第2章 8話
遅い。遅すぎる。考えたくないが何かイレギュラーな事態でも起きているのだろうか。
隊員がダンジョンに突入してから約二時間が経過している。
やはり通信出来ないというのはもどかしいものだな。
「か、川崎隊長!戻ってきた3名の隊員が亡くなりました」
「はっ?さっきまで元気に話をしていたじゃないか。何があった?」
「それが急に倒れ、そのまま意識不明に。心肺が停止していました」
「まさか、突然死か!」
「可能性は高いです。操られていたかもしれませんね」
「つまり、偽の情報を掴まされた可能性があるということか……」
「中に入った隊員は大丈夫なのでしょうか」
「今は待つしかあるまい……」
その後、二時間待つものの誰一人として戻ってくる者はいなかった。
「それにしても50名の特殊部隊が全滅だと。にわかには信じられんな。ダンジョン内の情報もゼロ。くそっ、収穫もなしか。くやしいが、いったん撤退する!」
念入りにダンジョンの入口を封鎖し、24時間体制の警備をつけた上で一時撤退することになった。
ダンジョンに入った特殊部隊50名全員死亡という結果は衝撃をもたらした。
洞窟から先は異空間である可能性が高くミサイル攻撃はおそらく意味がない。
やみくもに突撃させるのも特殊部隊の二の舞になる可能性を考えると躊躇われる。
日本政府がとった行動は消極的ながらもダンジョン的には効果のある入口封鎖の継続であった。
しかしながらここで事態は急変する。
二つ目となるダンジョンが国内に発見される。
場所は山梨県鳴沢村。それは富士の樹海の中に現れた。
第一発見者は一般人。携帯電話の動画機能を使用し撮影にも成功している。
動画サイトにあげられた映像はあっという間に全世界に配信され衝撃を与えた。
緑色の肌の小さいモンスターが何体も跳び跳ねながら追いかけてくる。後方からは魔法と思われる火の玉が飛んいる。
ゴブリンにファイアボール。まさにファンタジー世界の光景だった。
このニュースは全国、いや全世界で一斉に伝えられ、もはや日本政府も隠すことは出来なかった。
翌日、日本政府はダンジョンの存在を認め鳴沢以外に千葉県の鋸山にも存在していることを公式に認めた。
鋸山のダンジョンは『千葉ダンジョン』、鳴沢のダンジョンは『山梨ダンジョン』とそれぞれ名づけられた。
政府からは、もしダンジョンと思われる場所を見つけたらすぐに逃げること。警察に通報すること。決して興味本意で近づかないことを注意点として伝えられた。
衝撃はその後の発言だった。
警察の特殊部隊50名が千葉ダンジョンに突入しその全員が殉職した。
日本政府としては、現状ダンジョンはとても危険なものであると判断しており発見次第封鎖する。
その後の対応については今後検討していくとのことだった。
こうしてダンジョンと人間を襲うモンスターが存在していることが全世界に知れ渡ったのだった。
●アメリカでは
「プレジデント。日本のダンジョンどう思われますか?」
「日本のSAT50名は全滅したのだろうが、グリーンベレーなら探索可能だろう。どんな資源があるかわからん。同盟国の一大事だ。手伝わないとな」
「すぐ日本に連絡いたしましょう」
●中国では
「本土にダンジョンがないか至急探せ!日本にあって中国に無い道理はない。樹海周辺の土地は買えんのか?」
「周辺は国立公園ですから無理です」
「理由はなんでもいい。ダンジョンは地下で本土と繋がっているとか言って探索協力をとりつけるんだ」
●ロシアでは
「日本の北方諸島の共同開発をエサにダンジョンの共同探索を持ち掛ける。ロシア特殊部隊はいつでも力を貸すと伝えろ」
●日本国内では
「ダンジョン、キター!魔物に魔法だ!!」
「俺20歳だけど魔法使えるようになるのかな。」
「レベルは上がるの?」
「ダンジョンを解放しろー!」
「俺、大学卒業したら探索者になるんだ」




