表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
244/355

第16章 3話

 僕はスキルエレメントで風人となり、ティア先生と手を繋いで透明化スキルを重ね掛けすると、リザードマンリーダーとともにダンジョンの外に出た。


 ダンジョン前ではテーブルと椅子が用意されており、既に座っていたイスマイル国王が立ち上がると、目線は当たり前だがリーダーさんしか見ていない。


 場は妙な緊張感で包まれている。国王の手紙を持ったリーダーさんがダンジョンから出てきて静かに着席したのだ。テーブルには、イスマイル国王が正面に座っており、後ろにはもう一人アブドゥル首相が立っていた。


「そなたがダンジョンマスターなのですか?」


 リーダーさんは首を横に振って否定する。特に言葉は発しない。爬虫類独特の威圧感が前面に出てしまっているが、これ、大丈夫なのかな。ただ、話が通じることでイスマイル国王も安堵したようだった。


「で、では、ダンジョンマスターの代理人ということでよろしいかな?」


 リーダーさんは首を縦に深く頷いてみせた。本人的には、にこりと微笑んでみせたようだが逆に歯が剥き出しとなり食べられそうで恐い。


 ちなみに、僕は英語を話せないので何となく雰囲気を感じているに過ぎない。たまに、隣のティア先生から通訳されてくる言葉を信じていいものか迷いながら聞いている。それにしてもティア先生が英語を話せるなんて意外だった。


 これは、ダンジョンモンスターに共通した現象のようで、言語は頭のなかで同時通訳のように処理されているらしく、聞き取りも会話も問題ないらしい。僕もそれ欲しいんだけど……。


「国王も話が進まなくて困っているわね。やっぱり私がお手伝いするしかないかしら」


 今後のことを考えたら、僕が日本語で話すというのは混乱させてしまいそうだし、ここは残念ながらティア先生を頼るしかなさそうだ。


「じゃあ、よろしく頼むよ。国王の話はちゃんと通訳してよ」


「ご安心くださいタカシ様。大船に乗ったつもりでいいわ」


 一応は通訳を信じて、リーダーさんの反応も伺いながら対処しよう。



「あなたがイスマイル国王ですの?」


「こ、この声は!? い、一体どこから聞こえてくるのだ! あ、あなたがダンジョンマスターなのですか?」


 念のため顔バレは避けたいので水竜になることも考えたけど、今後アイシャちゃんに引き継ぐことを考えると声だけでいいかという話になったのだった。


「はい。私はこのダンジョンのマスターですわ。訳あって姿をお見せすることが出来ませんの。この子に対応を任せようと考えていたのですが、やはり難しかったわね」


「姿を現せない理由があるということでしょうか」


「……そうですわね。声をダンジョンの外に運ぶということも今回限りのこととお考えください。この話し合いを成功させるために特別な枷を負うことにしましたの」


「な、なんと! しかしながら、なかなか話が進まなかったので助かります。ここに来て頂いたと言うことは話し合いに応じて頂けるということなのでしょう。そ、その、枷とは大丈夫なのですか?」


「そういう(てい)で……い、いえ、問題ございませんわ。私達は国ではありませんが、条約のようなものを結ぶことが出来ないかと考えておりますの」


「条約ですか! それは私達が求めるものでもあります。しかしながら問題は約束を保証するための何か(・・)でしょうか」


「……そうですわね。私達からはダンジョンの一階層入口近くにあなた達専用の大部屋を提供するわ」


「ダンジョン内の大部屋でございますか」


「既にご存知かもしれないけど、ダンジョン内で命を奪うと経験値が溜まりレベルが上がるわ。そこの彼のような私達の配下の者を殺されては困るけど、屠殺する家畜や死刑執行する罪人などの処理として利用価値はあると思うの」


「ダンジョンで命を奪うことはマスターであるあなたにとっても利が有ることなのでしょう。私達はダンジョンアイテムにも興味を持っております。こちらもどうか入手させてもらえないでしょうか」


「……そうですわね。ダンジョン内で命を奪う度にあなた達にはダンジョンアイテムと交換できる硬貨のようなものをお渡ししましょう。アイテムとレートについては、月に一度話し合いの場を設けるとして運用していくというのはいかがかしら」


「それで構いません。ダンジョンの入口に関しましては私達が無償でしっかり守りを固めさせて頂きますがよろしいでしょうか?」


「……構いません。しかしながら、もしも私達や配下の者がダンジョンの外に出る必要があった場合、同胞を招き入れる場合などにおいては、その守りを一時的に解除頂きたいのですわ。まぁ、しばらくはないと思うのだけど」


「かしこまりました。アブドゥル、今の内容で早急に条約の文書を作成せよ」


「かしこまりました。……うおぉぉ!!」


 ちょうど夕方を迎えたその時、ダンジョンからコウモリさんの大群が食事のため外出されていった。これでダンジョンポイントが増える。


「うちのペットですの。好きな食べ物は昆虫よ。彼らのことも虐めたらダメよ」


「か、かしこまりました」


「では、条約の文書が出来上がるまでしばらくダンジョンに戻らせて頂くわ。また後でね」

続きが気になった方は、ブクマやポイント評価を頂けると作者のモチベーションアップに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ