第15章 14話
「ちょっ、ちょっと待って! ポイントが5100しかないのに何で最初に交換するのが『ダンジョンカメラ5000P』なのよ」
雪蘭さんがうるさい。ここは自分のダンジョンじゃないだろうに。アイシャちゃんが心配なのはわかるけど、もう少し静かにしてもらいたい。
「あっ、ダメなんですか? もう交換しちゃいました」
「アイシャー!!!! もっと疑えっ! いや、タカシさんを頼るしかないんだけどさ。でも、今は自分の命が掛かっているんだよ」
「あっ、アイシャちゃん、コウモリさんが驚いちゃうと可哀想だから、コウモリさん部屋の入口を10Pで狭くしてくれるかな?」
「はい、わかりました。交換っと」
「だからっアイシャ! ってもう交換しちゃってるし! コウモリさん部屋のやつ今どうしても必要なの? タカシさん、残りのポイントわかってる?」
お世話になっているコウモリさんに対して感謝の気持ちが足りないんじゃないかな。まったく。
「まぁ、すぐにポイントは増えるから気にしなくていいよ。食べ物だって、『菜の花』弁当がまだ残ってるんでしょ? あっ、この烏龍茶とっても美味しいね。おかわりちょうだい」
「あっ、その烏龍茶は雪蘭さんが茶葉を持ってきてくれたんです。美味しいですよね、私も好きなんです。今、いれてきますね」
「そうか、美味しいだろう。私が発酵させた茶葉だからな……って違ーう! ポイントぉぉ!」
「ティアと『てんとう虫』さん達もこの部屋に来てもらおうかな」
「かしこまりました。すぐにお呼び致します」
僕をここまで誘導してくれた『てんとう虫』さんがリザードマンリーダーの側に残っていたようで、すぐに呼びに行ってくれるようだ。
「見張りを戻すのか! 軍隊が入ってきたらどう対処するのだっ。ま、まさかダンジョンを、攻略させるつもりなのではないか!?」
「あー、アイシャちゃん。烏龍茶を人数分追加でお願いしてもいいかな?」
「はーい。了解しました」
その時、ポイントで交換されたダンジョンカメラが設置されたようで、居住区の部屋にも入口付近を映すモニターが現れた。
「おぉー、これがダンジョンカメラというものなのか。なるほど、これがあるから見張りを戻したのですか」
「これで入口付近をチェックできるから安心でしょ」
「し、しかし、攻撃はどうするのだ。これでは、居住区まで一気に入られてしまうではないか」
「僕なら画面越しに魔法を撃てるから問題ないんだよ。軍隊がどれだけ入ってきても入口周辺で全て殲滅することが出来る」
「ちょっと待て。ゲームじゃあるまいし、画面越しに魔法が撃てる訳ないだろう。タカシさん何をおかしなことを言ってるんだ?」
百聞は一見にしかず。二人には実際に見てもらった方が安心してもらえるだろう。
「雪蘭さん、アイシャちゃん。今から入口付近に魔法を発動させるからモニターを見ていてよ」
「本当にそんなことが出来るのですか?」
「あっ、また花火ですか?」
アイシャちゃんは紹介の時に撃った火弾花火バージョンをご所望のようだ。ここは期待に応えてあげようじゃないか。
火弾
さすがに、入口周辺は天井の高さもそこまでないので打ち上げ花火という訳にはいかない。僕がイメージしたのは大きな線香花火。紐無しバージョンだ。
「うわぁー、火弾が浮いている」
「ほ、本当に魔法を発動出来るのか……」
「花火はここからだよ」
パチパチと弾けるように小さな火花が踊り始めると、徐々に大きく激しく火花を散らしていく。即席にしては、なかなか巧く出来たのではないだろうか。最後には、空中に浮かんだまま大きく爆発させた。
「な、なんだあの威力は!? あれが火弾なのか? アイシャが撃つ火弾の10倍はありそうだぞ」
「どう? 少しは安心してくれたかな? あれっ? ティアは?」
「はっ、ティア様は『菜の花弁当』を全部食べられていらっしゃいます」
「……『菜の花弁当』を、えっ? ぜ、全部だと? いきなり食料がゼロになってしまったじゃないか! タカシさんどうするんですか!?」
「お腹空いてたのかな? 残りのポイントでナシゴレン出してもらってもいいかな?」
「えっ? ナシゴレンですか?」
「アイシャ、それは絶対に聞いてはダメだぞ」
「大丈夫だって。ポイントは使わないと増えないよ」
「何だそのお金持ち的な発想は!! ポイントは貯めないと増えないに決まっているだろう」
さて、後はマレーシア軍との交渉を、どう進めていくか考えなきゃな……。話し合いに乗ってくれるといいんだけど。
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