16章 6話

「あ、あの、よろしくお願いします」


 若干、緊張気味のアイシャと名乗った少女が仮面を付けたまま頭を下げる。その様子を見て、ダンジョンに捕まった少女がいるのではないかとの予想がふと頭に浮かんだ。


 まぁ、違うのだろう……。もしそうだとしても証明するものは何もないし、今は関係を悪化させるような発言は極力控えるべきだな。この少女が助けを求めるようならば、その時に力になればいい。


「アイシャ君といったかな。その姿、ひょっとして君は人間ではないのかね?」


「ち、違います。姿を真似ているだけです」


「ふむ、そうだったのですね。それで、話し合いはこの部屋で行うとして、どのように行いますか?」


「そうですね。立ち話もなんですから、ダンジョンに吸収されない机と椅子のセットを出しますね。これはサービスです! ……と、マスターが言ってました」


 ダンジョンマスターからのサービスという言葉の後に続くようにして、目の前に急にテーブルセットが現れる。まるで、最初からずっとそこにあったかのようにとても自然に。そして、いつの間に手にはティーポットとカップが机に並べられ少女が慣れた手つきでお茶をいれている。


「こ、これは……。アイシャ君、この机と椅子はダンジョンに吸収されないのですね。あ、あの、例えばですが、この机の上に置いておいた物なんかは吸収されるのかね?」


「机の上に置いたものは吸収されません。地面や壁に立てかけた物は数時間で吸収されます。ですので、机の上から落ちてしまった物に気づかなかった場合などの保証は、出来ませんのでご注意下さい」


「一旦吸収されてしまった物は、2度と取り出せないのでしょうか?」


「はい、その通りです」


「一応、確認なのだけど、これをもう1セット出して頂く訳には……」


「出来ません。初回サービスですから。希望される場合は交換出来るリストをお渡ししますので参考にしてください」


 引き出物や通販の交換商品のように、いつの間にリストアップされたのか、ダンジョンアイテムからダンジョン内で使用できる製品が掲載されていた。


「は、早いですね。この製品の下に書いてある数字が交換出来る硬貨の枚数という訳ですね。テーブルセットが50枚か、硬貨1枚もらえるには牛を何頭ぐらい屠殺すればよいのだろうか?」


「おおよそ1000頭ぐらいです」


「た、高すぎる! ただのテーブルセットだぞ!?」


「そうですね。ダンジョンに吸収されないただのテーブルセットです。高いと思うのなら別の物と交換すればいいですよ。『傷薬10個パック』ならたった1枚で交換出来ますよ」


「な、なるほど、これは面白い……。そこの君、日本から売り出されている『傷薬』のレートを至急調べなさい。アイシャ君、交換レートの話し合いは出来るのですよね?」


「勿論です。しかしながら、1ヶ月はここに記載されているレートで進めさせてください。テスト期間のようなものです。先ずは運用を進めながら問題点なども含め、まとめていきたいと思いますがいかがでしょう」


 当たり前だが、ダンジョンに吸収されないアイテムは高額に設定している。交換レートについては今後話し合いを進めていくけども、ダンジョンポイントをこちらが握っている以上はこちらが主導権を持って進められる。


 アイシャちゃんにもこの辺りの話は徹底的にしている。しばらくは変更するつもりもないので、教育の時間としてミクちゃんあたりにしっかり指導してもらおう。その間に国王様には、牛や鳥などをいっぱいダンジョンに持ってきてもらいたい。


 書類を捲りながら『傷薬』のレートを調べ終わった担当官がイスマイル国王に小声で伝えている。


「陛下、『傷薬』のレートはいまだ高いままです。これをオークションにかけたらもっと凄いことになるでしょう」


「わかりました。アイシャ君、こちらは高額なテーブルセットを先に頂いております。ここは、テスト期間ということでこの内容で進めてみましょう」


「ありがとうございます」


「質問なのだが、トラックでダンジョンに入ることは可能なのでしょうか?」


「そうですね。ダンジョンの入口からこの部屋にかけてはどのような乗物で来られても問題ございません。しかしながら、みなさんも歩いてきてわかるように、ダンジョンの外側に関しては狭い箇所もありますので、そのあたりの改良工事は必要でしょう」


「そうですね。それは勿論こちらで進めさせていただきます。あとですね、衛生上、家畜の屠殺については専用のトラック内で行いたいのですが大丈夫ですか?」


「問題ありません。注意点があるとしたら、そのトラックがダンジョンに吸収される前に作業を終わらせるようにしてください。生物以外は全て吸収されます」


「車に人が乗っていれば大丈夫という訳ではないのですね。吸収されるまでの正確な時間なども試しておくべきですね」


 こうして、ダンジョン内での話し合いは一度解散となった。今後の動きとしては、マレーシア側の作業が多い。入口の整備、専用トラックの製造、生産者と食肉卸の間に国が入って、と場の役割をダンジョンで行わなければならない。こうしてマレーシアでは急ピッチで法整備が整えられていくことになる。

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