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閑話 15

 昨日は雪蘭お姉さんとゆっくりお話が出来てとても嬉しかった。ダンジョンマスターになってからというもの、話し相手は案内人のパール君しかいない。ボスモンスターのリザードマンリーダーは意思の疎通はとれるのだけど、無口? なのかな。積極的に会話をする感じではない。


「やっぱり、同じ仲間の話し相手は大事だと思ったよ。雪蘭お姉さんは変態な感じではないし、仲良くしたいなぁ」


「雪蘭って今日も魔法の練習に来るんだよね?」


「うん。サクラさんがびっくりするぐらいに二人で急成長をしてみせるよ」


「まぁ、無理せずにね」


「パール君はもっと私を頑張らせないといけないんじゃないのかな?」


「こう見えて心の中では応援しているんだ。ダンジョンも、とうとう開通した訳だし頑張ろうね」


 そう。『ペナンダンジョン』は今日から開通しているらしい。『千葉ダンジョン』から応援の方が向かっているらしいけど、場所が遠いこともあってまだ到着はしていない。そんなことを考えていたら雪蘭お姉さんが到着していた。



「アイシャ、昨日はゆっくり眠れたか?」


「はい。バッチリですよ。魔力もいっばい使えます!」


「今日も火弾(ファイアボール)から練習するのか?」


「そうですね。闇属性より火属性のほうが相性が良さそうな気がします。どちらも練習しますが、得意な方から伸ばしてみます」


「そうか、じゃあ、練習を始めようか……」



「アイシャ、侵入者だよ! ぜ、全部で4体!」


「えっ、うぇっ、ど、どうしよう」


「あっでも、入ってきたのは野犬のようだね。アイシャ、落ち着いてリザードマン達に指示を出して」


「う、うん。リザードマンさん、野犬を取り押さえて! リザードマンリーダーさんは私達を守ってください」


 アイシャの指示を受けたリザードマン10体は、野犬を少し引き付けながらも逃がさないように囲み始めている。


「ア、アイシャ、わ、私は何をしたらいい?」


「えっ、雪蘭お姉さん?」


「雪蘭、あなたはこの場には会談で来てるから、他ダンジョンの侵入者を攻撃することは出来ないわよ」


 雪蘭お姉さんの側にいた案内人のキャロちゃんがそう教えてくれた。つまり、リザードマンさん達と私が何とかしなければならない。


「ちなみに、パール君は戦えるんだっけ?」


「無理無理。食べられちゃう」


「や、野犬ならリザードマンさん達で何とかなりそうかな? 私もちょっと見てきます」


「お、おい、アイシャ! 大丈夫なのか?」


 ダンジョンの入口近くまで雪蘭お姉さんと一緒に歩いていくと、リザードマンさん達は少し怪我を負いながらも野犬をなんとか取り押さえていた。


「だ、大丈夫? と、とりあえず、ダンジョンの外に放り出せばいいのかな?」


「何を言っているのアイシャ! ダンジョンマスターは侵入者を倒して強くなりポイントを稼いでいくとキャロちゃんが言っていたわ。これは大チャンスなのではないか?」


 確かに、リザードマンにがっつり押さえられて弱っている野犬さん。一思いに火弾(ファイアボール)してあげた方が野犬さんも楽になるに違いない。それにこの状態なら、私でも魔法を当てられるかもしれない。


「よ、よしっ! みんな、野犬さんから離れて。私が魔法で仕留めるね」


 まさか、自分が魔法少女になるとは思わなかった。いや、ダンジョンマスターだったっけ。でも魔法使うから、やっぱり魔法少女でいいのかな?


 かなり痛めつけられたようでほとんど動けない野犬さん達。苦しまないように3発ぐらい撃ってあげよう。


 火弾(ファイアボール)×3



「ア、アイシャ、爆発っていうのは思いの外、激しいのだな……」


「う、うん」


 野犬さんの内臓が飛び出していたり、血の焦げた何ともいえない臭いが辺りに漂っている。しかし、予定通り3発で仕留めることが出来たようだ。


「雪蘭お姉さん。今のでレベルアップしたよ」


「えっ、今ぐらいのでレベル上がっちゃうの? 結構簡単に上がるのね。アイシャ、レベルアップした火弾(ファイアボール)を撃ってみてよ」


「うん。火弾(ファイアボール)!」


 発動もスムーズだし、何より私が今まで撃っていたものと比べて明らかにサイズアップし、その破壊力も上がっていた。


「す、凄いわね……。レベルが上がったらこれよりも凄いことが出来るようになっていくのね」


「魔法の発動がとてもスムーズです。これがレベルアップの効果なんですね」


「アイシャ、リザードマン達にお願いしてダンジョンの外から野性動物を連れて越させるのよ!」


「えっ、で、でも、サクラさんが開通しても外に出させないようにって」


「少しくらい大丈夫よ。ダンジョンの周辺ぐらいならきっと平気よ。もう少し、レベルが上がれば闇属性だって使いやすくなるんじゃない?」


「た、確かに。レベル1つでこれだけ成長するんだもんね……」


 それは甘い誘惑だった。


 雪蘭お姉さんだけが悪いのではない。私自身がレベルアップと魔法の力に魅了されてしまった。


 最初はよかった。順調に野性動物を誘導してきたり、猿などの小動物を捕まえて戻ってきていたし、レベルも1つ上がった。


 しかし、


「ど、どうしよう……。きっとダンジョンの外で人間に見つかったんだよ。ま、まずいよね、雪蘭お姉さん」


「ゴメン、アイシャ。私が調子に乗ってしまったからこんなことに……。サクラさん達はダンジョンにいないかも知れないけど、『新潟ダンジョン』に会談で連絡をとりましょう。ダンジョンに人が来る前に助けを求めないと大変なことになっちゃう」


 リザードマンの数は徐々に減っていき、戻ってきていないことに気づいた時には全てが遅かった。既にマレーシア軍は動き始めていたのだから。

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