第15章 13話
僕たちが『ペナンダンジョン』に到着した時に空から見えたのは多くの武装した軍人が山狩りを行っている所だった。既にゴルフ場は封鎖されており、一般市民の避難も始まっていた。
「がっつり、バレてますわ」
「うん。これは、ダメなやつだね」
入口を偽装する時間もあまりなかったのだろう。『てんとう虫』さんの誘導のもと、ダンジョンにはたどり着いたのだが、木の枝や蔦でバリケードを張っているような感じで逆に目立ってしまっている。
「とりあえずはダンジョンに入ろうか」
「そうですわね。はぁ、ナシゴレンはしばらく後になりそうですわ」
枝を掻き分けてダンジョンへと入ることにした。すぐ近くまで捜索の手が伸びているので、下手に音を立てて入口の手直しをする行動はやめることにしたのだ。
ダンジョンの中に入ると『てんとう虫』さん6名が武器になりそうな石を集めたり、ナイフなども装備していた。
「お待たせしたね。状況はあまり良くなさそうだけど、とりあえずは間に合ってよかったよ」
『てんとう虫』さん達は僕とティア先生の顔を見るとホッとした表情で胸を撫で下ろしていた。状況が状況なだけに自らの死も覚悟していたのだろう。
「アイシャちゃんは奥かな?」
「はい。ご案内致します」
「よろしく。ティアは一応、入口付近で迎撃体勢を」
「えぇ、かしこまりましたわ」
なんというか懐かしいな。完全な初期ダンジョンだ。どうしたらよいものか。広い入口から通路を歩いて抜けると目の前に居住区が見えてきた。
「タカシさん! ご、ごめんなさい」
「わ、私が悪いのだ。アイシャを叱らないでやってくれ」
居住区に入る手前にリザードマンリーダーが困った顔で立っていて、その先にはアイシャちゃんの他に雪蘭さんもいた。
「別に叱りはしないけど、なんでこんなことになったのかな?」
「ポイントが貯まれば、早くダンジョンを強化できるし、侵入者を倒せば、レベルも上がって力もアップする」
「言いたいことはわかるけど、無理した結果がこれじゃあ、目も当てられないよね」
「たまたま、私がいる時に野犬の群れがダンジョンに入ってきた時があって、リザードマンが取り押さえた所をアイシャの魔法で倒したのたが……」
「それでレベルが上がったんだね」
「そ、そうだ。するとどうだ、魔法もすごくスムーズに発動するし、手のひらサイズだった影盾も大きくなるしで……」
「あ、あの。ごめんなさい。わ、私、こんなことになるなんて思わなくて……」
涙目のアイシャちゃん。一応は反省してるようだけど……。レベルアップによる恩恵に目が眩んでしまって約束を守れなかったということか。わからなくもないんだけどさ……。
どうやらリザードマン達に野生動物を探しに行かせてはダンジョン内で仕留めていたらしい。アイシャちゃんの現在のレベルは3になっていた。
「今、ダンジョンの外ではマレーシア軍が大勢でダンジョンの場所を探している。間もなくここも見つかってしまうだろう。アイシャちゃんは、ここを放棄して『千葉ダンジョン』か『新潟ダンジョン』にボスモンスターとして来る気はあるかな?」
「ちょっと待って。その選択しかないのか? それだと、案内人を見殺しにすることになるじゃないか! タカシさんは強いのでしょう」
「案内人を見殺しにするような行動をしたのは君たちであって僕ではない。そもそも、助けに来ただけでも、ありがたく思ってもらいたいね」
「くっ……」
ちゃんと反省してもらわないと困る。なぁなぁで助けて、また同じことを繰り返されたら堪らない。
とはいえ、そもそもボスモンスターにするつもりなら最初から水竜フライトで来ていない。会談で済む話だ。僕は何とか案内人も含め、助けてあげたいと思っている。
「タ、タカシさん、パール君を助ける方法は何かありませんか? わ、私に出来ることは何でもします。どうか助けてください」
「アイシャ……」
「そうだね。今後、勝手な行動で迷惑をかけた場合の責任は持てないからね。雪蘭さんもだよ」
「はい」
「も、もちろんだ」
「特に二人の場合、日本にあるダンジョンではないから、いろいろと融通が利かないんだ。それなりに力をつけるまでは、無茶はしないでほしい。焦らないで。サクラちゃんや僕が責任を持って手を貸すから」
「わかりました」
「さて、時間もない。アイシャちゃん、ダンジョンポイントは今いくつある?」
「はっ、はい。えーっと今は……」
1日で戻ってくるつもりだったのに、とても時間が掛かりそうな雰囲気だ。どうしたものやら……
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