第16章 4話
ダンジョンに戻ってきた僕たちを見てアイシャちゃんと雪蘭さんがすぐに近寄ってくる。そりゃまぁ、気になるもんね。
「タカシさん、外の状況はどうでしたか?」
「マレーシア軍にバッチリ囲まれていたけど、平和的な話し合いが出来そうだよ」
「交渉は私が英語でしましたの。別に褒めなくてもいいけど、コウモリさん達が戻ってきて滞在ポイントが入ったら、ナシゴレンをガーリックとパクチー増し増しで頂こうかしら。半熟卵ダブルトッピングはマストよ」
ティア先生はナシゴレンをかなりお気に召したようだ。僕も後で食べさせてもらおう。
「話し合い、無事に成功したんですね。た、助かりました!」
「アイシャ、安心するのは早いぞ。問題はどのような話し合いが行われたかなのだ」
アイシャちゃんと雪蘭さんには外で話し合われた内容について説明をした。リーダーさんにも確認を取りながら話を進めたので問題なく伝わっていることだろう。
「武装した軍人を、ダンジョンに入れなければならないというのは抵抗があるが、致し方ないか。早急に二階層を造って安全マージンを取りたいな」
「そうだね。あと、これから僕の話す内容についてアイシャちゃんに判断を委ねるけど、なるべく早めに判断してもらいたい。もちろん、雪蘭さんと相談してくれて構わない」
「は、はい。どのようなことでしょう」
「ま、まさか、今回の見返りにアイシャを性奴隷にするつもりではないだろうな!」
「せ、性奴隷ですか!? ひぇぇぇぇ! わ、私、その、経験ないんですけど、大丈夫でしょうか?」
話が良からぬ方向に進んでしまっているので修正しよう。
「えっとね……」
「反対だぞ! 反対に決まっている!」
「いや、だからね……」
「不潔よ! 不潔!」
治癒
「ひゃあっ!」
治癒
「ちょっ、ふぁっ! やめっ」
治癒
「や、や、やめろぉぉぉぉぉぉぉ……」
雪蘭さんが、やっと静かになってくれたようだ。僕の足にしがみつく雪蘭さんの抗えない背徳的な感じがとてもエロい。
アイシャちゃんの僕を見る目も、期待に溢れているような感じがしないでもないが、気にしない方向でいこう。性奴隷とかなっちゃダメだからね。
「とりあえず話を戻すとだね、マレーシア政府とはこれから良好な関係を築いていこうと思っているけど……って、話聞いてる?」
「い、いえ、雪蘭お姉さんは、このままで良いのでしょうか?」
「時間が経てば元に戻るから、今は少し静かにしておいてもらおうと思うよ」
「そ、そうですか。わかりました」
足元で艶かしく息の荒い、雪蘭さんをチラチラと興味津々な様子で見ながらもアイシャちゃんはそのまま話を聞いてくれるようだ。
「それで続きの話だけど、これからマレーシア政府と手を組むけど、それでアイシャちゃんが安全かというと現状ではなんとも言えないんだ」
「裏切る可能性があるということですか?」
「可能性としてゼロではない。お互いに利益を共有している間はいいかもしれないけど、不満が出てきたり、今後、お互いに相容れない問題が起きるかもしれない」
「それで、何を判断すればよいのでしょう」
「ダンジョンに入ってきた軍人さんを徐々に洗脳していき、マレーシア政府を乗っ取るという方法がある。つまり、最初からこちらが裏切る方向で動くことになる」
「裏切られる前に裏切るということですか……」
「このダンジョンはアイシャちゃんのダンジョンだから、決めるのは勿論君の判断になる。大部屋を解放することで、かなりのダンジョンポイントが入ってくるはずだから、二階、三階層とすぐに距離をとることは出来ると思うけどね」
「あ、あの、タカシさんはいつまでここに居てくれますか?」
「条約の締結をして、サクラちゃんと交代するまでかな。長くてもあと1日か2日ぐらいだよ」
「そ、そうですか……。あ、あの、私はマレーシアという国が好きです。お父さんやお母さんの顔はもう思い出せませんけど、この国と共に生きていく道があるというのなら、私はその道を模索していきたいと思います」
なるほど、悪くない顔だね。甘いけど別にいいんじゃないかな。
「雪蘭さんに相談しなくてもいいの? 次は間違えたら自分の命だけでなく、案内人、そして多くのダンジョンモンスターがまた消滅することになる。それでもいいの?」
「はい。これは自分で決めることですから」
「うん、了解。じゃあ、条約の話し合いをしっかりと進めてこよう」
実は、今日は私の誕生日だったりします。
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繰り返しますが、今日は私の誕生日だったりします。
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